第23話 『最初のミッション』
午前六時。
【本戦開始】
巨大モニターが空を覆う。
二十四人。
八チーム。
七日間。
本戦が始まった。
◇
チームA-17。
灯真。
九条。
白石。
澪。
四人は中央区画東部を進んでいた。
最初の目標。
特別ミッション。
【失われた記録】
【研究棟関連資料回収】
灯真は無意識に拳を握る。
研究棟。
またそこへ繋がる。
白石が地図を確認する。
「目的地は第一資料保管庫」
「問題は全チームに公開されてること」
九条が顔をしかめる。
「つまり?」
「激戦区」
即答だった。
その時。
空中モニターが更新される。
【速報】
【チームΩ】
【第一拠点制圧】
静寂。
開始十分。
もう一つ落とした。
九条が絶句する。
「早すぎるだろ……」
白石の顔も険しい。
「怪物しかいないんだから当然ね」
灯真はモニターを見る。
皇牙。
鷹城。
白瀬。
そして謎の四人目。
本戦が始まったばかりなのに。
もう差がつき始めている。
◇
その時だった。
観測者が反応する。
【特別ミッション更新】
【第一資料保管庫へ到達せよ】
【制限時間:三時間】
地図が表示される。
目的地は中央区画地下。
白石が眉をひそめた。
「正面ルートは無理ね」
予測進路。
複数チーム。
全てが中央へ向かっている。
完全な激戦区。
その時。
澪が口を開いた。
「地下通路を使います」
静寂。
全員が見る。
地図の隅。
封鎖区域。
地下通路。
白石が即座に反論した。
「危険すぎる」
「情報がない」
「敵がいたら終わり」
珍しく強い口調。
澪も引かない。
「正面はもっと危険です」
空気が張り詰める。
九条が腕を組んだ。
「俺はどっちでもいい」
「戦うならな」
灯真は黙っていた。
二人の意見。
どちらも正しい。
その時。
観測者が反応する。
【地下通路成功率】
【67%】
【正面ルート成功率】
【29%】
数字は明確だった。
だが。
灯真はすぐに答えなかった。
観測者に従うだけではない。
自分で決める。
兄ならどうした。
考える。
そして。
顔を上げた。
「地下通路で行く」
白石が見る。
灯真は続けた。
「危険なのは分かってる」
「でも研究棟資料を取るなら最短を選ぶ」
静寂。
数秒後。
白石はため息を吐いた。
「責任取ってよ」
了承だった。
◇
地下通路入口。
冷たい空気。
薄暗い通路。
人の気配はない。
だが。
不気味だった。
その時。
観測者が反応する。
【生体反応】
【前方】
全員が止まる。
白石が身構える。
九条も拳を握る。
その直後。
通路の向こうから三人組が現れた。
別チーム。
制服の色が違う。
本戦参加者。
互いに止まる。
緊張。
戦うか。
逃げるか。
数秒。
誰も動かない。
その時。
相手側のリーダー格が舌打ちした。
「目的地は同じか」
白石の目が細くなる。
向こうも資料保管庫狙い。
つまり競合。
だが。
戦闘になれば消耗する。
双方理解していた。
やがて。
相手は別ルートへ消える。
静寂。
九条が息を吐いた。
「助かったな」
白石も頷く。
「まだ皆探り合い」
「本格的な戦闘はこれから」
本戦らしくなってきた。
◇
さらに奥へ進む。
その時だった。
観測者が激しく警告を鳴らした。
【異常反応】
灯真の足が止まる。
まただ。
異常粒子事件。
あの時と同じ。
警告。
通路の奥。
誰かが立っていた。
静かに。
こちらを見ている。
長い黒髪。
白い制服。
少女。
灯真の呼吸が止まる。
いた。
本当に。
今度は幻じゃない。
その瞬間。
九条が固まる。
「誰だ……」
白石も言葉を失う。
だが。
灯真が見たのは別だった。
澪。
澪の表情。
初めてだった。
顔色が変わる。
明確な動揺。
瞳が揺れる。
まるで。
あり得ないものを見たように。
白石が気付く。
「澪?」
返事はない。
少女を見つめている。
その姿を。
灯真は見逃さなかった。
知っている。
澪は。
この少女を。
その時。
少女が微笑んだ。
そして。
初めて口を開く。
「遅かったね」
静寂。
誰に向けた言葉か。
分からない。
だが。
少女の視線は。
灯真だけを見ていた。
その瞬間。
観測者が暴走するように反応した。
【警告】
【識別不能対象】
【優先度:最高】
視界がノイズで埋まる。
そして。
一つだけ表示された。
【関連情報照合中】
まだ。
答えは出ない。
だが。
確実に何かが近づいている。
少女は静かに振り返る。
その背後。
重厚な金属扉。
ゆっくり開いていく。
奥に見える文字。
【第一資料保管庫】
ミッション目的地。
そして。
少女は最後にもう一度笑った。
「今度は間に合った」
意味不明な言葉。
だが。
澪の顔色がさらに変わる。
灯真は確信した。
この少女こそ。
A-17の謎へ繋がる鍵だ。
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