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あるじとかな  作者: 夜霧
第一章

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7/17

子供たち

 昼過ぎになると、みのりとくるみが訪れ、みのりが雑務をしている間、くるみがかなとあおと遊ぶ

 そんな日が数日続いた

 あおも落ち着いて、塔での暮らしに慣れてきたようだ

「みのりさん。あおも塔に慣れてきたようなので、明日から通っていただかなくても大丈夫そうです」

 魔術師は、あおと遊ぶかなとくるみを見ながら微笑んだ

「そうですね。あおちゃんすっかり慣れましたね。かなちゃんがよく面倒見てますから安心ですね」

 みのりも嬉しそうに答えた

「魔術師様、また、遊びに来てもいい?友達もかなちゃんと遊びたいって言ってるの」

 魔術師とみのりの会話が聞こえたのだろう。みのりの後ろから伺うようにくるみが言った

「そうだな……。私もやることがあるので時々なら」

 かなも遊びたいのだろう、くるみの隣に来て期待を込めた顔で魔術師を見上げていた

「ありがとうございます」

 くるみがぺこりと頭を下げるとあおの元へ戻って行った

「私も子供たちと一緒に来ます。お庭が騒がしいと思いますが、魔術師様はいつも通りお過ごしくださいね」

 みのりには「わかっております」と言われている気がした


 翌日から、再び静かな塔の暮らしが始まった

 かなは、小さなあおの移動が大変だと、よく背に乗せて運んでいた

「あお、ぼく上に行くよ。乗る?」

 かなはぺたりとお腹をつけてうつ伏せになった

 あおはキュッと返事をするとかなの背へよじ登る

 あおを乗せて長い階段をゆっくりと登ると

「あお、飛ぶよ」

 一声かけてから出窓へ上がった

 それが毎朝の光景になった


 魔術師は魔導書から顔を上げると、かなはいつも通り出窓で丸くなり昼寝をしていた

 そのかなのしっぽを枕に日陰であおが眠っていた

「仲良しだね」

 魔術師はクスリと微笑むと、また魔導書に目を落とした

 静かな塔の日常は、あおが来ても変わらず優しく流れていった


 その日もかなとあおは出窓でお昼寝をしていた

「かなちゃーん」

 かなの耳にくるみの呼びかけが聞こえた

 かなが窓から外を見ると、こちらに向かってきながらくるみが手を振っているのが見えた

「あるじ、くるみたちが来た。ぼく行ってくるね」

「行ってらっしゃい」

 魔術師は手を止め、かなに言った

 かなは、しっぽにしがみつき寝ているあおのおでこを舐めた

「あお、一緒に行く?」

 あおはかなの呼びかけに目を覚ますと、あくびをひとつして伸びをした

 かなは出窓から床へと飛び降りるとあおを振り返った

 あおはキュッとひと鳴きすると、かなの背中に飛びついた

 かなはあおを背に乗せたままゆっくりと階段を降りていった

「かな、気をつけてね」

 魔術師はかなとあおを見送ると再び手元に目を落とした


 緩急をつけながら走るかなを捕まえようとする子供たち

 身軽なかなは上手く子供たちの手を避け逃げ回っていた

「かな、捕まえた!」

 捕まえられないことに子供たちがじれ始める前に、かなはちゃんと捕まっていた

「捕まっちゃった。次はそうたが逃げる番だよ!それ!追いかけろ」

 かなを捕まえた、そうたを鬼に指名するかな

 かなの掛け声にみんなが笑いながら走り出した

 以前子供たちが不貞腐れたり泣き出したりしたため、かなも加減がわかってきていた


 子供たちが遊んでいる間は、あおはみのりの膝の上で過ごしていた

 みのりにブラシをかけられたり、撫でられたりしながらうとうととしている事が多かった

 みのりはあおにブラシをかけ終わると、そろそろ疲れてきているだろうと思い子供たちに声をかけた

「一度休憩にしましょう」

 息を上げながら木陰へと子供たちが走って来た

 飲み物を渡し、人心地ついた頃みのりはかなへ言った

「魔術師様とかなちゃんにお願いしたい事があるんだけど、魔術師様とお話できるかしら?」

「わかった、あるじに聞いてくるね」

 かなは塔へと走っていった

「今じゃなくて良かったんだけど……」

 みのりはかなの行動力にクスリと笑いがこぼれた


「あるじ、みのりがお話したいって」

 魔術師の書き物机に登るなりかなは言った

 魔術師は手元から顔を上げ、かなを見た

「みのりさんはなんて言ってたの?」

「ぼくとあるじにお願いがあるって」

「どんなお願いごとかな?」

 かなは首を傾げた

「わかんない、お話あるってみのりが言ったからぼくがあるじに聞きに来たの」

「そっか、それなら一緒に下に降りようか」

「うん!」

 かなは嬉しそうに返事をした

「あるじ、早く!」

 魔術師を急かし階段を下って行った

 魔術師は小さく笑いながらインク瓶の蓋だけ閉めるとかなの後へついて行った


「お母さん、あるじ連れてきたよ!」

 かなは得意げにみのりに報告する

「かなちゃん、ありがとう」

 そんなかなの頭を撫でてみのりは褒めた

 だが、顔を上げ、魔術師の方を向いた時は申し訳なさそうな顔をしていた

「魔術師様、お手を止めさせてしまい申し訳ありません」

「いえ、かながした事ですから」

 魔術師も心得ているといった顔をした

「すみません。かなちゃん、止める間もなく行ってしまったので。次からは気をつけますね」

「大丈夫ですよ、私も慣れていますから」

 そういうとみのりと顔を見合わせて笑いあった


 みのりは魔術師にも飲み物を勧め、落ち着いてから話をはじめた

「お願いというのは、あおちゃんが生活する上で過ごしやすくするためのものを作ろうと思うので、その許可をいただきたく、ご相談させていただきました」

「どんなものでしょうか」

「かなちゃんと離れている時に、あおちゃんが眠る時に抱く、かなちゃんのしっぽの代わりになるものを、あおちゃんの抜け毛で作りました。これにかなちゃんの匂いが付いていたらあおちゃんが安心して良く眠れるのではないかと思ったんです。それともうひとつ、魔術師様がお使いになれる、あおちゃんの移動用ポシェットがあったら良いかと思いまして」

 あおの抜け毛と思われるものを棒状にした抱き枕を差し出しながらみのりは説明した

 魔術師はそれを手に取った

「たしかに、あおはいつもかなのしっぽを枕にしていますね」

 かなが抱き枕を覗き込みながら言った

「ぼくの魔力を入れてもいいよ。あおのためでしょ?」

 みのりからの頼み事ならなんでも叶えてしまいそうな勢いのかなに少し不安を感じた

「かな。魔力は簡単に分け与えるものでは無いんだ」

「あおのためでも、ダメ?」

 かなは耳を伏せ悲しそうに魔術師を見上げた

「今回は良いよ。あおのために少しだけ入れよう。でも、頼まれても簡単にかなの力は使ってはいけないよ」

 魔術師はかなの頭を優しく撫でた

 かなは嬉しそうな顔をすると、魔術師の手にある棒状のものへ前足を乗せた

 白い光がふわりと光った

 かながほんの少しだけ魔力を込めると、棒状の抱き枕はあおの青色とかなの白色が、渦を描くように混じり合い、最後に水色に一瞬だけ輝いた

 それをみのりに渡すと、あおに渡した

 あおはキュッと鳴くと、ぎゅっと抱きつき、そのままみのりの膝の上で丸くなった

「気に入ったようですね」

 その様子を見守っていた魔術師が言った

「はい、良かったです。魔術師様、かなちゃん。ありがとうございます」

 ふたりの顔を見てみのりはお礼を言った


 後日届いたあお専用ポシェットは肩からかけられる紐と、ベルトに取り付けられるベルトループが付けられており内部はふかふかで居心地が良さそうだった

 あおは入ったまましばらく出てこず、そのまま眠ってしまうほどの気に入りようだった

 みのりの手仕事には本当に世話になりっぱなしだ……。魔術師はかなとあおを眺めながらそう思った
















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