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第18話 『怪物の通過点』

【保有タグ数】


【11枚】


灯真は息を呑む。


九条も絶句していた。


開始から数分。


十一枚。


それは。


十人以上を倒したという意味だった。


「化け物かよ……」


九条が呟く。


灯真は森の奥を見る。


木々が揺れている。


まだ戦いは続いている。


御門皇牙。


序列十二位。


そして。


今の自分では届かない存在。


その時だった。


観測者が反応する。


【タグ反応】


【前方112m】


【保有数:3】


灯真は顔を上げる。


三枚。


本戦進出条件。


九条も気づいた。


「行くか」


灯真は頷く。


今は皇牙じゃない。


まずは生き残る。



森の奥。


小さな広場。


そこには倒れた生徒たちがいた。


四人。


全員脱落。


そして。


中央に立つ少女。


短い茶髪。


鋭い瞳。


首元には二枚のタグ。


観測者が反応する。


【対象解析】


【白石結衣】


【推定順位34位】


【戦術特化】


白石は木の枝へ飛び乗る。


軽い。


無駄がない。


「止まりなさい」


その言葉と同時。


左右の茂みから二人の男子生徒が現れた。


挟撃。


待ち伏せ。


灯真は理解する。


罠だ。


白石はため息を吐く。


「しつこいなぁ」


男の一人が笑う。


「そのタグ置いてけ」


もう一人も構える。


二対一。


白石は不利だった。


その時。


観測者が反応する。


【勝率予測】


【白石単独】


【34%】


低い。


灯真は舌打ちする。


助ける義理はない。


本来なら。


だが。


次の瞬間。


男の一人が白石の死角へ回った。


卑怯な動き。


灯真は反射的に叫ぶ。


「後ろ!」


白石の目が見開く。


ギリギリで回避。


攻撃が空を切る。


その瞬間。


白石が灯真を見る。


驚いたように。


そして。


少しだけ笑った。


「借り一つね」


九条が前へ出る。


「二対二なら文句ないよな!」


地面を蹴る。


轟音。


正面の男と激突。


吹き飛ぶ。


だが。


九条は止まらない。


純粋な身体能力。


力なら負けていない。


灯真も動く。


観測者。


侵食適応。


相手の重心。


視線。


呼吸。


全部見える。


男が踏み込む。


灯真は半歩ずれる。


回避。


さらに。


二歩目。


予測。


三歩目。


完全に読んだ。


「なっ!?」


男の体勢が崩れる。


灯真は足を払う。


転倒。


首元のタグを奪う。


一枚。


その時。


白石の蹴りが決まる。


残った男も倒れる。


勝負あり。


静寂。


四人が息を吐く。


そして。


観測者が反応した。


【タグ獲得】


【合計3枚】


灯真は首元を見る。


条件達成。


本戦進出。


だが。


喜ぶ暇はなかった。


その時だった。


轟音。


森全体が揺れる。


木々が倒れる。


全員が振り返る。


近い。


あまりにも近い。


観測者が警告を鳴らす。


【高脅威反応接近】


【距離42m】


白石の顔色が変わる。


九条も息を呑む。


そして。


現れた。


御門皇牙。


傷一つない。


呼吸も乱れていない。


まるで散歩の途中だった。


その周囲には。


倒れた生徒たち。


無数のタグ。


皇牙は歩く。


静かに。


ゆっくりと。


だが。


圧倒的だった。


白石が一歩下がる。


九条も無意識に拳を握る。


灯真だけは動かない。


皇牙の視線。


それが自分へ向く。


数秒。


沈黙。


そして。


「残ったか」


短い言葉。


灯真の鼓動が鳴る。


覚えられている。


皇牙は地面のタグを見る。


興味を失ったように呟く。


「三枚か」


そして。


それ以上何も言わない。


歩き出す。


灯真たちの横を。


まるで。


道端の石を見るように。


誰にも手を出さない。


誰とも戦わない。


そのまま通り過ぎる。


静寂。


白石が呟く。


「今ので助かったと思う?」


誰も答えない。


皇牙は自分たちを敵と認識していない。


それが一番恐ろしかった。



その頃。


森のさらに奥。


皇牙は一人で歩いていた。


首元には大量のタグ。


17枚。


誰も近づかない。


近づけない。


皇牙は一枚の端末を取り出す。


現在の参加者一覧。


その中に。


一つの名前。


【久瀬灯真】


皇牙は数秒見つめる。


そして。


小さく笑った。


「まだ落ちていないか」


興味。


ほんの少しだけ。


だが。


次の瞬間。


皇牙の視線が別の名前で止まる。


【白瀬蒼司】


沈黙。


さらに。


その上。


【鷹城迅】


皇牙の口元が上がる。


「ようやくか」


拳を握る。


タグには興味がない。


本当の目的は別。


強者。


怪物。


自分と同じ領域にいる者。


皇牙は進路を変える。


森の最奥へ。


そこには。


白瀬と鷹城がいる。


予選はまだ終わらない。


だが。


怪物たちの戦いが始まろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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