第11話 史上最悪のダンジョン!?
【地球人にとっては魔王よりも、身近な〇〇の方がよほど恐ろしい。】
俺の名は町世 真擦!
しがないボディビルダーで好きな料理はプロテイン!
なんとついに抽選に当たり妖精化できることになりました!
これで俺も異世界デビュー! しかもタンスイさんは初めて未攻略のダンジョンを攻略するらしく、ワクワクが止まりません!
お、そろそろダンジョンに入る頃合いですね。一緒に入ってみましょうかって――
「ぎゃああああああああッ!!」
***
郊外の山々に囲まれた小さな盆地へ、魔族三人は風魔法で静かに着地した。
目の前には巨大な土のドームがあり、中には魔法陣が見える。
少しして上空から風切り音が響き、爆音と共に土煙が舞い上がる。
煙が晴れると、クレーターの中心でタンスイがうつ伏せに倒れていた。
『ムチャしやがって……』『魔力纏い大ジャンプは玉ヒュンなんよ』
『これやりたかっただけだろww』『草』
タンスイが立ち上がって三人を見ると、コメットとパーンのハズレダンジョン経験者は眉間に皺を寄せ顔に影を落としている。
「……行く」
「よし、じゃあ入ってみるか!」
メンヌは未経験なようで肩に跨ってくる。コメットに促され魔法陣に乗って魔力を纏い転移すると、景色が変わった。
「さてこのダンジョンは――樹が埋め尽くして壁になって、編み込まれた枝葉が天井を作っている、まさに自然の洞窟と言えましょう」
『テーマパークに来たみたいだぜ』『どこがやねん』『見た感じ一本道っぽいな』
芝の地面、天井、左右の壁の間隔ともに20mほどはある。
そして一点、言及しなければいけない事があった。
「うーん、探索者が嫌がるような要素は見当たらな……ゴホッ……いが。
ただ少し視認性が悪いか? 黄色い霧のようなものが漂って――」
「ぎゃああああああああッ!!」
妖精の絶叫! 振り返ると妖精達が魔法陣にしがみついていた。
何を慌ててるのかゴホッ……分からないゴホッ。
「タンスイさん帰りましょう! これ全部花粉です花粉!」
目がかゆい! 痛い!! かゆい!!
***
「ああああああああああっ!!」
外套も服装も黄色い粉まみれの男と少女が転がって土ドームの中から飛び出る。
タンスイ初の花粉症発症!! わずか数分で目のかゆみ、呼吸のしづらさ、さらに激しい動悸に見舞われ胸をおさえて苦しんでいる。
メンヌは鼻水を垂らしうつらうつらと身体を揺らしている。
妖精達も転がっているが、彼らは味覚以外実体に影響が無いものの猛烈な花粉を見て拒否反応を起こしていた。
惨状を見てからコメットは詠唱を開始し、キュアとクリーンの魔法を同時に発動させると、激しい動悸は落ち着き呼吸が安定した。
花粉自体は毒ではないが、キュアは毒として認識したらしい。
「ってことなのよね~」
「先 に 言 え ! !」
「言っても行くでしょ」
それはそう。
『ガチでキツい!』『帰るべ』『見てるだけで目がかゆくなるって!』
コメント欄も戦々恐々としている。
日本人の三人に一人が発症すると言われる現代病だけに、その恐怖はコメント欄でも共有されていた。
【地球人にとっては魔王よりも、身近な花粉の方がよほど恐ろしい。】
コメットが言うには、一層は魔物が出ないので宝箱も出ず、周囲の鬱蒼とした森も木材として珍しくない。花粉が出るぶん負担が大きいだけの、まさに攻略する必要性が無いハズレダンジョンだ。
元オーガキングのオルガや一部探索者、コメットは経験のため探索をして二層まで足を進めていたのでこれを経験していた。
オルガは魔造に敗れたが、魔法や飛び道具を使えば十分に倒せる相手らしい。
コメットにとっては苦戦する相手ではないという。
立ち上がると宍色の手が髪の毛を掴む。
えっ。
「まぁ、魔力タンクがいるんだから風魔法で全部吹き飛ばしましょ♪」
四人と妖精達は固まって土ドームの中へ足を進める。
が、何故か配信画面は土ドームと外を映したまま定点カメラのように動かない。
『??』『あれ、壊れた?』『おーい』
【三分後】
「あああああああああっ!!!」
土ドームから全員が土煙を上げながら転がり出てきた。
『おかえり』『あ、そうか』
タンスイは伝え忘れていた。魔力纏いは地球から膨大な魔力を受け取り続けることができるが制約がある。
【三分間継続発動、一分間インターバルが発生】する。
常時発動はできず、一分間だけ強制的に魔力を失う状態になってしまうのだ。
「ってことなんだよね~」
「先 に 言 え ! !」
「言っても行くでしょ」
「行 か な い わ よ ! !」
キュアとクリーンでふりだしに戻る。
そこへ人の顔ほどの大きさをした蜂型魔獣が、羽音を立て山から大量に飛来する。
イモモでは馴染みは無いが、地域によっては魔獣と共生する街や都市もある。都市で何度か巨大な兎魔獣を目にしていたので、タンスイは何となく察していた。
蜂は全体が黒く、尻部が黄色の縞模様。背中から胸にかけて、ファーのような毛に覆われている。地球で言うところのミツバチだろうか。
メンヌはこの魔獣を【ハコビバチ】と呼んでいた。
彼女が率先して喋ると魔獣達は寄り添うように近づき、メンヌは頭を撫でている。
大樹コロスケダンジョンで兎の魔獣に挨拶をしていたが、彼女は魔獣にかなり懐かれているように見える。
ハコビバチ達は魔力を纏いダンジョンへ入っていく。
魔物が出ない以上、目的は戦闘ではない。
四人と地球人達はこの後知ることになる。
この魔獣達こそが、このダンジョンを攻略するカギになるのだと――
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