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【第二期完結/第三期8/25開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第三章 「嫉妬と噂と、恋人の証明」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

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第二話 「実家と、祭りの夜と、お揃いの物」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「まあ〜! 玄曜さん!」


家の戸を開けた瞬間、母さんの声が響いた。


「お父さん! 玄曜さんが来たわよ〜!」


「玄曜お兄様!! いらっしゃい!」


「お久しぶりです」


玄曜が爽やかに微笑む。

すると母さんと星蘭は、きゃああ〜!と顔を輝かせた。


そして――


オレを完全に無視して、玄曜の両脇を挟みながら

家の中へ連れて行く。

実の息子より歓迎されている……。やれやれ。


「玄曜君!」


居間では父さんが囲碁盤を抱えて待ち構えていた。


「囲碁はどうだ? できるかな?」


「はい。嗜む程度ですが」


「そうかそうか!」


父さんは満面の笑みを浮かべた。


「どれ、ならば私が教えてあげよう! 近所では負け知らずだからな!」


玄曜……絶対に嗜む程度じゃないだろ。


父さんは意気揚々と対局を始めた。

――が。

勝負事に一切手を抜かない男、玄曜。

結果、父さんは一回も勝てなかった。


そりゃそうだ。


「玄曜君!! もう一局! もう一局だけ!」


「わかりました」


「今度こそ勝つ!」


そんな二人を、オレは微笑ましく見守った。



「流星、今日泊まっていく?」


母さんが剥いた柿を差し出しながら聞いてきた。


「え? 夕方には帰るつもりだけど」


「あら〜! 勿体ない!」


母さんは目を丸くした。


「今日はお祭りで夜まで露店が出てるのよ〜?

獅子舞も見られるし!」

 

「夜のお祭りなんて最高じゃない!

お父さんと初めて出かけた時を思い出すわ〜」


母さんはうっとりと目を細める。


「でも玄曜、明日仕事だし」


オレがそう言うと、


「問題ない」

囲碁盤の前から声が返ってきた。


「え?」


「泊まる」

玄曜は、そう言って投了した。


「まあ〜!」


「やったぁ!」

母さんと星蘭の歓声が響いた。

 

「玄曜さん!柿!柿食べる〜?」

「はい。いただきます」

玄曜は静かに立ち上がると食卓についた。


父さんだけが盤面を見つめながら、

「……待て。今の手は反則じゃないか?」

と、現実逃避していた。



日が暮れ、街は無数の灯籠に照らされて赤く染まっていた。

祭りの熱気はさらに増している。


あちこちで歌や舞が披露され、人々は音楽に合わせて踊っていた。

通りの両側には露店が並び、菓子や土産物で溢れている。


「見て! 曜!」


流星はふと足を止めた。


そこには色鮮やかな飾りを並べた露店。

虎、鳥、金魚。梅や牡丹。

様々な石を削って作られた小さな細工物だった。


「どうしようかな〜」


流星はしばらく悩み、

やがて二つの飾りを手に取った。


「これにしよう!」


「こっちがオレで」


「こっちが曜!」


流星は白玉で作られた小さな龍の飾りを

玄曜へ差し出した。


「曜はオレに対の龍霊雨器をくれただろ?」


「だからオレも、対の物をあげたかったんだ!」


流星は嬉しそうに笑う。


その手には黒玉で作られた同じ龍の飾り。

簡素な紐で結ばれた小さな土産物だった。

高価な玉ではない。精巧な細工でもない。

素朴な、どこにでもあるような飾りだ。


玄曜は幼い頃から数え切れないほどの宝を与えられてきた。

それに比べれば、ただの石に過ぎない。


それでも――


これほど嬉しい贈り物はなかった。


「わかった」


玄曜は小さな龍にそっと触れる。


「大切にする」


その言葉に、流星は嬉しそうに顔を綻ばせた。


その笑顔を見た瞬間。

玄曜の胸の奥で、独占欲が疼く。


オレのものだ。誰にも渡したくない。

どこかへ閉じ込めてしまいたい。


――だが、それは無理だろう。


この自由な流れ星は、簡単に捕まるような存在ではない。


玄曜は小さく息を吐き、

逃がさないように、流星の手を握り直した。



二人は街の広場へやって来た。


中央では色鮮やかな獅子舞が舞い、

観客たちから歓声が上がっている。


周囲は老若男女で溢れ返っていた。


「こんなに遅くまでやってるんだな」


玄曜が獅子舞を見つめながら呟く。


流星は笑った。


「普段は夜更かしすると怒られるけど!

祭りの日は特別なんだ!」


銅鑼や太鼓の音が鳴り響く。

人混みの中、二人は自然と身体を寄せ合った。


その時。


「おっと!」


繋いだ手の下を小さな男の子が駆け抜けていく。


「父さん!」


すぐ近くで父親が手を振った。


「ほら、こっちだ!」


男は子供を抱き上げ、肩車をしてやる。


「懐かしいなあ」


流星は思わず笑う。


「オレも父さんによく肩車してもらって獅子舞見てたんだ」


そこまで言って、ふと口を閉じた。


玄曜は太鼓の音に紛れて聞こえていない。


流星は横顔を見る。

玄曜にも――

こんな思い出はあったのだろうか。


父親。


母親。


兄弟や、親族は?


流星は玄曜について知っている事を思い返した。


父は病で亡くなった。

その後、母は後宮を去った。

祖父は皇帝。

知っているのは、それくらいだ。


皇族なのに、なぜ文官をしているのか。

どうして離れで暮らしているのか。


本当は何も知らない。


灯籠の灯りに照らされた横顔を見つめる。


穏やかな顔。優しい横顔。


オレは――

玄曜の事をまだ何も知らない。


聞いてもいいのだろうか。

家族の事。皇族としての玄曜の事。


聞いたら、教えてくれるのだろうか。

流星は繋いだ手に、そっと力を込めた。



白家へ戻った頃には、すっかり夜も更けていた。


「玄曜……寝られるか?」


流星は自室に二人分の布団を敷く。


離れの寝台とはかけ離れた、床に直接敷いた布団。

お坊ちゃんの玄曜は、寝れないんじゃ……。

 

「玄曜だけでも、今からでも宿に――」


「いや」


玄曜は即答した。


「ここがいい」


そう言うと躊躇なく横になり、数分後には眠っていた。

相変わらず寝付きがいい。


流星も隣に横になる。

すると。


後ろから腕が回された。

ぎゅっと。

離さないように。逃がさないように。


「曜?」


返事はない。


規則正しい寝息だけが聞こえる。

どうやら寝ながら無意識に抱き寄せているらしい。


流星は思わず笑った。


「おやすみ、曜」


小さく呟く。


「今日、楽しかったな」


玄曜から見て、こんな庶民の暮らしはどう映ったのだろう。


後悔していないだろうか。

オレみたいなのと付き合う事を。

もし後悔していたら――


(……嫌だなぁ)


眠気の中でそんな事を考える。

やっぱり。住む世界が違いすぎるのかなぁ。


……それでも。


温かな腕の中で、流星はゆっくりと目を閉じた。



翌朝。


無断外泊した主君のせいで、慎言だけが胃を痛めていた。


※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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