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第10話 『挑戦権』

第一競技場へ向かう人の流れは途切れなかった。


一年生。


二年生。


三年生。


全ての生徒が同じ場所へ向かっている。


天凰学園第一競技場。


五万人を収容する巨大施設。


学園の設備とは思えない。


まるでプロリーグの本拠地だった。


灯真はその流れの中を歩いていた。


隣には九条蓮。


少し前には澪。


そして。


頭の中には鷹城迅がいる。


『上がって来い』


あの言葉が離れない。


悔しい。


だが。


否定できない。


今の自分では届かない。


だからこそ。


届きたい。


その時だった。


巨大スクリーンが点灯する。


競技場全体が静まり返る。


表示された数字。


【予備登録者数 1,842名】


灯真は思わず息を呑む。


多い。


想像以上だった。


九条が苦笑する。


「毎年こんなもんだ」


「でも最後まで残るのは一握り」


その時。


放送が響く。


【序列戦予備登録を開始します】


空気が変わる。


誰もが耳を傾ける。


【登録者は挑戦権選抜試験へ参加してください】


ざわめき。


灯真は眉をひそめる。


挑戦権。


九条が説明する。


「序列戦は誰でも出られるわけじゃない」


「まず挑戦権を取る」


なるほど。


だから挑戦権。


放送は続く。


【一次選抜通過者のみ序列戦参加可能】


【通過人数 百名】


静寂。


1842人。


通過100人。


通過率約5%。


厳しすぎる。


その時。


後方がざわつく。


歓声。


緊張。


畏怖。


生徒たちが自然と道を開ける。


怪物が来る。


誰もが理解していた。


御門皇牙。


序列十二。


黒髪。


鋭い眼光。


圧倒的な存在感。


皇牙は周囲を見ない。


ただ歩く。


真っ直ぐ。


当然のように。


灯真の近くを通り過ぎる。


視線が一瞬だけ向く。


数秒。


沈黙。


だが。


それだけだった。


皇牙は何も言わない。


まだ。


灯真を評価する段階ではない。


そう言われた気がした。


その時だった。


さらに周囲がざわつく。


今度は別の方向。


銀髪。


鷹城迅。


序列一位。


評価値1348。


周囲の生徒が息を呑む。


誰も近づかない。


近づけない。


圧力が違う。


王者。


その言葉が似合った。


灯真は無意識に拳を握る。


兄の顔が浮かぶ。


病室。


空白の瞳。


鷹城は気づいている。


だが。


こちらを見ない。


今の灯真は。


まだ視界に入る存在ではない。


悔しい。


だが。


それが現実だった。


競技場中央。


一人の教師が現れる。


白髪。


鋭い目。


ただ立っているだけで空気が変わる。


「静かにしろ」


たった一言。


会場が沈黙する。


教師は続ける。


「挑戦権試験のルールを説明する」


巨大スクリーンが切り替わる。


【第一試験】


【才能保持戦】


ざわめき。


灯真も眉をひそめる。


教師は淡々と言った。


「試験フィールド内には継承粒子を散布する」


会場の空気が変わる。


「継承粒子は才能を侵食する」


「保持能力の低い者から脱落する」


灯真は理解する。


つまり。


才能そのものを削る試験。


教師は続ける。


「十分間耐えろ」


「それだけだ」


それだけ。


だが。


周囲の生徒たちの顔色が変わっていた。


九条ですら笑顔を消している。


「最悪だな」


「そんなにか?」


九条は苦笑する。


「去年は九人が才能喪失した」


灯真の心臓が跳ねる。


兄の顔。


病室。


才能喪失。


九条は続ける。


「もちろん全損じゃない」


「でも削られる」


「だから皆嫌がる」


灯真は視線を落とす。


観測者。


筋反応補助。


今の自分は耐えられるのか。


その時だった。


視界の奥。


観測者が反応する。


【継承粒子検知】


【危険度:中】


【推奨行動】


【適応】


灯真は目を細める。


生存ではない。


適応。


つまり。


攻略法がある。


灯真の胸に僅かな自信が生まれる。


その時。


放送が響く。


【第一試験開始まで残り一分】


会場が静まり返る。


誰も喋らない。


緊張だけが広がる。


五十秒。


四十秒。


三十秒。


灯真は深呼吸する。


逃げない。


兄のために。


自分のために。


ここを越える。


二十秒。


十秒。


教師が手を上げる。


九。


八。


七。


六。


五。


四。


三。


二。


一。


【第一試験開始】


瞬間。


競技場全体に白い霧が噴出した。


継承粒子。


視界が染まる。


次の瞬間。


「あああああっ!?」


絶叫。


一人。


また一人。


さらに数十人。


膝から崩れ落ちる。


競技場が騒然となる。


才能の光が空中へ流れ出している。


まるで。


魂を削られているようだった。


灯真は目を見開く。


(なんだ……これ……!)


そして。


自分の身体からも。


微かに才能の光が漏れ始めていた。


【才能保持戦 開始】

読んでいただきありがとうございます。

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