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第16話 『序列戦開幕』

朝。


天凰学園第一競技場。


異常粒子事件から一日。


学園は何事もなかったかのように動いていた。


だが。


誰も忘れてはいない。


あの日。


試験が中断されたことを。


教師たちが動揺していたことを。


そして。


黒い粒子の存在を。


灯真は競技場を見上げる。


巨大なスタジアム。


観客席は満員だった。


全学年。


教師。


卒業生。


企業関係者。


数万人の視線。


それが今日の参加者百人へ向けられている。


「相変わらず頭おかしい規模だな」


九条が隣で呟く。


灯真は苦笑した。


否定できない。


学校の大会とは思えなかった。


その時だった。


大型モニターが起動する。


歓声。


ざわめき。


会場が静まり返る。


【一次選抜通過者】


百名の名前が表示される。


灯真は自分の名前を探す。


【久瀬灯真】


あった。


通過。


隣では。


【九条蓮】


こちらも表示されている。


九条が笑った。


「生き残ったな」


「ああ」


短い返事。


だが。


少し嬉しかった。


その時。


表示が切り替わる。


会場の空気が変わる。


【現序列保持者】


怪物たちの名前。


【序列一位 鷹城迅】


大歓声。


王者。


誰もが認める学園最強候補。


【序列七位 白瀬蒼司】


ざわめき。


測定不能。


謎の怪物。


そして。


【序列十二位 御門皇牙】


歓声が一段大きくなる。


灯真の表情が引き締まる。


第6話。


自分を圧倒した男。


今でも。


あの差を忘れていない。


その時だった。


選手席の一角。


皇牙が立ち上がる。


ざわめき。


周囲の生徒が距離を取る。


皇牙は教師を見る。


「質問だ」


会場が静まる。


教師が眉をひそめた。


「何だ」


皇牙は淡々と言う。


「タグは三枚でいいのか」


教師は頷く。


「そうだ」


数秒。


沈黙。


そして。


皇牙は座る。


「なら十分だ」


静寂。


次の瞬間。


会場がどよめく。


誰もが理解した。


あの男は。


百人全員を敵に回すつもりだ。


灯真は息を吐く。


怪物。


やはりそうだった。


その時だった。


放送が響く。


【これより序列戦予選を開始します】


巨大スクリーンが切り替わる。


学園全域マップ。


森。


訓練場。


廃校舎。


人工河川。


広大なフィールド。


【予選形式】


【タグ争奪戦】


教師が説明を始める。


「参加者へ識別タグを一枚ずつ配布する」


「三枚集めた者から本戦進出」


ざわめき。


「同盟自由」


「裏切り自由」


さらにざわめきが大きくなる。


心理戦。


交渉。


戦闘。


全てが必要になる。


観測者が反応する。


【推奨戦術】


【単独行動:危険】


【同盟形成推奨】


灯真は目を細めた。


珍しい。


観測者が戦術を示した。


つまり。


本当に危険なのだ。


その時だった。


「久瀬」


九条が真顔になる。


珍しく。


冗談ではない顔。


「一つ提案がある」


灯真は見る。


九条は言った。


「俺と組まないか」


灯真は少し驚く。


予想していなかった。


九条は続ける。


「正直」


「一人じゃ無理だ」


苦笑。


だが。


その目は本気だった。


「お前は観察が得意だろ」


「俺は前に出る」


「悪くないと思うんだが」


灯真は黙る。


観測者。


九条の身体能力。


確かに相性は悪くない。


その時だった。


【予選開始まで残り三十秒】


放送が響く。


会場の空気が張り詰める。


灯真は九条を見る。


そして。


「ああ」


頷く。


「組もう」


九条が笑った。


「決まりだな」


第二章最初の同盟。


それが成立した瞬間だった。


その時。


遠くから視線を感じる。


鷹城迅。


序列一位。


王者。


彼はこちらを見ていた。


数秒。


視線が交差する。


そして。


鷹城は小さく笑う。


「落ちるなよ」


たった一言。


だが。


挑発にも。


期待にも聞こえた。


灯真は答える。


「そっちこそ」


周囲が静まる。


九条が固まる。


一年生が。


序列一位へ言い返した。


だが。


鷹城は怒らない。


むしろ。


少しだけ楽しそうだった。


その時だった。


巨大ゲートが開く。


轟音。


参加者百人が立ち上がる。


【予選開始】


次の瞬間。


全員が一斉に走り出した。


森へ。


校舎へ。


タグを求めて。


灯真と九条も駆け出す。


だが。


開始からわずか十秒。


森へ入った直後だった。


観測者が警告を鳴らす。


【危険】


【右後方】


灯真の目が見開く。


「九条!」


振り向く。


次の瞬間。


木々の間から一人の生徒が飛び出した。


開始直後の奇襲。


タグを狙っている。


しかも。


相手の首には既に二枚のタグ。


灯真の鼓動が跳ねる。


早い。


もう奪ったのか。


その生徒が笑う。


「悪いな」


「お前らのも貰う」


序列戦は。


想像以上に甘くなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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