第4話 生産ダンジョンとレースとは
生産ダンジョンは地下にもかかわらず【ライト】で明るく。
【クリーン】で常に清潔に保たれる。
これらはダンジョンに満ちる魔素を元に自動で発動するダンジョン魔法。
『風呂入るよりダンジョン潜ってた方がいいまである』
『ダンジョン浴とかどうだろう?』
『魔物出るから無理』
ダンジョンは人に害をもたらし、同時に恩恵を与える。
人間と魔族はあらゆる資源資材を求め、地下を探索し、生活する。
これが生産ダンジョンの――イタダキマス大陸の常識だ。
***
天井と壁さえなければ外と見紛うような平原と青空の下。
その辺に芋が転がり、ある場所には小麦粉の山が、ある場所には油の池がある。
『芋にキュアをかけて毒素を抜くってのは面白かったな』
『芋からしたら防御物質なんだけどね』
タンスイは流れる川に容器を入れ醤油を掬い、空間に穴を開け保管する。
視聴者が妖精化して待機所にしている異空間を空間収納代わりに使っているのだが、本物と違い時間は流れる。
メンヌはタンスイの両肩に跨り顎を頭の上に乗せ休んでいた。
「いい? 第一回チキチキ! ドラゴンダンジョン・レース争奪戦ってのは――」
「第一回」から「争奪戦」まで圧が強くてコメント欄も加速している。
新たに生成されたダンジョンで数百年ぶりにドラゴンが確認された。
探索調査により、ただの近隣都市が担当する攻略では死者を増やすだけと判断され
選抜された探索者だけで攻略競争を行うことになった。
それが――
「第一回チキチキ! ドラゴンダンジョン・レース争奪戦!」
「何度も言わなくていいから!」
『ぜったいわざとだとこのエルフww』『なんで第一回チキチキネタがあるんだ?』
『啓示やろなぁ』『啓示でしょうね』
ダンジョン攻略は過酷だ。高難度ともなれば死者も多くなる。
それでも探索しなければならないのが、生産ダンジョンの蜜なのだが……。
何故レースなのか。普通に強いパーティ集めて攻略すればいいだけでは。
『自由屋台とかもだけど』『ギルドって料理研究も最近躍起になってるよね』
『イメージ戦略』『娯楽にして楽しい世界にしたいとか?』
やりすぎな気もするが。
「んでレースにはランクが必要なんだけど、私がAでメンヌとパーンがC。ちなみにあなたは?」
「Dだよ」
「そっか。でもその力があれば間違いなくサクサク上がるわよ。私が保障する」
探索者ランクは最低Gで最高がAだ。
各支部のギルドマスタークラスがAで、どこのダンジョンも自由に出歩ける。
強さ、クエスト依頼達成実績、街や他探索者達の信頼などでランクが上がり、記憶を取り戻す前のタンスイは六年ほどでDになっていた。
とはいえ、彼女の言うように今のタンスイは「啓示を読める」「異世界人の知らない料理を作れる」「無尽蔵の魔力がある」という、唯一無二の力を持っているので実績作りは容易いだろう。
「あと折り入って頼みがあるんだけど」
コメットはポーチから啓示が書かれた羊皮紙を取り出し、広げて見せた。
【至高の泥ポーション】
材料
・スパイス(クミン、コリアンダー、ターメリック)
・うま味調味料
・塩・胡椒
・小麦粉
・味噌
・おろし生姜・にんにく
・純ココアパウダー
・水
・ジャガイモ
・玉ねぎ
・大根
・人参
・ドラゴンの血
・ドラゴンの肉
『これ……』
『カ……』
『カ……』
「カレーじゃねえかッ――ぎゃああっ!」
コメットは人差し指と親指に全魔力を集中させ、タンスイの喉を掴み持ち上げる。
「タンスイ、かれーって何?」
「オゴッポゴボッオ……」
「まぁいいわ。お願いっていうのはね、このポーションを作って欲しいのよ」
まず離してくれ。喋れないから。
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