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俺に知っておいて欲しい事
“なんかあるか?”
思わず見上げた
彼の真っ直ぐな視線から
目が離せなくて
しばらく
視線が絡まったままだった
“話したい”
素直にそう思った
「彼は知っておくべきじゃないのかな」
先生の声も過ぎる
何より
目の前にいる人が
「聞きたい」
そう言っていた
彼は、やっぱり見たのかもしれない
あの時、スマホの画面は
ついていたのかもしれない
気づいているのかもしれない
わたしが打ち明けるのを
望んでいるのかも、しれない…
“あるよ”
もし
わたしに任せてくれてるんだとしたら
“でももうちょっと考えたい”
選ばせてくれるのなら
“その時は”
あなたの背負ってる大事なもの
それを優先して欲しい
“ちゃんと話すから”
「“それでもいい?”」
考えるような
少しの沈黙の後
「…ええよ」
「分かった」
眉がちょっと下がった笑顔
手を伸ばして
わたしの頭を抱えた
その腕には
苦しいくらい力が入っていた
「明日、ちょっと出かけへん?」
久しぶりのお誘いに
テンションが上がる
“どこ行くの?”
聞けば、なんだか迷ってるような
ちょっと挙動不審な動き
「んー…買い物?」
?マークが頭にいっぱい浮かぶ
“昴汰さん、なんか時々変だよ?”
「服、買いたいから」
「付き合うて」
自分から言い出したのに
ちょっとだけ気まずそうな
それに何故か恥ずかしそうにも
見えて
“わたし、一緒に行っていいの?”
「ええねん」
それには即答
「詩が行かんと意味ないし」
“…うん…?”
謎のまま承諾した
翌日。
着いたのはアウトレットモール
「うた」
いつものように呼ばれて
伸ばされる手
平日の昼間
人もまばらなこの場所で
“大丈夫”
手を後ろに隠して
首を横に振れば
ちょっと不機嫌そうに手を取られる
(どうしたんだろ…)
昨日から
…うんん、最近の彼はなんだか
ちょっとおかしい
大人しく、ついていけば
迷う事なく
わたし好みの店に入って行く
「ちょっと見よ」
戸惑いを隠せないわたしに
次々と服を当てては
「これええやん」
ご機嫌な様子に
益々なにをしたいのかわからない
“昴汰さん”
服の裾を引っ張って
“わたしの服買いにきたの?”
「あー…」
「試合、観にくるんやろ」
「…最近新しいの買ってないやん」
「…好みと違う?」
あぁ…
やっと、わかった…。
俺の顔と服を
交互に見ていた彼女の
視線が変わる
ジト…っと心の中まで
見透かすようなその視線に
顔が引き攣ってくる
“こういうのが好きなの?”
見せられるスマホの画面
“昴汰さんの服も選んであげるよ”
“地味なやつ”
“1人でお出かけの時はそれ着てね”
「…ええよ」
「せやったら、詩も、やで」
バレてしまったなら仕方がない
恥ずかしげもなく
言い返す俺に
呆れたように
大きくため息をつく
“どうしたの?”
“らしくないよ”
…全然、なにもわかってない
自分の価値を
他人からどう見られてるかも
めちゃくちゃな事
してるのも
言ってるのも
もちろんわかってるけど
コイツは
視線が集まるのは
俺のせいだと思ってる
1人でいる時の
周りの視線には気づきもしない
彼女が自分を取り戻し始めてる今
対策は急務だと言うのに
…どうせ
なにを言っても伝わらない
選んだ、無難な服達を
そのまま購入する事にした
“好きなの選びたい”
嫌がらせのつもりか
それとも抵抗か
珍しくそう主張する彼女
「ええよ、でも着るのは」
“俺といる時限定やで”
そう言えば
真っ赤になって黙り込んだ…。
なんだかんだと揉めながら
帰途に着く
助手席で力尽きてる彼女に
目をやって
意固地になって
情けない事をしたと
今頃、恥ずかしくなる
(…しょうもない)
年齢も、経験値も
彼女の前では
全く無意味で。
(今時中学生でもこんな事せんやろ…)
そう自嘲する
仕方ない
家に着いたら
どうやって挽回しようかと
そっちに
シフトを切り替える事にしよう




