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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第一章 「恋人になった!」

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第六話 「実家に行こう!」後編

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 父さんも母さんも、星蘭も。

玄曜との初対面に、完全に固まっていた。


……そりゃそうだ。

息子の恋人が男ってだけでも衝撃なのに。

全方向、ありえないくらい“いい男”なんだから。


父さんも母さんも、全身から“緊張しています!!”という空気を放っている。


「父さん! 母さん!」

オレの方が恥ずかしくなって、思わず声が裏返った。


「ほら! 中! 家入ろう!」


その声で、母さんがハッと我に返る。


「まあっ!!まあ!どうしましょ!! こぉ〜んな格好いい子!!」

母さんは慌てて父さんの腕を掴んだ。


「さあさあ! 上がって上がって!! 今お茶入れるわね〜!!」

早口でまくし立てながら、まだ呆然としている父さんを

引きずって家の中へ消えていく。


……大丈夫かなぁ。


ちらりと玄曜を見る。


すると玄曜は、静かに微笑んだ。


「お前の家だな」

その声は、どこか柔らかかった。



「流星! お昼食べていくでしょ〜!」

母さんが、食卓へ座るよう二人を促す。


卓の上には、出来立ての料理がずらりと並んでいた。


蒸し魚。

葱油拌麺ツォンヨウバンミェン

(ネギ油を麺に和えた汁なし麺)

山盛りの肉包子ローパオズ

青菜炒め。

漬物の盛り合わせ。


さらに。


生姜、なつめ、葱を入れて煮込まれた

丸鶏の薬膳鍋まである。


「うわっ! こんな豪華なの久しぶり!」

オレは思わず声を上げた。


「今日は特別だから、お母さん張り切っちゃった!」

母さんは嬉しそうに笑う。


「すごーい!!」

星蘭も目を輝かせていた。


まるで祭りの日みたいだ。

いや。

祭りより豪華かもしれない。


「だ、大丈夫なの? 母さん。我が家の家計的に……」

オレはこっそり耳打ちする。


今はオレの仕送りで前より生活は良くなったとはいえ、

こんな豪華な食事は流石に心配になる。


「それなら大丈夫よ〜!」

母さんはご機嫌に笑った。


「お父さんと、また工芸品を扱う商いを始めたの!」


「えっ!? 本当に!?」


「親切な家の方が融資してくれてな」

今度は父さんが口を開いた。


「家業を立て直せることになったんだ」


……親切な家の方。


……まさか。

 

流星はそっと玄曜を見る。

玄曜は何事もない顔で席についていた。


「珍しい工芸品を卸してくれてなぁ。

品も良いし、売れ行きもいいんだ」


父さんは嬉しそうに言った。


「おかげで店を潰さずに済んだ」


「そ……そうなんだ」

オレはそっと玄曜の袖を引いた。

 

「大したことはしていない」

玄曜はオレだけに囁いた。


「さあさあ! 玄曜さんも遠慮しないで召し上がってね!」


賑やかな食事が始まる。

久しぶりの白家の団欒。

その輪の中に、玄曜がいる。

なんだか不思議で――でも、すごく嬉しかった。


「流星! 後宮はどう?」

母さんが楽しそうに聞く。


「男の子なのによく雇ってもらえたわねぇ」


父さんと母さんは、オレが女装して後宮で働いていることを知らない。

雑用係として働いていると思っている。


「うん! 楽しく働いてるよ!」


「流星には愛嬌があるからな」

父さんが機嫌よく言った。


「いいなぁ〜! 星蘭も流星お兄様と一緒に後宮で働きたい!」


「星蘭はダメ!!」

オレは即答した。


「可愛すぎる! 国が傾いちゃうだろ!」


「星蘭も流星も、お母さんに似て可愛いからなぁ!」


「まあ〜! お父さんったら!」


食卓は笑い声でいっぱいだった。


そんな光景を。


玄曜だけが、静かに箸を止めて見つめていた。


「玄曜さん? どうしたの?」

母さんが首を傾げる。


「お口に合わなかったかしら?」


「いえ。とても美味しいです」


玄曜はゆっくり答えた。


「その……家族と食事をする機会が、あまりなかったもので」


「そうなの?」オレも思わず聞き返す。


「父とは何度かあったが、食事中の会話は禁止されていた」


「まあ……」母さんは目を丸くした。


「うちはいつもこんな感じなのよ〜。

騒がしくてごめんなさいねぇ」


「いえ」

玄曜は小さく微笑む。


「楽しいです」

その不意打ちみたいな優しい笑顔に、

オレは危うく喉を詰まらせそうになった。


父さんと母さんは本当に詰まらせていた。


玄曜はその後も黙々と食べ続ける。

どの料理もおかわりしているあたり、かなり気に入ったらしい。


「玄曜さんって、箸遣いも姿勢も綺麗なのね〜」

母さんが感心したように言う。


「文官より皇帝になった方がいいんじゃないかしら」


(次期皇帝候補です)

オレは心の中で呟いた。


隣の星蘭も、うっとりと玄曜を見ている。


「皇子様みたい……」


(実際そうなんだよなぁ……)

父さん達が知ったらひっくり返るどころじゃないだろう。


「ねえっ!!」

星蘭が勢いよく身を乗り出した。


「流星お兄様! 玄曜お兄様といつ婚姻するの!?」


「ぶふっ!!」

オレは盛大に茶を吹き出した。


「流星殿が望めば、今すぐにでも」

玄曜は満面の笑みで答える。


「流星〜!」

母さんが慌てたように言った。


「こんな素敵な人! もたもたしてると

他の女の子に取られちゃうわよ〜!」


「明日!? 明日婚姻する!?」

星蘭はもう待てない!とばかりに言った。


「流星」

今度は父さんまで真顔で頷く。


「お父さんの経験上、何事も早い方がいい」


「なんでみんな急にそっち側なの!?」


今日は軽い顔合わせのはずだったのに。

そもそも、男同士なのに誰も気にしてないし。


「うーん……今は、考え中……」

オレが、ぼそっと呟いた瞬間。


「流星〜!!」


「流星お兄様!」


「流星」


三方向から詰められた。


(こんなことになるなんて……!!)


その時。


ちらりと視線を向けた玄曜が、不敵に笑った。


――コイツ。


絶対、外堀から埋めるつもりだったな……!?



賑やかな食事を終え、帰る時間になる。


「玄曜さん」


父さんと母さんは深く頭を下げた。


「流星を、よろしくお願いします」


玄曜も姿勢を正し、深く礼を返す。


「私に出来る全てで、お守りいたします」


(だから重いんだよ、バカ……)


「玄曜さん! いつでも遊びに来てね!」


「玄曜君! 今度は囲碁をしよう!」


「玄曜お兄様!またね〜!」


「はい」


玄曜は穏やかに微笑んだ。


帰り際に渡された白家特製の南瓜餡饅頭かぼちゃあんまんじゅうを、

玄曜は離れへ戻るまで大事そうに抱えていた。



離れへ戻ると、玄曜は早速、立派な巻物を広げ始めた。


「……何それ?」


「流星。今日の礼を贈りたい」


玄曜は真剣な顔で巻物を見つめる。


はく家には黄金と宝石、どちらが喜ばれる?」


何?それ玄曜の財産目録なの!?


「いらないよ」

オレは静かに茶を飲みながら言った。


「なんでだ。やっぱり領地の方がいいか?」


「いらないから。また来てくれるのが、一番喜ぶよ」


「……わかった」

玄曜は少しだけ考え込むように黙った。


「お前の家、また行きたい」


「いいよ。また行こうな」

流星は茶を差し出す。


「流星の家だった」

玄曜は茶器を受け取り、ぽつりと呟いた。


「ん? そりゃそうだろ?」


温かくて。


騒がしくて。


なんだか幸せになる場所。


流星そのものみたいだった。


玄曜は静かに息を吐く。


そして、ほんの少しだけ笑った。


「明日も行きたい」


「明日は仕事です」


「……チッ」

ものすごく納得のいかない顔だ。


「また休みの日に行こうな」


「……わかった」



その夜。


玄曜は、いつも以上にすぐ眠ってしまった。

隣で静かな寝息を聞きながら、オレは、そっと笑う。


……もしかして。

めちゃくちゃ緊張してたのかな。

そう思うと、胸の奥がじんわり温かくなった。


「ふわぁ……。オレも寝よ」

布団へ潜り込み、目を閉じる。


眠りに落ちたと同時に――誰かに呼ばれる声がした。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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