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終演での世界での始まり16

「終わった……のか?」

 拓哉は倒れた亜利砂へと視線をやりながら小さく呟くように言った。

 その言葉にアリスは後ろの方へと金髪のゆるふわツインテールを靡かせながらゆっくりと振り向きながら拓哉へと答えた。

「ええ。……今度こそ終わったわ」

「そうか」

 ほっと安堵したと共に体が急に脱力感に襲われ拓哉は思わずその場に膝をついた。

「拓哉」

 慌てて声を上げるアリスに彼は淡い笑みを浮かべながら言った。

「大丈夫だ。ただ単に力が抜けただけだ」

 拓哉の言葉にアリスは微かに唇の端を上に上げ、ほっとしたような表情をした。そして拓哉の前へと来ると、膝を折り、アリスはそっと拓哉の体へと掌をかざした。拓哉の体全体が淡い光へと包まれる。それが回復魔術だと拓哉は気づくと慌ててアリスへと言った。

「馬鹿! お前何やってるんだよ。俺は《生命の源》なんだよ、こんな傷すぐに治る。それよりも自分の回復から先にしろよ」

「だけど」

 アリスは拓哉の言葉を遮り、拓哉へと視線を真っ直ぐに向けながら言う。

「だけど、治るまでには時間がかかるし……それに痛い事には変わらないでしょ?……これは私がやりたいからやっている事なの。あなたが気にする必要なんってないわ」

 彼女の口振りは素っ気なく、表情は極めて無表情な彼女に拓哉は思わず苦笑を一つ溢し、そして破綻した顔をした。

 そんな彼の顔を見てアリスは不思議そうに小首を可愛らしく傾げた。

 少し前の自分ならば彼女の言葉に多少ムッとし、同時に違和感を抱いたのかもしれない。

 だけど今は違う。

 彼女の事を………神宮時アリスの事を知ってしまった。

 拓哉は口を開きかけたがその前に彼女の唇が動いた。

「あなたの話を聞いた時は正直驚いた……。だけど結果、上手くいって良かったわ……」

 あの時、拓哉がアリスに提案した作戦はごくシンプルなものだった。

 自分が囮になるから、敵の隙をつき全力で叩けと言うものだったのだ。

 あの時、僅かながらアリスは不満を抱いた。その作戦はあまりにも無謀に近く、下手をすると彼が真っ先に敵から殺されてしまう可能性があったからだ。

 だけど、その時の彼の目は強い眼差しをしていた。それは先程までとは全く違う。覚悟を決めた目をしていたのだ。

 だから彼女は彼を信じた。

 彼は敵をギリギリのところで惹きつけ、相手の隙を作り、こちらに側に時間を与える事に成功したのだ。

 アリスは内心拓哉の判断力と行動力に関心を抱いていた。

「なぁ……アリス」

「……ん?」

「お前は……さ、この後どうするつもりなんだ?亜利砂から情報を聞き出し、兄貴を殺した《代表候補者》をぶちのめした後、お前は…このまま一人で魔術師をやっていくつもりなのか?」

「私は……」

 拓哉の疑問に答えるべく、アリスは口を開きかけ、そして引き結び、躊躇して視線を手元へと落とした。

 その時、カタンと微かな物音がした。

 慌てて拓哉達は亜利砂の方へと視線を向けると、気を失っていた亜利砂が床に手をつき、必死で身を起こそうとしていた。

 それを見、拓哉は顔色を変え、慌てて立ち上がろうとするが側にいたアリスの声が彼を制した。

「大丈夫よ。……今の彼女には魔力があまり残っていない……。使えたとしても、さっき使っていた光の矢を1、2本射つぐらいの魔力しか残っていないわ。……」

 亜利砂はよろめきながらも、一度は再び床に倒れ、それでもなお立ち上がろうとする。それを見て拓哉は顔を曇らせながら彼女へと声を上げた。

「もう諦めろよ。どうしてお前はそこまでするんだよ」

「あなたには……分からないわ……。大切はものを全て奪われて、それを救ってくた人がいて、その人の為に自分の全てを捧げてでも力になりたい! それがこの世界の為になるならばどんなに素晴らしい事なのか、あなたにはきっと分からない……わ……」

「ああ。分からねぇよ! そんなもん。だけどなこれだけは言える。お前の考えは間違っている! それもどうしょうもなくな!」

「あなたに何が分かるって言うのよッ!」

「こっちだって家族を殺されてるんだよ!! 勝手にお前だけ被害者ヅラすんじゃねぇ!!」

 顔をしかめ亜利砂の言葉を遮り、拓哉は怒鳴り散らした。

「言っとくけどな、そいつはお前の事も、世界の事も全く考えていない。お前の言うとおり神様のような全ての人を平等にと言う考え方ならば、まずはお前を簡単に捨て駒なんかにしねぇ筈なんだよ。それも自分の《代表候補者》付き魔術師をな!」

「そんな事は、そんな事はない! いつだって主様は私を必要としてくれた。優しい言葉をいつもかけてくれた! 主様は私をいつも必要だと言っていた」

 亜利砂は何度も、何度もかぶりを振り、否定を繰り返す。

 結城亜利砂は自分の《代表候補者》の言葉に酷く、酷く、執着……心酔をしている。

 それは簡単に言うとマインドコントロールに近いものだ。

 自分が信頼していた者の為に尽くす。

 それが自分の喜びとなり、結果自分の身を滅ぼしている事に気づきはしない……。

 彼女は自分の《代表候補者》に騙され、言いように使われている。例え、彼女と彼女の《代表候補者》の間で絆があろうとも、それは間違ったやり方でしかないのだ。《代表候補者》の為に、世界の為に彼女は躊躇すらなく、簡単に命を差し出すのだろう……。

 彼女は狂っている。

 それも悲しい程に。


 その時。ゾクリとした嫌悪感が拓哉の体中を駆け巡った。

 一瞬で空気の圧が変化し、胸の内から恐怖感が生まれ、額から脂汗が流れる。

(何なんだこれ……)

 コツ、コツと靴の踵を鳴らす音が廊下の向こう側から響き渡り、拓哉は視線を音がする方へと向けた。


 瞬間―――。


 彼は大きく目を見開いた。

 黒のロングコートを靡かせ、その下からはグレーのシャツ、黒のネクタイ、スラックスを着用し、白髪をオールバックにし、眉間にシワを寄せ、目元には銀色の眼鏡を掛けた一人の男の姿があった。

 見るからにどこか厳格そうで、また気難しそうな、そんな雰囲気と同時に威圧感を漂わせている。そんな男だった。だが、拓哉はそれがただの人間ではないと直感的に肌で感じた。

 その男は拓哉達を一瞥し、そして亜利砂の前へと立つと、立ち上がろうとする亜利砂を見下ろしながら冷淡な声音で短く言った。

「こんな奴ら相手にいつまで時間をかけている」

「申し訳ありません……主様……」

「もういい……お前は用済だ」

 男はそう冷酷に告げると、思いっきり足で体を蹴り飛ばした。ドサッと床に亜利砂は再び倒れ込み、短く呻いた。

 と、同時に男の後ろから一直線に描かれた奇跡が空中を奔った。

 男は振り返らず、嘲笑を浮かべながら腕一本でそれを簡単に凪ぎ払った。虚空に空しく奇跡が消え去る。そして男は静かに振り向いた。

「やれやれ……《関東》の《代表候補者》付きの魔術師は随分とぶしつけな者なんだな」

「うるさい!! ……あなたが、あなたが智也を私の《代表候補者》を殺した張本人ね……」

 アリスが怒りで声を上げた台詞に対して男は興味なさそうに、そして煩わしそうに答えた。

「お前も魔術師ならば知っているだろう?これは殺し合いの戦争だと言うのを。それにアイツは、彩和月智也は弱いから死んだ。ただそれだけだ」

「お前……」

 拓哉は鋭い視線で男を睨み、そして立ち上がった。それを見た男は拓哉へと瞳を向けた。

「お前が彩和月拓哉……か。悪いがお前にはここで死んでもらう」

「上等だ!! 《関西》の《代表候補者》お前は俺が殺してやる!!」

挿絵(By みてみん)





 拓哉は吠え、拳を握り、《関西》の《代表候補者》進藤青葉目掛けて駆け出した。

お久しぶりです。せあらです。

大変お待たせ致しました!white・アウトの続きになります。

去年休載をさせて頂き約7ヶ月ぶりの更新になります。

本来は春ぐらいに連載の方を再開する予定でしたが、私の仕事、そして執筆速度が遅い為結果お待たせするかたちになりまして誠に申し訳ありませんでした。


では本編の方を少しだけ触れさせて頂きます

今回は拓哉+アリスVS亜利砂のバトルシーンをメインに書かせていただきました。

このシーンは実は結構前から、それこそプロットを練っていた頃から考えていたシーンであり、ぶっちゃけ書いてて凄く楽しかったです!

そしてついに《代表候補者》進藤青葉が登場し、次回は彼と拓哉達の戦いになりますが、

拓哉達が進藤にどう挑むのか見届けて頂けたら嬉しく思います。


最後にイラスト、挿絵担当の冬原さん毎回本当に、本当に素敵なイラストを描いて頂き有り難うございます!!

冬原さんの描かれるアリス、亜利砂が可愛すぎて毎回堪能させて頂いております。(勿論

拓哉、庵も好きです!!)


最後にここまで読んで下さった読者様本当に本当に有り難うございました。

少しでも楽しんで頂けましたら幸です。

また次回もお付き合い頂けましたら嬉しく思います。





せあら

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