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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第二章 「玄曜の隣に立つ覚悟と、龍雨祭の始まり」

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第一話 「初めまして!阿燐です!」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「なーんか、ソワソワするんだよな〜」


天印と執命――天命コンビに呼ばれ、オレと玄曜は承天殿しょうてんでんへ来ていた。


玄曜のおじいちゃん、皇帝・景昌けいしょうが住む宮殿だ。

今日はなぜか、朝起きてからずっと落ち着かない。


「玄曜は?」

横を歩く玄曜に目を向ける。


「……別に。なんともない」

玄曜はぶっきらぼうに答えた。


でも、玄曜も、なんだかいつもと少し空気が違う。


承天殿、その中央――天極之間てんきょくのま


前にオレが突き破って壊した扉は、見事に直されていた。


重厚な扉が、ゆっくりと開く。


その瞬間、空気が一変した。


澄み切った空気。


この空気……天星様と同じだ。


天極之間てんきょくのまの祭壇中央。

龍の紋様が刻まれた石壇の上に、小さな人影がちょこんと座っていた。


天印と執命の間。

――まるで、二柱に守られているように。


人影はオレと目が合うと、ぱちりと瞬きをした。


「あーっ! 流星ーー!!!!」


「んんー!? なっ、何!?」


腕を広げた人影が、勢いよくオレへ飛び込んでくる。

慌てて受け止めると、それは随分と小さな……10歳ぐらいの少年だった。


大きな瞳がまたぱちりと瞬き、オレを見つめる。

光を受けてきらきらと輝く――天青色の瞳。


「ど……どちら様??」

思わず声が裏返る。


「ふふっ」


少年は一歩離れると、満面の笑みを向ける。


「初めまして! 阿燐ありんでーす!」


見た目以上に、声は幼い。


だが――祭壇の空気が、微かに震えた気がした。

透き通るように輝く長い銀髪。

ぱちぱちと瞬くたび、天青色に揺らめく大きな瞳。

その全身には星が煌めき、動くたびにきらきらと光が反射している。


「ふわっ……!」


思わず見惚れてしまう。


これは……!!!


全身から可愛いが溢れている……!!


「流星っ!」


阿燐は再びオレに抱きつこうとした。


――が。


「離れろ」


玄曜が襟を掴み、無理矢理引き離した。

明らかに機嫌が悪い。


「ちょっと! 玄曜!」

オレは慌てて間に入る。


阿燐ありんは、ぷうっと頬を膨らませ、腕を組んで玄曜を睨みつけた。


「お前が玄曜か」


上から下までじろじろと見る。

そして、ふふん、と得意げに笑った。


「なんだ!大したことないな!」


「…………あ?」


玄曜は不機嫌を一切隠さず、阿燐へ一歩近づいた。


「おい! 玄曜! 子供相手に!」


「コイツは子供じゃねぇ。何千年生きてると思ってるんだ」


「何千……年??」


阿燐に顔を向ける。


すると阿燐は、妖艶にくすりと笑った。

そのまとう空気は――龍の神、天星そのものだった。


「その方は阿燐様。龍の神の魂を宿す御子様だ」

そばで静かに見守っていた皇帝・景昌が口を開く。


「龍の神の……天星様の? 御子様??」


ついていけず、オレはぱちぱちと瞬きながら阿燐を見つめた。


「そうっ!」


阿燐は、ぱっと星が煌めくように笑う。


「お父様が、流星に協力してって言うから起きたんだー!」


そう言うと、玄曜の隙をついてオレに抱きついた。


「離れろ」


「ヤダー!ボク、流星にくっつきたい!」


阿燐はくふふっと笑う。


「流星はお父様の器! ボクはお父様が大好き!

だから流星も大好き!」


阿燐に抱きつかれるたび、胸の奥がじんわり温かくなる。


オレの中にいる天星様が、喜んでいるのかな。

そう思うと、阿燐がますます可愛く見えて、思わず

優しく抱きしめ返してしまった。


阿燐は一瞬、目を大きく見開いた。

それから頬を桃色に染め、オレの胸に顔を寄せる。


「おい」


玄曜がますます不機嫌になる。


「だってオレ、弟欲しかったから〜」


こんな可愛い子に懐かれたら、嬉しいに決まってる。

思わず顔が緩んでしまう。


「オマエが流星って呼ぶな」


「知らなーい!」


玄曜は全身でイライラしていた。


こんなに怒ってる玄曜、初めて見たかもしれない。


“父上から話は聞いているか?”


石壇の定位置にいた天印の声が、頭の中へ静かに響く。


「天星様が目覚めて、龍霊雨器りゅうれいうきたちの均衡が崩れてるとは聞いたけど」


“その力の均衡を調整するため、阿燐に目覚めてもらった”


隣の執命も続けた。


「じゃあ、天星様が言ってた“協力してくれる者”って……」


オレは、まだぴったりくっついている阿燐へ目を向ける。


「ボクのこと!」


阿燐はぱっと顔を上げた。


「玄曜より、ずーっと頼りになるよっ!」


ご機嫌そのものだ。


一方、オレの隣にいる玄曜は、ずっと不機嫌である。


……子供相手にムキになりすぎじゃないか??


「阿燐は――」


オレが口を開いた、その瞬間。


ドオオォォォーン!!!


けたたましい銅鑼どらの音が、すぐ近くで響き渡った。


「なっ、何!?」


ドオオォォォーン!!!


「どうしたの!? 急に!」


ドオオォォォーン!!!


「ねえ、これ――」


ドオオォォォーン!!!


「うるさいなぁー!! 何これ!?」


「ほら、早速始まった」

阿燐は耳を塞ぎながら、軽い口調で言った。


「銅鑼の龍霊雨器が暴走してるな」


景昌けいしょうは、やれやれとため息をつき、流星を手招きする。


「来なさい」


音のする方――宝物庫へ歩き出した。



宝物庫の中では、儀式に使われる巨大な銅鑼が

勝手に鳴り響いていた。


“申し訳ありませんー! なんだかここ数日、

落ち着かなくてー!!”


銅鑼の龍霊雨器が、半泣きのような声で叫ぶ。


“力が有り余っちゃってー!!”


ドオオォォーン!!!


凄まじい音が宝物庫中へ響き渡り、周囲の収納品が

振動でカタカタと揺れた。


「ぎょえええ……これは大変だ」


こんなの……どうやって止めればいいんだ??


すると。


阿燐が、てててっと銅鑼の側まで歩いていった。


腰に下げていた短い杖を手に取る。


くるり、と回した瞬間――


それは阿燐の背丈より長い、美しい杖へ変形した。


繊細な彫刻。

散りばめられた宝玉。


杖が揺れるたび、飾りがしゃらりと鳴り、星の光が周囲へ煌めく。


阿燐の身体も淡く輝き始めた。


(綺麗……)


流星は思わず見惚れる。

なんて神秘的なんだろう。


「いっくよー!」


阿燐は勢いよく杖を振りかぶった。


そして――


「えーい!!!」


ゴォンッ!!!!


「ええええええええええーー!!!?」


思いっきり銅鑼を杖で叩いた。


そ、そんな!!


力技なの!?


さっきまでの神秘的な空気、どこ行った!?


流星は呆気に取られ、ぽかんと阿燐を見つめる。


叩かれた銅鑼は、ぶるぶるとしばらく揺れていたが――

やがて静かになり、そのままスヤスヤと眠りについた。


「……やっぱり始まってる」

阿燐は、ぽつり、と呟いた。


「え?」

騒ぎは収まったはずなのに、後宮全体の空気が変わった様に……。

流星は得体の知れない胸騒ぎがした。

 

「流星ーー!!」


阿燐は、パッと笑顔を向けて一直線に駆け寄り、

再び抱きついてくる。


「……チッ」


玄曜は不機嫌を隠しもせず舌打ちした。


「ねっ! すごいでしょー? 褒めてっ! 褒めてっ!」


「おい。くっつくな」


玄曜は阿燐の腕を引っ張る。


「ヤダー!」


阿燐は流星の腕へしがみついた。


「ぐえっ! ちょ、待って!」


「離れろ」


「ヤダー! 玄曜嫌いー!」


二人に左右から引っ張られ、流星はぐらぐら揺れる。


景昌が止めに入るまで、二人は本気で流星を取り合っていた。

 

……これは。

……大変な子が現れちゃったなぁ。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


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