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第15話【マッチョマッスルの樹ってどんな味?】

【花粉はプロテインパウダー】で【髪はブロッコリー】、【実はバナナ】。

 訳の分からないファンタジーの樹木に、樹液も何かあるのではと考えコメットに頼んでみると、人差し指を突っ込むだけで樹に穴が開いた。


 指先にはとんがりコーンのような小さな竜巻。

 開け方はこれでいいのか? 穴がデカすぎる気もするが――って、出た!


 乳白色の液体がダムの放流のように穴から噴き出し、コメットが食らいつく。

 口をすぼめ、吸い込む寄り目のバキューム顔に視聴者達は絶句している!


『夏のホラー配信』『怖すぎて微塵もエロさを感じないww』『同接減少中!!』


「コメットどんな味だ」

「香ばしいわ」

「よし、じゃあ俺も飲……おい飲ませろよ、どいてくれ!」

「嫌」


「パアアアアアアアンッ!!」


 蝉のように張り付くコメットをいとも容易く引き剥がし、思いのほか膂力があったことにタンスイは目を丸くした。


「オーガの女の子は筋肉密度が高いから、男の子みたいに大きくならないんだよ」



 見た目に反して、このパーティで一番力が強い。

 それよりパーンの「父さま」「母さま」や「男の子」「女の子」という言い方が妙に可愛いことに気づいて、タンスイの口角が無意識に少しだけ上がった。



 裏返った虫みたいなコメットをどかして、液体を飲んでみると【アーモンドミルク】だと分かった。



「先に鑑定させてくださいよ……ええと【無糖マッチョ樹液】。うんアーモンドミルクにしましょう」


『本来の名前がマズそうすぎるww』『てか豆乳じゃないんだな』


 コメントが流れつつ、タンスイは空間に穴を開け道具を取り出す。

 半透明のシェイカーだ。

 プロテインパウダー、アーモンドミルクを入れ、バナナはコメットの風魔法で細かくし小さな氷の魔石を入れ両手を上下に振ってシェイクする。


 氷の魔石を取り出して、できたドリンクをパーンに渡す。


「いや待て普通に渡すけどそれ花粉」

「って言いながらしっかり受け取ってくれたな」

「お前らがオレのために頑張ってくれてるのに飲まない訳にはいかないだろ!」

「いやドラゴンのため――むぐっ」


 下ろされたコメットがタンスイの口を塞ぎ引き下がる中、パーンは混ぜられた液体を見てシェイカーを持つ手に少し力を入れて飲み込んでみた。



 一層の花粉で敬遠され、二層の花粉も誰も調べなかった。

 鑑定で花粉と出るなら尚更だ。

 他の資源も珍しくなく、結果としてハズレと呼ばれていた。


 しかし蓋を開けてみれば筋肉栄養素の宝庫だった。別にプロテインだけが筋肉を作るものでは無いし普段の食事で代替は出来るが、神格料理という現象がある異世界においては一概に地球の常識に当てはめられない。

 果たして彼女はどうか。



――光る!



 凄まじい【黒色の魔力】がパーンの体内から噴き出しオーラを纏う。

 コウハのように劇的な肉体変化は無く、筋肉密度の話を聞くに内部側に変化はあるかもしれないが自覚できない。


「すげぇ力が漲ってくる! これが神格料理か!」


 彼女を導く料理は見つかった。

 それを飲んで強化されたことは――その言動から明らかだった。

 だが魔造は座ったまま動かない。まるで足りないと言わんばかりだ。


「プロテインって料理というかドリンクですよね」


 妖精が言うように料理ではないが、だとしてもパーンは黒く輝いた。


「ホエイプロテインって筋トレ後に飲むので、実際鍛えてみた方が良いと思います」

「よし、じゃあ食材まとめて一旦帰るか!」


「タンスイさんこの樹剥がして食べてください! 【牛すじ】みたいな味と食感なんですが!」


「なんだってええええええ!?」

「ぎゅうすじって何よおおおっ!?」


『緊張感が無さすぎる』『本当にダンジョンってキツいところなのか!?』


【同時接続者数20,000,000】

【食べてみたい人】

【70%】


 妖精集合体とタンスイ、コメットが樹皮をひっぺがし、「硬い硬い」と言いながら齧る姿が配信画面に映る。その様子を見た視聴者達は『煮ろ』とコメントを送った。


 生産ダンジョンの資源資材は空気中の魔素からいくらでも作られるので、しばらくすればずたぼろの樹も元通りになる。


 配信画面はパーンと魔造を映している。

 彼女は魔造の頭部を見て、言葉を残す。



「――ありがとう」



 父は敗れたが、戦利品として腕を持ってかれるも命までは奪わなかった。

 当時子供だったパーンは、単身粉まみれになりながら復讐しに赴いたが相手にされなかった。

 そして今、タンスイの意見を聞き入れ鎮座している。矜持なのか?



 魔造は魔物の一種で敵であるが、人のような挙動をする。

 だがここまで律儀な魔造をパーンは見たことがなかった。



 敵は成長を待っている。

 もう復讐ではない。これは挑戦だ。

 言葉を理解しているだろうが、魔造は動かない。


「絶対にまた来る! お前も筋トレして待ってろ!」

「……フッ」


 魔造から声がした。踵を返し背を向けていたパーンはすぐに振り向く。



 メンヌが魔造の頭上であぐらをかいていた。



「メエエエエエエエンヌッ!!!」



【マッチョマッスルの樹液は『アーモンドミルク』樹皮は『牛すじ』でした】




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