第22話 『最初の作戦会議』
【チームΩ】
【御門皇牙】
【鷹城迅】
【白瀬蒼司】
【???】
その表示が消えても。
誰も言葉を発せなかった。
怪物三人。
同じチーム。
あり得ない。
九条が頭を抱える。
「運営頭おかしいだろ」
白石も珍しく同意した。
「それは否定できない」
だが。
灯真は別のことを考えていた。
A-17。
研究棟。
兄。
そして。
澪。
◇
本戦参加者専用待機棟。
A-17専用ルーム。
四人だけの空間。
静寂。
最初に口を開いたのは灯真だった。
「確認したいことがある」
白石が見る。
九条も顔を上げる。
澪は黙って待っている。
灯真は言った。
「俺は研究棟関連の情報を最優先にしたい」
静寂。
最初の主張。
主人公としての意思。
白石は眉をひそめる。
「勝つことより?」
「違う」
灯真は首を横に振る。
「勝たないと辿り着けない」
「だから勝つ」
「でも目的は研究棟だ」
兄の記録。
A-17。
黒髪の少女。
全てそこに繋がる。
白石は数秒考えた。
そして頷く。
「了解」
「なら戦術も変わる」
戦術家の顔になった。
◇
白石が立ち上がる。
モニターへ本戦マップを映す。
巨大な中央区画。
十二拠点。
複数のミッション。
複雑な戦場。
「まず戦わない」
九条が即座に反応する。
「は?」
予想通りだった。
白石はため息を吐く。
「皇牙と鷹城がいるのよ?」
「初日から正面衝突したいの?」
九条は腕を組む。
「だから逃げるのか?」
空気が少し張る。
初めての対立。
白石も引かない。
「勝てない戦いは避ける」
「それが普通」
九条は不満そうだった。
「でも戦わなきゃ強くなれねぇだろ」
白石は呆れた。
「だから前衛脳なのよ」
「なっ!?」
九条が立ち上がる。
灯真は思わず苦笑した。
少しだけ。
チームらしい。
その時だった。
「二人とも」
静かな声。
澪だった。
全員が見る。
澪はモニターを見つめながら言う。
「どちらも正しいです」
白石が眉を上げる。
九条も黙る。
澪は続けた。
「戦わなければ情報は得られません」
「ですが無意味な戦闘は損失になります」
正論だった。
白石も反論できない。
九条も同じ。
その瞬間。
灯真は気付く。
澪は監視役じゃない。
チームを見ている。
本当に。
◇
会議は続く。
その時。
モニターの北端。
黒く塗り潰された区域。
灯真の視線が止まる。
まただ。
説明がない。
名称もない。
観測者が反応する。
【警告】
【情報遮断区域】
【解析失敗】
その瞬間。
澪が言った。
「そこには近づかない方がいいです」
全員が見る。
白石が目を細める。
「理由は?」
沈黙。
やがて。
澪は答えた。
「研究棟管理区域だからです」
静寂。
灯真の鼓動が跳ねる。
研究棟。
また出た。
白石が問いかける。
「本戦エリアにあるの?」
澪は頷く。
そして。
小さく言った。
「研究棟の入口です」
空気が変わる。
入口。
その先に。
兄の記録。
A-17。
黒髪の少女。
全てがある。
その時だった。
灯真は聞く。
「A-17は何なんだ」
沈黙。
澪の瞳が揺れる。
数秒。
そして。
「実験番号です」
静寂。
前回聞いた答え。
だが。
今回は続きがあった。
「少なくとも」
澪は静かに言う。
「人の名前ではありません」
灯真の鼓動が速くなる。
また一つ。
情報が増えた。
だが。
核心には届かない。
◇
会議終盤。
白石が作戦をまとめる。
「初日は拠点二つ」
「戦力分析」
「敵チーム観察」
完璧だった。
その時。
澪が初めて自分から言った。
「特別ミッションを狙いましょう」
全員が見る。
澪はモニターを指差した。
【特別ミッション】
【報酬】
【研究棟関連資料】
静寂。
灯真の鼓動が鳴る。
研究棟。
ここでも。
澪は続ける。
「優勝より先に情報が手に入る可能性があります」
白石が考え込む。
数秒。
そして頷く。
「悪くない」
「むしろ最優先候補ね」
灯真は澪を見る。
彼女もまた。
研究棟へ向かっている。
理由は分からない。
だが。
確実に。
◇
会議終了。
それぞれ立ち上がる。
その時だった。
白石が澪を見る。
数秒。
沈黙。
そして。
「一つ言っておく」
静かな声。
「私はまだあなたを信用してない」
部屋が静まる。
九条も驚く。
灯真も。
だが。
白石の言葉は当然だった。
澪は秘密が多すぎる。
何かを知っている。
何かを隠している。
澪は怒らない。
表情も変わらない。
ただ。
静かに頷いた。
「構いません」
短い返答。
白石は少しだけ目を細める。
そして背を向けた。
その時。
灯真が言う。
「でも今は同じチームだ」
静寂。
九条が笑う。
「そういうこと」
澪は灯真を見る。
ほんの一瞬。
本当に一瞬だけ。
その瞳が柔らかくなった気がした。
◇
その夜。
学園中央管理棟。
誰もいない廊下。
長い黒髪の少女が歩いていた。
静かに。
誰にも気付かれず。
目の前のモニターには。
【チームA-17】
少女は見つめる。
そして。
小さく呟いた。
「始まる」
感情のない声。
だが。
どこか嬉しそうだった。
モニターへ手を伸ばす。
しかし。
次の瞬間。
警告表示。
【権限不足】
少女の動きが止まる。
完全ではない。
何でもできるわけではない。
少女は小さく笑った。
「まだか」
そして。
画面に映る灯真の名前を見つめる。
【優先観測対象】
【久瀬灯真】
少女は静かに呟く。
「今度こそ」
「辿り着いて」
その意味を。
まだ誰も知らない。
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