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【第二期完結/第三期8/25開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第三章 「嫉妬と噂と、恋人の証明」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第三話 「後宮の女の子、怖い」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「星鈴!!」

用事を済ませ、のんびり歩いていたところを下女仲間に呼び止められた。


「あ、小桃しょうとう! おはよー!」


「ねえ! 今さ、星鈴の噂で持ちきりなんだけど!」

小桃は、身体を寄せてヒソヒソと話した。

 

「ん? 噂??」


「ちょっと!こっち来て!」

手を引かれ、休憩所へ連れて行かれると、

仲のいい下女仲間たちが待ち構えていた。


みんな目をキラキラさせながら星鈴を椅子に座らせる。


目の前には茶と菓子。


「で? で? 星鈴の好きな人って玄曜様なの!?」


「お茶会で見せつけるように熱く抱き合ったって聞いたんだけど!」


「ぶふっ!」


星鈴は、飲んでいた茶を盛大に吹き出した。


なにそれ!?


「いや、お茶会には呼ばれたけど……」

熱く抱き合ったって……何?


その瞬間。


「きゃああああ〜!」


下女たちは声を抑えながら一斉に盛り上がった。


「付き合ってないの!?」


「……付き合って……ない」


玄曜は公言してもいいと言っていたけれど。


下女仲間たちは一瞬、しん……と静まり返った。


そして。


「「「なあーーんだあー!!」」」


盛大なため息と共に一斉に話し始める。


「付き合ってないのぉ〜?」


「星鈴なら納得だったのに〜!」


「じゃあ噂は本当なの?」


「噂って何?」

オレもつられて小声になる。


すると下女たちは卓を囲むように身を寄せ、ひそひそと囁いた。


「星鈴が、後宮中の武官に色目を使ってるとか」


ええー!?


「手当たり次第、男なら誰でも相手になるとか」


ひょえー!?


「玄曜様と慎言様が、星鈴を巡って激しく火花を散らしてるらしいじゃない!?」


はあーっ!?


「いやいやいや! 絶対ないから!」


特に最後!あり得ないから!


「それ誰が言ってるの!?」星鈴は呆れながら言った。


「誰って……みんな?」


み、みんな……怖すぎる。

男の世界にも噂話はある。

でも女の子たちの噂話は、なんだか種類が違う。


後宮は広い。

しかも働いている人間のほとんどが女性だ。

噂がどこまで広がっているのか考えただけで冷や汗が出た。


「じゃあ玄曜様の噂は?」


「玄曜様の?」


「気に入った女の子にかんざしを渡してるって!

夜に呼ばれた子もいるって聞いたけど」


「ん!?なにそれ!?」


「夜に執務室へ呼ばれたら、玄曜様の夜の

お相手ができるんだって」


「はぁあ??」思わず声が裏返った。


「いいな〜。私も呼ばれたい!」


「一度でいいから夜のお相手してみたいわ〜」


下女たちは頬を染めながらきゃあきゃあと囁き合う。


よ……夜の相手……??


「それって最近の話?」焦りで声が少し掠れた。


「ここ数週間かな?」


「数週間……?」オレは眉をひそめた。


(いや、それ絶対嘘だろ)


執務室どころか、仕事が終われば真っ先に離れへ帰ってくるし……。

毎晩オレの隣で寝ているんだから。

そう、危うく口に出しかけて慌てて飲み込む。


「げ、玄曜様は仕事が終わったら真っ先に帰られてるから……

嘘なんじゃないかな〜」


「そうなの?」


「なんだぁ〜」


下女仲間たちは少し残念そうだったが、意外とあっさり納得した。


「でもさぁ」


「あんなに距離近いのに、本当に付き合ってないの?」


「そうそう!」


「みんな星鈴が、玄曜様に気があるフリして

弄んでるって噂してるのよ」


「いや……弄ぶとか……あり得ないから」

呆れながら答える。


すると小桃が少しだけ表情を真面目にした。


「でも――気をつけた方がいいわよ」


小声で囁く。


「噂だって、大勢が信じたら本当になるんだから」


その一言に。

 

オレはごくり、と茶を飲み込んだ。



下女仲間たちと別れた後。


誰もいないことを確認して、星鈴はそっと袖から

虎福ちゃんを取り出した。


すうーっ。

ゆっくりと吸い込む。


“ひゃああ〜! ご主人〜!”


虎福ちゃんはくすぐったそうに身体を揺らした。


「女の子……怖いよぉ……」


半泣きで顔を埋める。


自分の噂。玄曜の噂。


「はあ……」


オレは知っている。

玄曜はそんなことをしない。

だけど――みんなは知らない。


「もし誰かが……みんなが、本当に信じてたら

どうすればいいんだろう……」


確かに。

玄曜と付き合い始めてから、浮かれていたのは事実だ。

あんなに格好良くて、すごい人が初めてできた恋人。

距離が近くなるのも自然なことだった。


もしかしたら。

無意識に人前でベタベタしていたのかもしれない。

少し気をつけた方がいいのかな。

どこで誰が見ているかわからないし。


今日は午後から式典用の龍霊雨器が広場へ運ばれてくる。

玄曜とも一緒の作業だ。

あまり近づきすぎないようにしよう。

そう思いながら、落ち着くためにもう一度虎福ちゃんを吸った。



広場は式典の準備で大忙しだった。

柱や灯籠には美しい花や金細工が飾られ、

広場一面にはシワ一つない紅い布が敷かれている。


後宮内で最も広い大広場。

二日後にはここで奉納の舞や演奏が披露される。


この式典は身分に関係なく、後宮内で暮らす人々が見られる

人気の催しらしい。


今日は式典の時だけ展示される格式高い龍霊雨器が運び込まれる日。

そのせいか、広場にはどこか張り詰めた空気が漂っている。


「玄曜、まだかな」


見渡してみるが、まだ姿はない。


「早く来すぎたかな」


退屈になって広場の飾り付けを眺めながら歩く。


――だが。


見られている。明らかに。広場中から。


女の子たちに。


脳裏に、小桃の言葉がよぎった。


『噂だって、大勢が信じたら本当になるんだから』


「ねえ」


突然、声をかけられた。

振り向くと知らない下女が立っていた。


「あなた、玄曜様の何なの?」


「え?」


「玄曜様を勝手に自分のものにしないでよ」


棘のある声。

敵意を隠そうともしない。


「特別なのは、あなたじゃないってこと」


そう言って、下女は髪に挿した簪へ触れた。

赤い宝玉の付いた小さな簪。


「これ!玄曜様にいただいたのよ」


わざとらしく微笑む。


――嘘だ。


「それに昨日の夜は私、執務室に呼ばれたの。

遅くまで帰してくださらなくて」

はあ……と吐息を漏らしながら肩を撫でる。


――そんな訳ない。


昨日の夜。

玄曜はずっと離れにいた。


でも。


この下女は知らない。

オレと玄曜が付き合っていることも。

一緒に暮らしていることも。


その瞬間。ぞっとした。


目の前がぐらりと揺れる。

平然と嘘をつくこと。

傷つけようとすること。

陥れようとしていること。

オレが玄曜を疑うように仕向けていること。


嘘だとわかっている。わかっているのに。

胸の奥を抉られるような気持ち悪さが込み上げた。


気づけば。

周囲から無数の視線が向けられていた。


敵意。


悪意。


それらすべてが星鈴へ向けられている。

それは、まるで――

嫉妬という糸が、全身に絡みついてくるようだった。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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