第10話ゴーレムと神格料理とは
なんと1LDK。さすがはキングとクイーンの家だ。
……キングとクイーンの家って何だ。
『お城かと思ったら普通の家だったな』
地球でも、こんな家族と暮らせたなら――。
そんな考えを振り払うように頭を振った。
一同はダイニングの椅子に腰掛け、メンヌとパーンの母親はソファへ座った。
キングやクイーンとは一族の族長を指す称号だが、彼らは元という文字が前につく。一族が都市に移り住んで以降、族長という身分は無くなった。
パーンの父【オルガ】は――
『止まるんじゃねぇぞ……』『草草』『真面目に聞け』
現役探索者だった頃、とある魔物との力勝負に敗北を喫した。
彼の天技をタンスイが尋ねると【筋肉増強】と快く答えてくれた。魔力纏いとは別に、鍛え上げた筋肉を倍化させる力だ。
だが敵の魔造も同じ天技を持っていた。
ダンジョン攻略の難度を跳ね上げる存在――それが魔造。
人や魔族は天技という力を持つが、魔物は基本それを持たない。
よってダンジョンの侵入者側が有利なのだが、唯一天技を使える敵が魔造。
大きさは様々で、人型の頭・胴・手足を持つ。
四角いブロックのような個体も、本物の人間のようにしなやかな個体もいて、これらは胸の赤い核を壊せば霧散し倒すことが出来る。
オルガはそれに敗れた。最強の筋力を持つオーガの族長が力勝負で負け、かつ左腕を引きちぎられた。魔造は戦意を喪失したオーガの姿を見て、背を向けたという。
天技に恵まれた力の王が負けた。力に憧れていたパーンは、その日オーガの限界を知った。
「全て俺が負けたせいだ。なんとも情けない話だがな!」
「いや、父さまのせいじゃ……」
彼女の天技は本人の力に関係が無いサキュバスの天技で復讐も叶わない。
諦めが早いようにも見えるが、執着こそが探索者を死へ追いやる。彼女は利口だ。
そんな失意の中、コメットは啓示を見つけパーンの天技を頼った。
ただのガキ大将かと思っていたが、目的と天技の意義を与えようとしていたのか。
彼女の男性に対する偏見も、あの母親を見て育ったからか。
そして、それらは本心では無かった。
【最強の父親が同じ天技を持つ魔造に敗れ】
【オーガの限界を知ったパーンは】
【コメットに乗せられたが】
【それでも本心では戦いたい】……ということか。
『あぁ、気持ちがチグハグになっているのはそういうことか』
『オレ使いで覇気が無いっていう?』
コメントが各々反応する中、タンスイは解決する方法を提案した。
「――神格料理」
人や魔族が、個人や種族に合った料理を食べることで存在そのものが格上げされる謎の現象。あの小さなコウハを恐ろしく肥大化させた料理を見つけられれば、解決できるかもしれない。
「君なら作れるというのか? 神格料理を!」
「分かりません。でも料理なら、“皆”がいるので得意です!」
『任せろ』『人類の叡知とAIを駆使する』『料理無双だ!』
料理は無限。誰が何の料理に合うかは未知数だが、見つかればパーンの強化は間違いない。とすればダンジョンレースも有利に運ぶ上、探索者ランクアップも容易になる。
「本当にそんなものが……いや」
「諦めが早いのも大事だけど、可能性がある限り模索し続けるのも大事だ。それが探索者だぞパーン!」
先輩ヅラをしているが探索者として経歴が長いのはパーンでタンスイは格下だ。
だがやる気だけはある!
まずは、その魔造がいる因縁のダンジョンの場所をオルガに尋ねた。
『灯台下暗しってね』
オルガが教えたのは都市郊外の小さな山間盆地にある、数年前に出現した誰も通わない通称【ハズレダンジョン】。攻略難度が高かったり、利益が少ないダンジョンはハズレと呼ばれている。
コメットが紙に描かれたダンジョン都市近辺の地図をテーブルに広げ位置を記す。
元々はオーガ族が暮らしていた村があったそうだが、ダンジョン誕生後、蜂型の魔獣も押し寄せるようになり都市に移動するようになったという。
「ここは二層構造なんだけど、一層が最悪ね。二層はフロアボスのみのエリアよ」
「オレはもちろん行くぞ」
「私も行くわ、責任者としてね」
「……うぃ」
いつの間にかメンヌが肩へ跨っていた。
このハズレダンジョンは数年前、実力のある探索者達が複数のパーティで攻略したものの、実入りが無いと判断し、更新以降再攻略されていない。
行ってみるか――名も無きハズレダンジョンへ!!
なお1話でサイ〇人化した客が神格料理の影響です。




