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【第二期完結/第三期8/25開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第三章 「嫉妬と噂と、恋人の証明」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第七話 「取れるものなら、取ってみろ」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 龍雨祭に向けた一般開放の式典の日がやってきた。

後宮内はいつも以上に賑やかで、活気に満ちている。

普段は贅沢を控えている身分の低い下女や宮女たちにも、

夕方からは特別に酒やご馳走が振る舞われる。

人々はみな浮き足立ち、式典を楽しみに忙しく働く。


広場での騒動は――

あっという間に後宮中へ広まっていた。

行き交う女性たちは噂話に花を咲かせる。


星鈴が下女の嫉妬に襲われたらしい。


龍霊雨器にも囚われたそうよ。


恐ろしいわ。


可哀想に。


いい気味だわ。


もう人前には出られないんじゃない?


後宮を追い出されるらしいわよ。


それなら好都合ね。


――どれが本当で、どれが嘘なのか。

話は好き勝手に姿を変え、広がり続けていた。



「やっぱり女の子って怖いなぁ……」

離れの隣にある倉庫で、流星は虎福ちゃんを抱き上げた。

すうーっと顔を埋める。


“ご主人〜!”


“今日はとっても綺麗な、お衣装です〜!”


虎福ちゃんが嬉しそうに身体を揺らした。


「ありがとう、虎福ちゃん」


今日の衣装は式典用に用意された特別なものだった。

瑠璃色の衣。

そこへ金糸で龍の刺繍が施されている。


“玄曜様も同じ衣装なんですか?”


「そうみたい!」


玄曜は式典の管理や指揮で忙しく、朝から会えていない。

姿を見るのは舞台の上になるだろう。


玄曜の式典衣姿。絶対に格好いい。

そう思うだけで少し顔が熱くなった。


“今日はどんな髪型にしましょうか!”


“紅は今流行りの色が良いかしら!”


“髪飾りも目立つものを選ばなくては!”


流星の周囲では、

鏡台の龍霊雨器・照妍しょうげん

化粧道具の龍霊雨器・さい

櫛の龍霊雨器・和縁わえん

倉庫の化粧道具三人組が大騒ぎしていた。


「あのさ……」


星鈴は意を決して口を開く。


「今日は髪型も変えなくていいし、化粧もしなくて大丈夫」


三体がぴたりと止まる。


「星鈴だってわかるようにしたいんだ」


静かな声だった。


「玄曜の隣に立ちたい」


「これからも――。

これから先も、玄曜の隣に立ち続けるために」


「だから今日は、このままでいい」


三体は黙って流星を見つめた。

しばらく沈黙が続く。

そして――


“それなら余計に!”


“髪も肌も念入りに!”


“お手入れしなくてはダメです!!”


「えっ!?」


流星の肩が跳ねた。


“自然な化粧ほど難しいのですよ!”


“肌は瑞々しく!圧倒的な透明感で!”


“髪は絹より艶やかに!”


「いや、そのままでも――」


“何言ってますの!!?”


“見せつけるんでしょう!?”


“真っ直ぐ前を向いて!!”


「は、はい!」


怖い。気迫が怖い。

流星は大人しくされるがままになった。


そして。

念入りに髪を整えられ。肌を磨かれ。


気がつけば――

自分でも驚くほどの。

自然で清楚な美少女がそこにいた。


“ご主人〜!”


“うるうるのツヤツヤです〜!”


虎福ちゃんが流星の周りを飛び回る。


「ふふっ。ありがとう」


流星は虎福ちゃんをそっと袖へしまった。

そろそろ広場へ向かわなくてはいけない。

扉へ向かう、その時だった。


“星鈴”


倉庫中の龍霊雨器たちが流星を見ていた。


“私達の玄曜をお願いね”


流星は少しだけ目を見開く。

そして。

真っ直ぐ頷いた。


「わかった!」



 日が沈み、辺りは夜の帳に包まれていた。

空には雲ひとつない。

満月と満天の星だけが、静かに地上を照らしている。


式典最後の演奏。

黒檀金銀花鳥風月琴こくたんきんぎんかちょうふうげつこと――天鳳瑞奏てんほうずいそう

黒檀雲文螺鈿細工二胡こくたんうんもんらでんさいくにこ――龍吟天響りゅうぎんてんきょう


龍霊雨器の中でも別格と呼ばれる二体の演奏とあって、

広場は人で埋め尽くされていた。


「ぎょえー!! 人すごい!」


流星は思わず声を上げる。

街の祭りの日だって、こんな人数は見たことがない。


“ふふふ……最高の夜ねぇ”

天鳳瑞奏が艶やかに囁いた。


広場の拝殿には舞台が設けられ、その後方には、

桃雲双境両面図とううんそうきょうりょうめんず――双境そうきょうが堂々と飾られていた。


そして。

舞台へ、一人の青年が姿を現す。

漆黒の文官衣ではない、艶やかな式典衣。

龍吟天響を手にした玄曜だった。


月明かりと松明の光を受け、瑠璃色の衣が夜空のように映える。

金糸で縫われた龍が、光を反射して神々しく輝き、

まるで優雅に舞っているようだった。

その圧倒的な存在感。

広場の空気を、一瞬で支配した。


広場中から感嘆の声が上がった。


その空気の中。

天鳳瑞奏と共に、顔を袖で隠した星鈴が舞台へ上がる。

玄曜の隣へ並び。静かに顔を上げた。


広場中がどよめく。


――なぜ星鈴が。


あちこちから囁き声が聞こえる。


けれど。

もう星鈴には届かなかった。

星鈴の中には。

流星の中には。

玄曜しかいないのだから。


静かに天鳳瑞奏の前へ座る。


“ねえ、星鈴ちゃん”


「ん?」


“玄曜様が選ばれたのが貴方で良かったわ”


その言葉と共に。

星鈴の身体が淡く輝き、瞳が黄金色へ染まった。

天鳳瑞奏に導かれるように指先が弦へ触れる。

その瞬間、美しい旋律が広場へ流れ出した。


龍の神より与えられた、天上の音色。

それに続くように。

玄曜が龍吟天響を奏でる。


時が止まったような静寂の中、

天鳳瑞奏と龍吟天響の音だけが夜空へ広がっていく。


誰も声を出さない。誰も動かない。

観衆は息をすることすら忘れ、その音色に聴き入っていた。


――やがて。


演奏が終わると、静寂を破るように、大歓声が湧き上がった。


星鈴は玄曜を見る。

玄曜も星鈴を見ていた。


その天青色の瞳には、誇らしさが滲んでいた。

玄曜が小さく笑う。


「よくやった」


そう言って手を差し出す。


「うん」


星鈴も笑った。そして、その手を取る。

見つめ合う二人へ、さらに大きな歓声が降り注いだ。


星鈴は客席を見渡す。


顔見知りの文官。


武官。


下女。


宮女。


みんなが見ている。


――もう隠したりしない。

常に前を向いて。堂々と。

どんな相手が来ても、オレは負けない。


だから――


取れるものなら、取ってみろ。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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