第20話 『本戦進出者』
【本戦進出者発表を開始します】
巨大モニターが空を覆う。
森全域。
残る参加者たちが足を止めた。
静寂。
誰もが見上げる。
自分の名前が呼ばれるのか。
それだけを。
灯真も息を呑んだ。
九条。
白石。
三人並んで空を見る。
最初の名前が表示される。
【第一通過者】
【御門皇牙】
【タグ23枚】
森がざわめく。
当然だった。
むしろ少ない。
そんな声すら聞こえる。
怪物。
その一言で十分だった。
続いて。
【第二通過者】
【鷹城迅】
【タグ21枚】
歓声。
王者。
そして。
【第三通過者】
【白瀬蒼司】
【タグ18枚】
静かなざわめき。
三強。
誰も異論を挟まない。
別格だった。
その後。
順位が流れていく。
灯真は拳を握る。
まだ呼ばれない。
鼓動が速くなる。
その時。
【第十一通過者】
【白石結衣】
白石の肩が少し下がる。
安堵。
戦術家らしくない表情だった。
九条が笑う。
「おめでとう」
白石は照れ臭そうに視線を逸らす。
「ありがと」
短い返事。
だが。
どこか嬉しそうだった。
そして。
再び表示が切り替わる。
【第十五通過者】
【九条蓮】
九条が固まる。
数秒。
そして。
「よっしゃああああ!」
森へ叫ぶ。
全力で。
灯真は思わず笑った。
九条らしい。
だが。
その笑顔を見て。
灯真は改めて理解する。
ここまで来られたのは。
自分一人じゃない。
九条がいた。
前に立ってくれた。
何度も助けられた。
だから。
「おめでとう」
灯真はそう言った。
九条は少し驚き。
そして笑った。
「ああ」
その時だった。
モニターが再び切り替わる。
灯真は息を止める。
【第二十通過者】
静寂。
【久瀬灯真】
世界が止まった気がした。
次の瞬間。
観測者が反応する。
【本戦進出確定】
【次段階移行】
灯真は拳を握る。
通った。
兄の記録へ。
A-17へ。
研究棟へ。
確実に近づいた。
まだ遠い。
それでも。
一歩進んだ。
その時。
教師の声が響く。
【予選終了】
【本戦参加者二十四名確定】
森がざわめく。
二十四人。
百人から。
ここまで減った。
生き残った者たち。
そして。
怪物たち。
その中に。
灯真もいる。
教師は続ける。
【続いて本戦ルールを発表します】
静寂。
誰もが耳を傾ける。
【本戦形式】
数秒。
そして。
表示された文字。
【四人一組】
【チーム戦】
森がどよめく。
九条が目を見開く。
白石も驚く。
灯真も同じだった。
個人戦ではない。
チーム戦。
その時。
教師の声が続く。
【チームは運営が編成】
【十分後に発表します】
ざわめきが大きくなる。
誰と組む。
誰が敵になる。
全て未知数。
その時だった。
観測者が反応する。
【不明データ検知】
灯真の表情が変わる。
まただ。
異常粒子事件の時と同じ。
視界にノイズが走る。
一瞬だけ。
モニターが歪む。
そして。
黒髪。
白い制服。
少女。
あの少女だった。
モニターの向こう側に立っている。
灯真だけを見て。
そして。
微かに口元が動く。
『見つけた』
聞こえた気がした。
次の瞬間。
少女は消える。
幻覚のように。
だが。
観測者だけは反応していた。
【対象照合失敗】
【識別不能】
灯真の背筋が冷える。
何者なんだ。
本当に。
◇
学園上層区画。
誰も立ち入れない管理フロア。
暗い部屋。
巨大なモニター群。
その中央に一人の男が立っていた。
顔は見えない。
ただ。
灯真のデータだけを見ている。
そして。
静かに呟く。
「観測者」
低い声。
「予定より早いな」
モニターには。
【久瀬灯真】
【適合率上昇】
という文字。
男は笑った。
「面白い」
その声だけが闇に消えた。
◇
十分後。
巨大モニターが再起動する。
全本戦参加者。
二十四名が見上げる。
運命の瞬間。
教師の声が響く。
【チーム発表を開始します】
最初のチーム。
二つ目。
三つ目。
次々と表示される。
そして。
灯真の視線が止まった。
【チームA-17】
静寂。
なぜ。
A-17。
兄の記録と同じ番号。
鼓動が跳ねる。
そして。
表示が続く。
【久瀬灯真】
【九条蓮】
【白石結衣】
灯真たちは息を呑む。
最後の一人。
表示される。
【天道澪】
静寂。
白石が固まる。
九条が目を見開く。
灯真の鼓動が大きく鳴る。
澪。
なぜ彼女が。
そして。
なぜチーム名が。
A-17なのか。
観測者が警告を鳴らす。
【重要関連情報】
【A-17】
【検索優先度:最高】
灯真はモニターを見上げる。
兄の記録。
研究棟。
黒髪の少女。
そして。
A-17。
全てが。
少しずつ繋がり始めていた。
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