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【第二期完結/第三期8/25開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第三章 「嫉妬と噂と、恋人の証明」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第四話 「噂と嫉妬の糸」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 広場に面した拝殿へ、布で覆われた巨大な包みが運び込まれてきた。


ゆっくりと、全体を覆っていた布が外される。

現れたのは――

堂々たる紫檀したんの飾り枠に支えられた巨大な両面刺繍だった。


表には朝霧に包まれた雲海と、その上にそびえ立つ雄大な渓谷。

裏には、夕陽に照らされた雲海と、その上にそびえ立つ雄大な渓谷。


息を飲むほど美しく、神秘的な空気を纏っていた。


「久しぶりだな」


玄曜が静かに声をかける。


桃雲双境両面図とううんそうきょうりょうめんず――双境そうきょう


その瞬間。

風もないはずの広場の空気が揺らいだ。


“――これはこれは、玄曜様”


穏やかな声が響く。


“もう龍雨祭の時期ですか。

やっと、うたた寝を始めたというのに……”


そこで双境の声が止まった。


“おや?”


わずかに震える。


“ああ……これはいけない”


「どうした?」


玄曜が眉をひそめる。


“これは本当に――”


その瞬間。


ドォン!!


地面を揺らす轟音が響いた。


「!?」


突然の地響きに広場が騒然となる。


「双境!!」


玄曜が鋭く声を放つ。


同時に、桃雲双境両面図の頭上へ無数の星が広がった。


「えーいっ!!」


聞き慣れた声。


長い杖を振りかぶった阿燐ありんが空から現れる。

阿燐は躊躇なく杖を振り下ろした。


だが――


ビシッ!!


桃雲双境両面図から伸びた糸が、しなやかに杖を弾き返す。


「もうっ! 本当に……!!」


阿燐は痺れた手を押さえた。


「厄介な時代だ……!!」


頬をぷうっと膨らませながら再び杖を構える。


その間にも、桃雲双境両面図からは無数の糸が溢れ出していた。

幾重にも絡み合い、まるで生き物のように蠢いている。


「双境ー! 落ち着いてー!」


阿燐が叫ぶ。


だが双境は悲鳴のような声を上げた。


“阿燐様! 駄目です!私では止められません……!”


“これは酷い……!強すぎる……”


“ここまで強い感情は受けたことがありません……!”


玄曜の表情が険しくなる。


“玄曜様……!

早く嫉妬の矛先をお止めにならないと!”


両面刺繍がぐらりと波打った。


「矛先だと?」


玄曜が身構える。


その時。

双境の声色が変わった。


“ああ……!!見つけた!!”


“全部!! 全部!!あの子さえ、いなければ!!”


叫び声と共に空気が震える。

圧力が一気に膨れ上がった。

玄曜も阿燐も思わず動きを止める。


そして――


桃雲双境両面図から放たれた無数の糸が、

ある一点を目掛けて猛スピードで伸びていった。



「玄曜様は……そんな事しません」


星鈴は静かに言った。


「はあ?」


下女が眉を吊り上げる。


「女の子にかんざしを贈ることも、

執務室に呼ぶことも、しません」


星鈴はまっすぐ相手を見据えた。


「あなたが言っていることは、全部嘘です」


「……っ!」


下女の顔が歪む。


「何なのよ!」


声が一段高くなる。


「わかった!あなた、自分が特別じゃないから

嫉妬してるんでしょ!?」


「嫉妬なんてしていません」


星鈴はきっぱりと言い切った。


「だって、玄曜様がそんな事をしていないって知ってますから」


「……!」


その言葉が決定打だった。


下女の目に怒りが宿る。


「なんなのよ……!」


拳を握りしめる。


「なんで私が……!」


震える声。


そして――


「あなたみたいなのが……!

あなたみたいなのがいなければ!!」


憎悪を込めて叫ぶ。


「あなたさえいなければ!!!」


ドォン!!

地面が揺れた。


「!?」


突然の衝撃に星鈴の身体も大きくよろめく。


「何!?」


嫌な予感。

この感覚は――


「龍霊雨器!?」


気配のする方へ視線を向ける。

その先には、巨大な両面刺繍。


そして。


「玄曜……!」


「阿燐!」


空気が激しく震える。

見えない圧力が身体へとのしかかった。


「ぐっ……!」


息が詰まる。

その時。


「あなたがいなければ!」


下女が虚ろな目で叫んだ。


「玄曜様は私のものだったのに!!!」


その瞬間――

無数の糸が放たれ、糸は星鈴の首と両腕、

両足へ一瞬で絡みついた。


「え――」


身体が浮く。次の瞬間には。

星鈴の身体は宙へ引き上げられていた。


「「――――流星!!!」」


玄曜と阿燐の声が重なる。


「玄曜……!阿燐!」


二人が見えた。なのに身体が動かない。

糸は星鈴をいざなうように両面刺繍へと連れていく。


朝霧と夕陽の雲海の境界が波打つ。

そして――

星鈴の姿は刺繍の中へ飲み込まれていった。





【龍霊雨器 補足説明】


今回本編で登場した、「桃雲双境両面図――双境」


同じ一枚の布地に裏表で絵柄の違う刺繍が施されたものです。

作中で登場した双境は、中国四大刺繍のひとつである「蘇繍」の「双面三異繍」という刺繍。


双面三異繍は、中国の蘇州刺繍(蘇繍)の超絶技巧の一つで、

「両面で異なる色(異色)、異なる図柄・構図(異様/異形)

異なる刺し方・針法(異針法)の三つが違う」刺繍です。


二人の職人が縫い上げて作る驚異の工芸品。

龍霊雨器の中でも別格の存在です。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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