第14話 樹木の花粉は食えるのか?
【任せろパーン! 俺がこのダンジョンを攻略してやる!】
父さま、ごめんなさい。オレが言ったばっかりに。
【父さまの仇だー! あだっ!】
魔造は一瞥するだけで相手すらしてくれなかった。
【任せてパーン、代わりに私が無双してあげるから!】
――ありがとう。
【もう大丈夫だ。実力のある探索者達が倒してくれたぞ。仇は取ってくれた】
――そう、なんだ。
オーガは力の種族だけど、それだけで無双できる程ダンジョンは甘くない。
天技に恵まれていても、父さまは負けた。
母さまの天技では敵わない。侮辱したい訳じゃない。この天技だって大事だ。
力に憧れたけど適性はサキュバスなんだ。
受け入れよう。諦めよう。
もう別の人が仇を取ってくれたんだから。
【お前はオルガさんとパーンが倒す! だから、それまで待ってろ!!】
「――!?」
結界中に響く啖呵に、一人と一体が身体を硬直させた。
タンスイは魔造を見た事はあるが、戦った事は無い。
しかし片手で数える程度の知見と今の経験で、閃く。
この魔造は後手を取った。タンスイが魔力を纏った後、ようやく拳を振り上げてきた。転移した時点で殴りかかる事もできただろうに。
人のような挙動をする魔造なら、もしかすると交渉できるのではないか――そうタンスイは踏んだ。
「魔力の多い俺らじゃなくて、肉体と肉体をぶつけた方が面白いよな。で、あのオーガは力の種族だ。しっかりと鍛えたうえでなら、間違いなくお前も満足する良い戦いができると思うんだが……」
このタンスイの提案に、魔造は腕を組むという挙動で答えた。
「でもそのためには、先にここを探索する必要があるんだよなぁ……ってことで探索させてほしいんだけど、どう?」
魔造は褐色の女性に顔を向けしばらく停止すると、踵を返して端に座った。
「嘘!?」
『反応を見るにイレギュラーなのか?』『魔造の情報が無さすぎて分からん』
コメットは口元を手で覆い思案するが、どうであれ魔造が引いたのは事実だ。
三人が魔法陣の近くで警戒する中、タンスイはマチョ樹の根元にある粉に近づいて妖精に食べてもらう。妖精は何を食べても味覚以外実体に影響は無いので、花粉を食べて仮に毒だったとしても問題無い。
『異世界例えメシじゃなくてもう異世界ゲテモノ食いやないかww』
「花粉じゃなくてプロテインパウダーと思えばゲテモノじゃないだろ?」
『思えば?』『プロテイン高いんだよなぁ』『取り放題なら最高すぎる』
「では、食べてみますね」
馴染みのある薄いクリーム色の粉を選び、小さな楕円の手に取って口に含む。
――――
――
「うおっプロテインだ……しかも風味はホエイ!」
「ガウッガウガガウガウガババウバウバウッ!!」
「うわああああああっ!!」
『魚キタアアアアッ!!』『残念エルフだ!!』『タイミング草』
突然コメットが陸に打ち上げられた魚のように身体をうねらせ、地面を這いながらプロテインパウダーを口に入れる! しかしそのまま食べる物ではないので盛大に咽せて悶え苦しんでいた。
ひっくり返った虫のように蠢くコメットを無視しながら、タンスイは樹を見る。
思いついた。
【マッチョマッスルの樹液ってどんな味?】




