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あるじとかな  作者: 夜霧
第一章

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お母さん

「かな、今日は村へ薬草届けに行くよ」

 ひなたで寝ようと階段を登りかけたかなは、目を輝かせた

「一緒に行く。美味しい物食べたい」

「村にはお菓子を売るお店は無いんだよ」

 わかりやすくかなが落ち込んだ

「かなはここでお昼寝してる?」

「あるじと行く」

「わかった、準備が出来たら出かけよう」

 魔術師はかなの頭を撫でると地下の倉庫へと向かった


 村へ入るとかながくんくんと匂いを嗅いだ

「あるじ、色んな匂いがするね」

 かなが興味深そうに目を輝かせていた

 前に来た夜とは違い、昼間は人々が活動していた

 食事の支度などの匂いに、かなは惹かれているようだ

 村の奥に進んでいると、村長が出迎えに来た

「魔術師様、御足労頂きありがとうございます。先日は村の子供を助けて頂きありがとうございました」

 村長は深々と頭を下げた

「先日私のところにお礼に来ました。元気になって良かったです」

 魔術師はそう言うと袋の中から村長に包みを渡した

「頼まれていた熱冷ましの薬です、足りなくなったら、またご依頼ください」

「ありがとうございます、魔術師様は何がご入用でしょうか?村にあるものでしたら、お渡しできますが」

 村長が薬を受け取ると尋ねた

 かなが喜びそうなものはあるだろうかと辺りを見回した

 先程まで足元にいたはずのかなの姿が見当たらなかった

「……かな?」

 小さく呼ぶが返事が無い

「申し訳ありません。失礼します」

 魔術師は村長へ一礼すると、かなを探すため歩き出した

「お母さん!」

 かなは覚えのある女性目掛けて走り寄った

「お母さん!」

 女性は一瞬驚いた顔をしたが、かなが走り寄るのを見ると、かなと視線が合うよう膝をついた

「お母さん!」

 女性はかなの呼び掛けに嬉しそうな顔をした

「お母さん、と呼んでくださるのですね。では、私は『 かなちゃん』とお呼びしようかしら」

「いいよ」

 かなも嬉しそうに答えた

「かなちゃんは一人で来たの?」

「あるじと来た、でもあるじ話してたから待ってたんだ。そしたらお母さんの匂いがしたからぼく来ちゃった」

 お母さんはかなを抱き上げた

「それはきっと魔術師様が探しているわね。かなちゃん、魔術師様を探しましょう。どこにいるのか分かる?」

「わかるよ!あっち」

 かなは前足で魔術師がいる方を指した

 お母さんはかなを抱いたまま歩き出した


「あるじ!」

 かなの声が聞こえた

 魔術師がそちらへ向くと、先日の女の子の母親にかなが抱っこされていた

「きっと心配していると思ってかなちゃんと探しに来ました」

 そう言うと、魔術師にかなを渡した

「かなちゃん。魔術師様が心配するから次からはちゃんと行き先を告げるか、一緒に行くのよ」

「あるじ、心配したの?」

 かなが魔術師を見上げた

「かなは強いから大丈夫だけど、何かあったら大変だから心配した」

「ぼく、強いから心配いらないよ」

 お母さんは納得したように頷くと、かなと視線を合わせた

「かなちゃん。人には決まり事があるの。みんなそれを守ってる。魔術師様も守ってくださっている。かなちゃんは聖獣様だから守らなくても良いけれど、かなちゃんも守ってくれたらお母さん嬉しいな」

「ぼくが守らなかったらあるじもお母さんも困る?」

「困ることもあるかもしれないね」

 魔術師はかなの頭を撫でながら言った

「わかった、守る。でもどうすればいいのか分からないから教えて」

「かなちゃんがなにかしたいと思った時は、魔術師様に聞くのがいいと思うわ。あと、ひとりでどこかに行ってはダメよ」

「わかった、あるじに聞く」

 魔術師は、お母さんの言うことを真面目に聞くかなに少し驚いたが、微笑ましくも思えた

「お利口さんなかなちゃんにご褒美あげましょう。魔術師様、お時間ありますか?」

 お母さんはかなに微笑むと、魔術師に聞いた

「ごほうび!おいしいもの?」

 魔術師が答えるより早く、かなは腕の中で立ち上がり、走り出そうとした

「かなちゃんを抑えるのはなかなか大変な事ですね」

 魔術師とかなを見て、お母さんがクスクスと笑う

「本当にそうですね」

 魔術師もかなを見て笑った



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