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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第一章 「恋人になった!」

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84/90

第七話「天星様と小さい玄曜と始まりの話」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

――流星。


自分を呼ぶ声に、流星はぱちりと目を開けた。


「んん……ええっ!?」


頭上に広がっていたのは――

半分が朝、半分が夜の空だった。

片側には太陽。もう片側には月。

二つが同時に輝いている。


「なっ、ななな、何!? どこ!? ここ!!」


辺りは庭園のようだった。


桃の花が咲き乱れ、

澄み切った空気には甘い香りが満ちている。


ふと視線を向ける。


厳かな庭園の中央に、てい(東屋)があり――


その中心に、一人の人物が座していた。


『よく来たのう』


「……!」


流星は目を見開く。


そこにいたのは――流星とまったく同じ姿をした存在だった。


けれど。


瞳は太陽のように金色に輝き、

髪は銀色に淡く光を帯びている。

身体の周りには、無数の星がキラキラと瞬いていた。


この声。


この存在感。


「天星様!!?」


オレは思わず駆け寄った。


『眠っているところをすまぬな』


其方そなたとは頭の中で話すこともできるが、対面の方が楽しいからのう』


われの空間へ呼ばせてもらった』


倉庫の地下で眠っていた、この国の守り神。

龍の神――天星。


地下で見た時は龍の姿だったけど……。


「オレを器として出てくると、その姿なんですね……」


見た目は自分と同じ。

けれど、纏う空気はまるで違う。


「綺麗……」


オレは素直に見惚れていた。


『ふふ』


天星は楽しそうに笑う。


『そうじゃ。玄曜も呼んでおるぞ』


「えっ!? どこ!?」


オレは慌てて辺りを見渡した。

だが、玄曜の姿は見当たらない。


「おい」


不意に声がする。

視線を下へ向けると――


「はっ!!?!?」


そこには。


ちっさい玄曜がいた。


「ぎょええええーーーっ!!! 可愛い!!!!」

オレは思わず全力で叫んだ。


「うるせぇ」


「えっ!? 中身は玄曜なの!?」


「……チッ」


この態度。

どうやら中身は十八歳の玄曜のままらしい。


「なんでこの姿なんだよ……」


イライラを隠そうともしない。めちゃくちゃ不機嫌だ。


普段ならもっと怒るはずなのに、

相手が龍の神だからか、強くは出られないらしい。


オレはまじまじと小さな玄曜を見つめた。


背丈は百二十センチほど。随分と小さい。

顔立ちは幼いのに、完成された美形っぷりは

すでに健在だった。


でも今は――圧倒的に可愛い。


天青色の瞳は大きく、光を受けるたび淡く揺れる。


「あ〜〜〜!!! 可愛いっ!!」

思わず悶えてしまう。


「玄曜! 何歳くらいなの!?」


「七つ」

玄曜はぶっきらぼうに答える。


「小さい頃、髪長かったんだな!」


玄曜の髪は腰まで届き、

後ろで綺麗に三つ編みにされていた。


「そうだな」


不貞腐れている姿すら可愛い。

ダメだ。

全方向から構いたい。


「玄曜! こっち来て!」


オレは亭の椅子へ腰掛けると、天星様と向かい合うように座った。


そして――

小さな玄曜を、そのまま膝へ乗せて抱きしめる。


(ああ〜〜〜!! 可愛い!!)


普段は玄曜がオレを膝へ乗せる側なのに。

今日は逆だ。オレの顔は緩みっぱなしだった。


そして玄曜も、

どうやらまんざらではないらしい。


「それで?」


玄曜は流星の膝の上でくつろぎながら、天星へ視線を向けた。


「何の用なんです?」


『うむ』


天星は静かに頷く。


『我が目覚めたことで、子供達――龍霊雨器りゅうれいうき達の力の均衡が崩れておる』


「龍霊雨器達の……力の均衡?」


流星は小さな玄曜のふわふわした頭へ頬を乗せながら聞き返した。


『そうじゃのう……』


天星はゆっくり目を細める。


『わかりやすく、まずは、龍霊雨器の始まりから話そうかの』



「龍霊雨器の始まり……?」


流星は思わず身を乗り出した。


「あの御伽話のことですよね? 天星様が工芸品へ魂を与えたっていう……」


『人の世界では、そのように伝わっておるそうだのう』


天星は静かに目を閉じる。


そして、ゆっくりと語り始めた。


『まだこの国が小さく、国と呼べるほどでもなかった頃』


『人々は、天災や争いに巻き込まれて生きておった』


穏やかな声だった。

けれど、その言葉には遥かな時の重みが滲んでいる。


『人々は我を信仰し、祈りを捧げた』


『“どうか平安を”』


『“どうか豊かな国となりますように”――とな』


天星は空を見上げる。


半分は朝。

半分は夜。


不思議な空が、静かに広がっていた。


『そこで我は、この国へ少しずつ加護を与えることにした』


『最初は自然界のものへ力を与えようとしたのだが』


『うまくいかなくてのう』


「うまく……いかなかった?」


『水に与えると川が氾濫し、大地に与えると国が揺れる。

国を脅かすものとなってしまう……』


『形が変わらず、長く存在できるもの』


『国と共にあり、人と共に在り続けるもの』


『それを探しておった』


天星は懐かしそうに目を細める。


『どうしたものかと、地上へ降りた時――

一つの工芸品と出会った』


その瞬間。

天星の声音が、ほんの少しだけ柔らかくなった。


『それは、本当に美しかった』


静かな声。


まるで遥か昔の宝物を思い出しているみたいだった。


『その工芸品には』


『人の歴史が』


『人生が』


『命が』


『魂が』


『そして何より――愛が、込められていた』


流星は息を呑む。


『我は、それに魂を与えようと思った』


『最初に一つ』


『次に二つ』


『続いて七つ』


『そして、その後に……沢山の子供達が生まれた』


流星の膝の上で、小さな玄曜も静かに耳を傾けている。


『子供達には、それぞれ能力と加護を与えた』


『この国を守る、“器”となるために』


「この国を守る……器……龍霊雨器」

流星はそっと呟く。


この国が外敵から守られていることも。

大きな天災が少ないことも。

全部――龍霊雨器達が守ってきたから。


人からすれば想像もできないほど長い時を経て。

この龍の国を守るために。


だから今、この国は繁栄している。

人々は平和に暮らせている。


――流星は言葉を失った。


ずっと。

それが当たり前だと思っていたから。


 

『子供達へ魂を渡した後、我も満足して眠りについた』


天星は静かに目を細めた。


『しかし――』


ふいに、その金色の瞳が流星を優しく見つめる。


『まさか、人に目覚めさせられるとはのう』


天星は、くすりと笑った。

怒っているわけでもない。


むしろ。


面白くて仕方ない、とでも言いたげな、

どこか満ち足りた笑みだった。


『ところがのう。我が目覚めたことで、

龍霊雨器達の力が崩れておるのだ』


『このままでは、人や国へ影響が出るであろう』


「えっ!!?」

流星の肩がびくりと跳ねる。


『お主らが今まで対処していたものとは、比べ物にならぬ規模のな』


「ぎょえ……っ」

思わず変な声が漏れた。


『それを抑える役割は――』


天星は穏やかに微笑む。


『其方達へ任せるとしよう』


「ええっ!?」


今まで以上に大規模な龍霊雨器トラブル対応ってこと!?

た、確かに天星様は、オレが目覚めさせたけど……!!


流星は恐る恐る玄曜を見る。

だが玄曜は何も言わなかった。

ただ静かに、天星を見つめている。


『安心するとよい』


天星はゆっくりと言った。


『協力してくれる者がおるからのう』


「協力?」


『……流星』


天星の瞳が細められる。


其方そなたは、よく光る』


「え?」


『あまりに眩しくてな』


『――遠くにいる“あの子”まで、目を覚ますことになりそうじゃ』


天星は妖艶に、くすりと笑った。


「あの子……?」


誰のことだろう。

流星が首を傾げた、その時。


『玄曜』


天星は、今度は静かに玄曜へ視線を向けた。


『――あれは、欲深い』


「……」


『お前より、ずっと素直にな』


玄曜は何も答えない。

ただ、静かに天星を見つめ返していた。


『まあ、頑張るがよい』


楽しそうに笑いながら、天星は言う。


『また、ここへ来るといい』


その瞬間。


流星の視界が、一気に暗転した。


「……っ」


身体が沈み、意識が、深い眠りへ落ちていった。



ちょうど、その頃。


皇帝のみ立ち入ることを許された場所――承天殿しょうてんでん


その最奥。


厳かな祭壇の奥で。

小さな輝く瞳が、パチリと開いた。


まるで。


誰かを見つけたみたいに。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


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