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そのまま。  作者: こまこま
7章
48/50

7-4

「後悔、した事ないの?」


届いたのはたった一言。


「何に後悔するん?」


「…わたしを、探した事」


これが、彼女の“答え”だろうか

それとも“宿題”を

出されたのは自分の方だったのか…





朝。 

ダイニングテーブルで

力尽きている彼女を発見。


こういうところやぞ、と言いたくなる


元気な俺に気を遣って

倒れる寸前の自分を後回しにする



…あれは、結婚してすぐの頃

発熱してるのに隠す彼女を責めた時


「昴汰さんの邪魔したくない……」

「ちゃんとしたかった……」

「結婚したからダメになったって、思われたくない……っ」


あの時の悲痛な声を覚えてる


“ちゃんと”していたい

変わらないところも

詩らしくていいけど



「うた」

“立てるか?”

テーブルに突っ伏したままの

その背中に手を添えて

顔を覗き込む


もう、返事もない


抱き上げて、寝室へ

ベッドにそっと降ろす



留守にした3日間

いつもの遠征とは違う

俺が彼女に課した“宿題”は


想像以上に

負荷をかけてしまったのだと

今更ながら思い知った





その日の夕方

不意に届いたメール。

それはたった一言


「後悔、した事ないの?」

謎かけのような質問に

答えも慎重になる


「何に後悔するん?」


「…わたしを、探した事」


それは。

メールだけでは読み取れない

そして

読み取るには怖すぎて。


「詩は、後悔してるん?」


既読が付いてから

返事が来るまでが

やけに長く感じられた。


「…わかんない」


どういう意味だ、と

今すぐ家に帰って

問いただしたくてたまらない


「でも、昴汰さんの気持ち」

“知りたいの”


あいつは

なにを悩んで

どこで迷ってるのか


「わかった」

“ちゃんと話そう”






朝、テーブルで突っ伏していた姿を

思い出しながら

玄関のドアを開ける


話をすべきか

無理矢理にでも

今日は休ませるべきか

答えが出ないままの帰り道



ソファの上

クッションを抱えて

眠っている姿に

心は決まった





頭に額に

優しく触れる温もりに

意識が浮上していく


目を開けると

想像とは違う

スマホに向けられた視線

手だけがなぞるように

動いていて


頭の下に

彼の足があるのに気づく


(いつの間に…)

ソファにいたのは確かだけど

膝枕されるほど

動かされたのに気付かずにいた


気づかれないように

そのまま彼の顔を見上げる


画面を追う長い睫毛

すっと通った鼻筋

シャープな顎のライン

でも

ほんの少し開いた唇に

気の緩みが出ていて嬉しくなる


「…あんま見んな」


不意に暗くなる視界


せっかく見てたのに、、と

退けようと手を掛けるのに

ビクともしない


代わりにクスクスと笑い声


“もうっ”

ペシっと叩くと

ようやく力が抜けた


起きあがろうとすると

ダメだ、とばかりに押さえつけられて。

「もうちょっとこのまま寝とき」

降ってくる声


どうせ抵抗しても叶わない

諦めて顔を見つめる

精一杯の抵抗を込めて


「やめぇ、その顔」

“お前のそう言う顔に弱いって

知ってるやろ”

苦笑いしながら叱られて


ほんの少し、トーンが変わる


「明日、ゆっくりしよな」

“一緒に”


優しい顔

まるで

大事なもの見てるみたいな

眼差し

頭に置かれた手は

親指だけがそっと動く


“うん”


頷けば、

満足そうな顔が見下ろしてくる


その顔から

視線が外せなかった


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