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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第二章 「玄曜の隣に立つ覚悟と、龍雨祭の始まり」

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86/90

第二話 「神の子のお役目と、二人だけの呼び名」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 朝日が差し込む離れの寝室。


「んん……ふわ……」


流星は今日も穏やかに目を覚ました――が。


「おはようっ! 流星!」


阿燐ありん!?」


予想外の声に、一気に飛び起きる。

寝台のすぐ隣に、阿燐が寝転がっていた。


簡易的な寝衣に包まれ、布団へくるまった小さな身体は、

いつも以上に幼く見える。


阿燐はくふふっと笑うと、流星へぎゅっと抱きついた。


(うわー!!!)


(可愛いが溢れてる……!!)


やっぱり阿燐、可愛いなぁ……。


流星が頭を優しく撫でると、阿燐はますます擦り寄ってくる。


ああ〜、可愛い!


「……ん?」


ふと、違和感に気づく。

玄曜が怒ってこない。

絶対に引き離されると思ったのに。


寝台にもいない。

おかしい。


「玄曜?」


呼んでも反応はない。


「玄曜なら、玄曜の宮殿いえに飛ばしたよ」


阿燐は軽い口調で言った。


「んん!?」

宮殿いえに???

飛ばした!???


その瞬間――


バターン!!!

玄関の扉が荒々しく開く音が響いた。


続いて。


ドス、ドス、ドス――!


凄まじい勢いで階段を上がってくる足音。


足音だけで分かる。

めちゃくちゃ怒ってる。


バンッ!!!


寝室の扉が勢いよく開いた。


怒気を撒き散らしながら、玄曜が現れる。


「ぎょえ……」


あまりの圧に、流星は絶句した。


玄曜の怒りが収まらないのも無理はない。

皇族宮の奥の宮殿へ突然飛ばされ。

目を覚ませば流星はおらず。


ようやく戻ってきたと思ったら――


自分の寝台で。

寝衣のはだけた流星と、阿燐がぴったり

くっついていたのだから。


「……おい」


低い声。


静かなのに、抑えきれない怒りが滲んでいる。


「げっ、玄曜! 違うから! これはっ! 違うから!」


まるで、浮気現場をみられたかのように。

なぜか流星が慌てふためき、訳の分からない

言い訳を始めてしまう。


阿燐はそんな玄曜を楽しそうに見上げ、ふふんと笑った。


「意外と早かったな」


「いいから離れろ」


「ふんっ!」


阿燐はぷうっと頬を膨らませると、ようやく流星から離れた。


「流星っ! 後で承天殿しょうてんでんに来てね!」


「今日はボクのお役目の日だから!」


「お……お役目?」


「そうっ!」


阿燐はどこからか短い杖を取り出し、くるくると回した。


シャララララ〜!と、いう可愛い効果音と共に、星が周囲へ煌めく。


「じゃーねー!」


次の瞬間。

阿燐の姿は一瞬で消えていた。


後に残されたのは――


流星と。

不機嫌さが限界突破している玄曜だけだった。



「玄曜……機嫌なおせって……」


あの後。


不機嫌な玄曜に押し倒され――

オレはしばらく寝室から出られなかった。


そして今。


まだまだ不機嫌な玄曜と共に、再び承天殿へ向かっている。


――途中。


「……全然、満足してねぇからな」


ぼそっと、そんなことを言われたけど。

聞かなかったことにした。


「流星! こっちこっちー!」


承天殿の庭園で、阿燐が両手をぶんぶん振っていた。


その側には――


鈴。


羽扇うせん


傘。


囲碁盤。


虎のぬいぐるみ。


五つの工芸品が並べられている。


「何? どうするの?」


「ふふっ! 見ててねー!」


阿燐は杖を掲げた。

頭上へ星々が生まれ、ゆっくりと巡り始める。


「――お父様の星の雨を、汝らに与えん」


星は光の雫へ姿を変え、静かに工芸品へ降り注いだ。


淡い光。七色の輝き。

工芸品達は、まるで魂を宿したみたいに輝き始める。


「……!!?」


オレは目の前の光景に固まった。

工芸品達は、カタカタと身体を揺らし、

好き勝手に喋り始めた。


「え!?な、何!? これって今、龍霊雨器りゅうれいうきになったの!?」


「そう! ボクのお役目!」

阿燐は得意げに言った。


「凄くない!!??」

思わず大声が出た。


いや、だって――!!


「今のって歴史的な出来事なんじゃないの!!?」


「もっとこう、大広間で式典とかやるレベルじゃない!?」


「ちょっと待って!? えーと……阿燐って

工芸品を龍霊雨器にできるってこと!?」


「今見ただろ」

横から玄曜がぼそりと呟く。


「すごいじゃん!!!!」


「阿燐ってすごい子じゃん!!!!」


オレに全力で褒められ、阿燐はえへへ、と照れ笑いした。


本当に可愛い。



気づけば、龍霊雨器となった工芸品達は

いつの間にか姿を消していた。


「みんな、自分で居場所とか持ち主を決めるんだよー!」


「そうなんだ……」

自由過ぎる。今まで出会ってきた龍霊雨器達も

随分と自由だったけど……。

 

「ん?」

ふと見ると、一つだけ残っていた。


虎のぬいぐるみだった。


手のひらへ乗るほど小さな、子供用のぬいぐるみ。


鮮やかな刺繍糸で、小さな桃や如意雲、福を呼ぶ赤い蝙蝠――

子供の健やかな成長を願う吉祥模様が、

その身体いっぱいへ施されている。


「わあっ! 可愛い!」


オレはそっと手に乗せた。


“父上の匂いがします……”


虎のぬいぐるみは、もじもじと緊張した様子で喋った。


「こんにちは。名前はあるの?」


“ふわわっ! ……瑞虎福鈴ずいこふくりんです”


声をかけられた瞬間、瑞虎福鈴ずいこふくりん

ぴょんっと飛び上がる。


「流星、その子気に入った?」


阿燐が流星の顔を覗き込む。


「それなら――あげる」


「えっ!? オレに!?」


「……きっと、必要になるから」

阿燐はポツリと呟いた。


「え?」


「ううん。なんでもない!流星の龍霊雨器だよ!」


「ええー!! 嬉しい!!」


オレと瑞虎福鈴ずいこふくりんは、じっと見つめ合う。


瑞虎福鈴ずいこふくりん……じゃあ、

虎福こふくちゃん!」


「虎福ちゃんって呼ぼう!」


“虎福ちゃん……!”


瑞虎福鈴ずいこふくりん――改め、虎福こふくちゃんは

嬉しそうに、流星の手のひらでぴょんぴょん跳ねた。

 


そんな微笑ましい光景を。


玄曜だけが、納得いかなそうに不機嫌な顔で眺めていた。


その後。


阿燐へ色々聞きたいことはあったのだが、


「またね〜!」


杖を振った阿燐は、そのまま消えてしまった。


……龍霊雨器だけじゃなく、龍の神の魂を宿してる人って、

みんな自由気ままなのか……?



離れへ戻った後も、玄曜はずっと不機嫌だった。


「もー。玄曜……」


流星は呆れながら言う。


「何をそんなに怒ってるんだよ」


玄曜はちらりと流星を見ると、小さく呟いた。


「……オレだけだったのに」


「ん?」


「流星って呼ぶのは、オレだけだった」

玄曜は腕を組み、不機嫌そうに目を伏せる。


「お前の龍霊雨器だって、オレのがあったのに」


「……え?」

流星はぽかん、と固まった。


「え!? もしかして阿燐がオレを“流星”って

呼んでるのに怒ってたの!?」


玄曜は何も答えない。

ただ、じっと流星を見つめてくる。


――そうだが?

そう、顔にそう書いてある。


「天星様もオレのこと流星って呼んでるだろ?」


「天星様はいい」

玄曜は即答した。


阿燐アイツが呼ぶのが嫌なんだよ」


ぶっきらぼうに吐き捨てる。

「オレだけが良かった」


子供みたいな言い方だった。


でも――。

そう言われると、胸の奥がくすぐったくなる。


オレだけ。

自分達だけ。


……そうだ。


「それなら――」


ふと、流星は思いつく。


「二人だけの時、オレのこと、“せい”って呼べば?」


「……は?」

玄曜が眉を寄せる。


「玄曜がオレを“星”って呼ぶなら、オレは

玄曜を“よう”って呼ぶ!」


「二人だけの呼び名!」


流星は嬉しそうに笑った。


「なんか、恋人っぽいだろ?」


玄曜は何も言わなかった。

ただ静かに、流星の手をとる。

そのまま引き寄せ、膝へ乗せた。


ゆっくりと顔が近づく。


「……星」


低く甘い声。


天青色の瞳が、揺らめく。

その綺麗な瞳には――オレしか映っていなかった。

それだけで、心臓がぎゅうっと締め付けられる。


「……曜」


自分で提案したくせに、緊張で声が掠れた。


そっと頬へ口づけが落ちる。


……どうやら、機嫌は直ったらしい。

本当に単純なんだから。


「オレだけのものだ」


耳元で満足そうに囁かれる。

そのまま、ひょいと抱き上げられた。


迷いなく向かう先は――二階の寝室。


「ん……? あの、曜?」


「オレは今日……全然、満足してねぇ」


静かに寝室の扉が閉まる。


その後。

流星は朝まで、寝室から出られなかった。


そして――


虎福こふくちゃんだけが、食卓へぽつんと

置き去りにされていた。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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