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第2話 爆速異世界人バレ自己紹介

【イモモニ イセカイジンアリ アポカリプスカイドクガデキル リョウリドレイニシヨウ】


 白髪のエルフは【啓示(アポカリプス)】をタンスイに見せる。

 薄黄色の羊皮紙に書かれた文字はこの世界の言葉ではなく、カタカナだった。


『あぁ、地球語のメッセージだよな』『日本語以外にも沢山あるんだったか』


 啓示(アポカリプス)は、地球側の言葉で綴られたメッセージだ。

 書かれている内容は多岐にわたる。料理や物の作り方やそれから――って。



 おいなんだこのメッセージ! 奴隷? 料理奴隷つった!?



 招かれざる客は二人。

 白髪のエルフに、黒髪に褐色肌の、先ほどキスをしてきた女性。

 黒髪はベッドの上で体育座りで顔を太ももに着けて表情が見えない。


「あっ。まぁ奴隷ってのは冗談よ冗談、そんなことより――」


「そこの女が俺にキスをして奴隷になれとか言ったな? あれ洗脳系の天技だろ!」


「そんなことよりあなた異世界人よね?」

「そんなことよりじゃねえ!」

「そんなことよりあなた異世界人よね?」

「お前ら誘拐とかそういう犯罪でもしてるのか? 目的はなんだ!?」

「そんなことよりあなた異世界人よね?」


 クソッこいつ都合が悪いからって村人A化してる!


『このエルフおわってて草』『リアルでいたらこええよww』


 メッセージは間違いなく自由を拘束する何かであり、タンスイは少しずつ部屋奥の窓側に追い詰められるが、漂う妖精は両手を広げて呆れ果てていた。



「ペラペラ妖精(リスナー)だの妖精化した視聴者を自由にさせたりして目立つからこういう目に遭うんですよ」



 先日記憶を取り戻した時、妖精(リスナー)達はタンスイの前に現れるようになり【自分達はあなたの配信の視聴者である】ことを伝えた。


 そんな彼らはある忠告をした。異世界あるあるとして特殊な力を持つ者は大概妙な連中に狙われてしまうのでひけらかすものではないと。

 だがタンスイは意に介さなかった――その結果がこれだ。



「そんなことよりあなた異世界人よね?」

「だったら何だ」


「あなたには私達のパーティに入ってもらいたいの」

「断る!」

「あなたには私達のパーティに入ってもらいたいの」

「クソッ理由を言え!」



 強引な定型文に、常識人は折れざるをえない。

 そんな異常者の理由など、私利私欲にまみれ到底理解できるものではないと考えていたが、彼女の口から出る言葉はタンスイの琴線に触れた。



「私達でドラゴンをぶっ飛ばしその素材で美味しい料理を食べる!」



「どうも異世界人料理マシーンです。パーティよろしくお願いします」

「折れたああああっ!」


『目的が一致しちゃった……』『食材によわよわすぎるって!』


 コメント欄が濁流のように流れる中、タンスイは彼女達の話を訊くことにした。


***


「自己紹介しときましょうか、私は【コメット】よ」


【コメット】種族:エルフ 女性

 白髪を長く伸ばした青い瞳のエルフ。

 宍色の肌に布の衣服と、両サイドに深い切れ込みがあるスリットスカートから長い脚が見える。タンスイより少し背が高く、見た目は同年代か少し年上の姉を思わせる麗人だ。

 尖った耳を持つエルフは、長命で魔力に優れた種族であり、その特徴から優秀な探索者が多い。


「で、あっちで不貞腐れてるのがパーンね」

「不貞腐れてねぇ!!」


【パーン】種族:サキュバスxオーガのハーフ 女性  

 黒髪のショートウルフヘアに赤い瞳、褐色の肌を持つ美女。

 レザーのクロップド丈の半袖とミニ丈のショートパンツを着こなし、大胆な肌見せとは対照的に、その顔立ちは王子様を思わせるほど端正で、見た目はタンスイと同年代ほど。


 視聴者は「宝塚」「王子様系」などとコメントしている。


 オーガ族は、地球では鬼や巨人を意味するが、こちらでも同様で力が強い種族だ。

 サキュバスも然り妖艶で魅惑的な姿で男性の精気を吸う種族。

 やはり先ほどのキスは洗脳系か。


『オレっ娘って強気なイメージあったけどな』『元気なさそう』


 彼女を見て気になる点があるとすれば、オーガの血を持っていながら肢体は艶やかで曲線美なだけで引き締まった肉体はしていないことか。

 食べて鍛えればすぐ筋肉がつく種族だ。女性でも筋トレ好きが多いと聞くが、人それぞれか。



「てことで俺の番か。俺は――」


【タンスイ】種族:人間 男性。

 宍色の肌、茶髪、21歳、中肉中背、以上。

 幼少の頃より天技に目覚め、先日前世地球人の記憶を取り戻した転生者。



「もう一人いるんだけど、自由屋台エリアにいるのかな」

「何か作ってるのか?」


「魔力結晶(マナストーン)入りのコロッケじゃない?」



 バキャアアッ!!



 妖精と視聴者とコメットは見た。

 タンスイが窓をぶち破って外に出ていく瞬間を。


『器物損壊だああああっ!』

『二階だぞここ』『草』


 地球人が見る配信画面は一人称視点ではなく、仰視、俯瞰、水平といった第三者視点で映っている。破壊して外に飛び出した瞬間は宿の外からの俯瞰視点だ。


「――疾風(シルフィウス)」


 視聴者は壊れて破片となった木製の窓が地に落ちることなく、風に舞い空中で停滞していた様子を見た。



【魔力結晶(マナストーン)ってどんな味?】



読んでいただきありがとうございます。


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