第13話 プロテインゴーレム
「鑑定しなくても分かりますよ」
「あーうん。真っ黒でよく見るとアーモンドとナッツがっ……ておまっ」
【プロテインバー チョコレート&ナッツ】じゃねえかっ!!
大小様々なナッツ類が詰まった黒色のブロック。
魔造は兎魔獣よりも一回り大きく、体躯に見合った巨大なアーモンドが顔にも拳にもある。
『手のアーモンドがメリケンサックみたいだ』『うまそ~』『そこはいたそ~だろ』
魔造は通常、鉱物で構成されるが稀に食材でできた個体も存在する。
そしてプロテイン魔造(仮)の背後には、複数の奇妙な樹が数本生えていた。あれがコメットが言っていた樹だろう。
根、幹は灰色がかった茶色で、人の上半身のような形をしている。
頭部には緑の蕾が密集し、アフロというかどう見てもブロッコリーだ。
「フロント・ダブル・バイセップスと言います。有名なポーズですね」
「なんとなくあの樹に笑顔と白い歯が見えなくもない」
「【鑑定】しましたが【マッチョマッスルの樹】という名前で、頭部はブロッコリー、腕のコブのとこに生えてる黄色の実はまんまバナナですね」
馴染みのある食材名が出ると安心する。
妖精達は全員【鑑定】を持ち、ダンジョンの物なら名称と簡単な概要を見られる。
誰がテキストを用意しているかって? そんなものは神のみぞ知る。
さらにマッチョマッスルの樹の根元には、淡茶色の花粉が山になり積もっていた。
別の樹の根元にはクリーム色の粉があり、よく見ると何色も山がある。
妖精が鑑定すると【花粉】と出て身震いした。
タンスイは前に出る。
筋肉の合成にはタンパク質が重要だ。
花粉も正体はタンパク質。プロテインバー魔造もタンパク質。
ビーポーレンの栄養素やバナナは糖質でこれも筋肉には欠かせない。
ブロッコリーも同様。
コメントによれば、花粉は風媒花粉と虫媒花粉に分かれる。
風媒花粉は大量に飛散して花粉症を起こしやすく、虫媒花粉は重く飛散しにくい性質があり、アレルギーも引き起こさないとされている。
――ビーポーレンは飛散しない虫媒花粉から作られる。
で、あの花粉は飛散していない。
食べられるのでは?
「タンスイさん、あなた何を」
「ふと閃いた。あれプロテインじゃね?」
【プ ロ テ イ ン だ と ! ?】
「花粉が!?」
「プロテインパウダーだっけ? アレかもしれないから食べてみよう」
「正気ですか!? アレルゲンかもしれない花粉を!?」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。でも怖いから、プロテインパウダーの味が分かるマッチョ勢いる?
「――それなら任せてください、俺ボディビルダーなんで!」
それは心強い。タンスイと妖精は拳を突き合わせる。
【同時接続者数17,000,000】
【魔力供給】
【90%】
膨大な黄緑色の魔力を全身に纏い魔造と対峙するが、この魔力は防御に回す。
「見せてみろ、お前の天技を!」
魔造はまるでタンスイの言葉に呼応したかのようにオルガと同じ天技を使う。
【筋力増強】
魔造が両拳を掲げると全身のブロックが肥大化し拳が膨れ上がる。
そして握り拳をタンスイの頭に拳骨のように振り下ろした!
ナックルパートから突き出たアーモンドがタンスイの頭上に直撃する。
頭から足先にかけて衝撃が走り地面に亀裂が入る――
が、無傷!
超硬質の杭が如く! 直立のまま魔造渾身の鉄槌を受け切った。
「コメット、この魔造は食べられるしあの奇妙な樹も価値があるかもしれない!」
コメットは無言かつ即座に両手を前にかざし詠唱を始める。
その姿を、パーンは視界に収めていた。
【代わりに無双してあげるから】
皆、倒していく。
タンスイも倒せるのか、あれを。
オレには倒せない、あれを。
オレは何してるんだ。皆オレを強くするためにいるのに。
何もできていない。オレだけが力になれていない。
「待ったコメット、攻撃しないでくれ」
「は? あんなのちゃっちゃと――」
魔造はまだ力を拳に乗せており、タンスイの身体を伝って力は地面に流れていく。
タンスイは頭上のアーモンドを掴み、そっと距離を離す。
魔造はその強さと敵意の無さを見て、攻撃を止めて数歩後ずさった。
黄緑色の魔力が炎のように揺らめく中。
魔造を見据えて人差し指と中指を揃えて魔造へ向け、宣言した。
「お前はオルガさんとパーンが倒す! だから、それまで待ってろ!!」
――!?




