第16話 パーンの特訓とメンヌの天技
ダンジョン都市大樹コロスケ、マッスルエリア――!!
『ってなんだぁ……』『草』『なんでもあるなぁ』
オーガ族のために作られた開放的なトレーニング広場。
広大な楕円のトラックと、その内側には金属を加工して作られた様々な筋トレ器具が揃えられている。
オーガの知識とドワーフの技術による天技の産物。
パーン曰く、オルガがトレーニング器具に関する啓示を得てから作られたらしい。
「地球の技術が超低確率で流出してるってコトォ!?」
『地球側にスパイがいたりして』『まっさか~w』
視聴者と会話しているとパーンがトレーニング広場へ走り出していた。
コメットは普段とは違う穏やかな笑みを見せる。
「良かれと思って、面倒な依頼を魅了で有利に進める役目を与えてたんだけどね。何とかなって良かったわ」
パーンが元の性格に戻った事でコメットは胸を撫で下ろしていた。
トラックの外、広場を見渡せるほど離れた場所で三人は広場を見る。
パーン以外にも主にオーガ族が器具を利用しているが、まばらに探索者達もいる。
メンヌが外套を引っ張りシェイカーをよこせと言うので渡す。
それを見つめた後タンスイに返し、両手の平をまるで水晶に念じる占い師のような仕草で動かし、魔力を集めるとシェイカーが出来上がった。
!?
待て、このシェイカーは
【視聴者の投げ銭で買った現代のプラスチック製のコップ】なのだが。
「どういう天技なんだ?」
「……【武器食器】」
「魔力から武器や食器を生み出す天技ね」
消費素材なしで見ただけでいいのかよ! もう複製じゃねーか!
ぽろぽろと空間からシェイカーを生み出す様は最早生産ダンジョンだ。
この異世界でプラスチック素材が報酬で出たというのは聞いたことがないが、二人はこれが遺物であるとは知らない。
『仰々しく言ってるけど要は地球側の物ってことでしょ』
そうとも言う。
あのトレーニング器具のように異世界側で作った物ではなく、現代の何らかの物体が宝箱から極稀に出て、それを遺物と呼んでいる。
メンヌは近くにあるベンチの上に、プロテインドリンクを次々に置いていく。
筋トレを終えたパーンと友人の女性のオガ子達が数人ベンチの前に集まり、シェイカーを取って友人達にも勧めて全員が飲み始めた。
!!
凄まじい魔力圧だ!
タンスイと妖精達は嵐のような魔力に圧されて地面を転がる!
これは現代のトレーニング同様、筋トレ後に飲むものだったのだ。
しかも神格化はパーンのみならずオーガ族そのものに発現している。
おいやばいぞ。オーガ族の利用者が集まってき……皆飲んで魔力を全身から溢れさせている! 他種族の探索者達も集まってきたが、この人達に魔力圧は無い。
だが内に漲る力を感じているようで顔の前で拳を強く握っている。
「あれ、俺達……何かやっちゃいました?」
「やっちゃうのは良いんですけど影響が怖いですね」
「タンスイお前も筋トレするぞ!」
「あ、俺は結構……ってぐわああああっ!!」
タンスイは脇で首を挟まれ、引きずられてトラックの内側に入っていった。
***
マッスルエリアで革命を起こしてから数時間後、三人と引きずられる一人はパーンの実家にてオルガに経緯を報告する。娘の引き締まった身体を見て、いてもたってもいられず彼もドリンクを飲んで覚醒した。
パーンの母親、サキュは夫の失われた自信を取り戻したこと、そしてパーンの自信に満ち溢れる姿を見て一筋の涙をこぼす。
彼女もまた自責の念に駆られていた。力の天技を持つ子として産んでやれなかったことを申し訳なく感じていたのだろうが、天技は選べない。
パーンは自分が未熟だったと謝罪していたが、しばらく二人で話し込んだ後、突如母親の背景に炎が揺らめきタンスイに一瞬だけ顔を向けた。お互い仲良くなったのは良いが何を話したのだろうか。
***
パーンの両親はまだ昼食をとっていないそうなので、タンスイは【おでん】を提案した。【プロテインパウダー:和風きのこ味】を試す機会だ。
『運動後の昼おでんって』『食べたいんだから仕方ない』
「具材はホワソとブロッコリーと樹皮……牛すじだな」
「……バナナ」
「やめようかそれは」
「ふむ、タンスイよ。好きな物を煮込んでいいならこれなんかどうだ?」
オルガが見せたのは水色と白色の二匹のスライムだった。
【スライムってどんな味?】




