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第19話 『即席同盟』

「私を本戦へ連れてって」


白石結衣はそう言った。


森の中。


皇牙が去った後。


残された四人。


灯真。


九条。


白石。


そして。


圧倒的な怪物の残り香。


九条が眉をひそめる。


「ずいぶん堂々としてるな」


白石は肩をすくめた。


「合理的なだけ」


首元のタグは二枚。


あと一枚。


だが。


今の状態で一人行動は危険。


それは本人が一番理解していた。


灯真は少し考える。


その時。


観測者が反応した。


【提案評価】


【成功率上昇】


【短期同盟推奨】


灯真は頷く。


「分かった」


白石の表情が少しだけ緩む。


だが。


次の言葉は意外だった。


「勘違いしないで」


灯真たちを見る。


「本戦に入ったら敵かもしれない」


静かな声。


戦術家らしい。


馴れ合わない。


利用できる間だけ利用する。


九条が笑う。


「そういうの嫌いじゃない」


こうして。


三十分限定。


即席同盟が成立した。



森北部。


廃訓練施設。


崩れた建物。


狭い通路。


入り組んだ構造。


白石が地図を広げる。


「追跡組は五人」


「ここを通る」


灯真は地形を見る。


確かに。


数の有利を消せる。


だが。


一つ問題があった。


「もし別ルートなら?」


白石が少し笑う。


「その時は終わり」


九条が吹き出した。


「おい」


「作戦じゃねぇじゃん」


白石も笑う。


「だから即席なの」


少しだけ。


空気が軽くなった。


その時だった。


観測者が反応する。


【敵接近】


【距離28m】


来た。


全員の表情が変わる。


そして。


五人の生徒が姿を現す。


全員上位層。


弱くない。


先頭の男が笑う。


「見つけた」


「タグ持ちだ」


次の瞬間。


五人が同時に動いた。


白石の予想通り。


いや。


違った。


一人だけ。


別ルートを使っていた。


灯真の目が見開く。


「まずい!」


死角。


完全に。


白石の背後。


白石も気づく。


だが遅い。


その瞬間。


観測者が反応する。


【侵食適応Lv1】


【運動予測補正】


世界が少しだけ遅く見える。


相手の重心。


踏み込み。


肩の動き。


全部見える。


灯真は走った。


滑り込む。


白石を突き飛ばす。


直後。


敵の攻撃が空を切る。


轟音。


壁が砕ける。


白石の目が見開く。


「今の……」


灯真自身も驚いていた。


以前なら間に合わなかった。


観測者だけじゃない。


身体が反応している。


成長している。


確実に。


その時。


九条が吠えた。


「よそ見すんな!」


前方の敵へ突撃。


轟音。


先頭の男が吹き飛ぶ。


九条は止まらない。


前衛。


その役割を完璧に果たしていた。


灯真は呼吸を整える。


そして見る。


敵の動き。


癖。


連携。


観測者が解析する。


その先。


初めてだった。


ただ見るだけじゃない。


読んだ先を利用する。


敵が踏み込む。


灯真は先回りする。


攻撃前。


足元へ蹴り。


体勢が崩れる。


そこへ。


九条の拳。


直撃。


吹き飛ぶ。


連携。


自然だった。


観測者が反応する。


【戦術成功】


【連携評価上昇】


敵の表情が変わる。


想定外。


読まれている。


そう理解した。


戦況は傾く。


五対三。


だったはずが。


気づけば。


二対三。


その時。


敵の一人が叫んだ。


「撤退!」


判断は早かった。


全滅を避ける。


生き残るために。


残った二人は森へ消える。


静寂。


戦闘終了。


九条が地面へ座り込む。


「疲れた……」


白石も壁にもたれた。


そして。


灯真を見る。


数秒。


沈黙。


「助かった」


初めてだった。


白石が素直に礼を言ったのは。


灯真は少し笑う。


「お互い様だ」


その時。


観測者が反応する。


【タグ獲得】


【白石結衣】


【本戦進出条件達成】


白石の首元。


三枚目。


条件達成。


彼女はタグを見つめる。


そして。


小さく笑った。


「借りが増えたな」


だが。


すぐに表情を戻す。


「本戦では敵かもしれないけど」


戦術家らしい。


一線は残す。


灯真も頷いた。


それでいい。



その頃。


森最奥。


轟音。


衝撃波。


大地が揺れる。


全参加者が空を見上げた。


誰もが理解する。


怪物たちだ。


観測者が反応する。


【超高脅威反応】


【複数確認】


空中モニターが起動する。


予選ランキング。


第一位。


【御門皇牙】


【タグ23枚】


第二位。


【鷹城迅】


【タグ21枚】


第三位。


【白瀬蒼司】


【タグ18枚】


静寂。


誰も言葉を失う。


三強。


明らかだった。


別格。


別世界。


灯真はモニターを見上げる。


まだ遠い。


だが。


いつか超える。


そのために。


進む。


その時だった。


モニターの表示が切り替わる。


【予選終了まで残り一時間】


【本戦進出者発表を開始します】


会場全域がざわめく。


ついに。


始まる。


灯真は息を呑む。


自分の名前はあるのか。


九条は。


白石は。


そして。


次の瞬間。


巨大モニターに最初の名前が映し出された。


【第一通過者――】


灯真は拳を握る。


運命が。


動き始めていた。

読んでいただきありがとうございます。

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