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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第一章 「恋人になった!」

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第三話 「後宮のお茶会、怖すぎる」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 色とりどりの花々が咲き乱れる庭園を、

流星は顔を引きつらせながら歩いていた。


「だ……大丈夫ですか……? 私が後宮のお茶会なんて……」


緊張のせいで、歩き方までぎこちない。


「ははは。今日は周家うち主催の茶会ですから」


隣を歩く慎言が、穏やかに微笑む。


「緊張せず、普段通り過ごしていただければ大丈夫ですよ」


「そ、そうですか……」


今日の茶会には、上流階級の家柄の人達が招かれているらしい。


庭園のあちこちでは、人々が花を愛でながら

優雅に茶を嗜んでいる。

漂う空気からして、いかにも育ちが良さそうな人達ばかりだ。


(オレ……変じゃないよな……?)


こんな華やかな社交界みたいな場所に。

一般庶民の、しかも女装した男が紛れ込んでいるなんて。


場違いにも程がある。


(……バレてないよな?)


さっきから、あちこちから視線を感じる気がして、

思わず自分の身なりを確認してしまう。


玄曜から「これを着ていけ」と渡された衣は、触れた瞬間に

“絶対高いやつだ”とわかるほど上等なものだった。


繊細な花と蝶の刺繍が全身に咲き誇り、

透き通るような袖が風を受けてふわりと揺れる。


星鈴が歩くたび、“天青色”の衣は柔らかな陽光を受け、美しく輝いていた。


(……玄曜様の所有欲が炸裂していますね)


慎言は心の中で、そっとため息をつく。


「星鈴さんは周家の遠縁、という事にしています。

招待客とは初顔合わせです。

私もそばで控えておりますので、ご安心ください」


「ありがとうございます……」


はぁ。


慎言さん、本当に頼りになる……。


こうして慎言さんと二人で歩くのは久しぶりだった。


あの星の夜以来、慎言さんとは顔を合わせる機会もなく

過ぎてしまっていた。あの離れでの出来事も……。

思い返せば、口論になった勢いで、男の口調まで出てしまったし……。


それに。


オレと玄曜のことを、慎言さんはどこまで知っているんだろう。


「あの……慎言さん」


「はい?」


「慎言さんって……私のこと、どこまで……」


「星鈴さん」


慎言は立ち止まり、ゆっくりと流星へ向き直った。


「重要なのは、玄曜様が日々、穏やかにお過ごしいただけることです」


……圧がすごい。


穏やかな笑顔なのに、玄曜並みに圧が強い。


「はっ……はい!」


「まあ、星鈴さんが龍の神の眠りを覚まさせ、

その器になったと聞いた時は……流石に胃薬を飲みましたが」


慎言は静かに微笑む。


「それ以外のことは大した問題ではありません。性別など、些細なことです」


(あ、やっぱりバレてるんだ……)


「まあ、玄曜様のお相手は、星鈴さんくらいの方でなければ務まりませんよ」


「えっ……」


「どうか自信を持ってください。常に堂々と」


そう言って、慎言はゆっくり視線を花園へ向けた。


「玄曜様と恋仲になるということが、どういうことなのか――」


つられるように、流星も視線を向ける。


その先には――


沢山の女性達に囲まれた玄曜の姿があった。


誰もがうっとりとした目で玄曜を見つめている。


――そうだった。


玄曜は文官最高位にして、後宮人気ナンバー1の男。


つまり。


(めちゃくちゃモテる奴だった……!!!)



完全完璧な“文官モード”の玄曜を見るのは久しぶりだった。


爽やかな笑顔。

穏やかな優しい口調。

隙のない立ち居振る舞い。


全身に“キラキラ”とか“シャララララ〜”みたいな

効果音を背負っている。


作られた姿だと分かっていても、思わず

見惚れてしまうほど完璧だった。


玄曜は星鈴を見つけると、一瞬だけ鋭い視線を向けた。


――早くこっちに来い。


静かな圧。


脅すような視線に、星鈴の肩がぴくりと跳ねる。


「星鈴さん」


玄曜が声をかけた瞬間、周囲の女性達も一斉に星鈴を見た。


(うっ……!!)


探るような目。

値踏みするような目。


明らかに歓迎していない視線だ。


だが玄曜はまったく気にした様子もなく、自然な足取りで

星鈴へ近づいてくる。


「その衣、とてもよくお似合いです」


花が綻ぶような作った笑み。


それを、星鈴だけに向けた。


周囲がしん、と静まり返る。


「貴方に似合う色を贈って良かった」


その瞬間。


女性達が、光を失った深淵の瞳で星鈴を凝視した。


(ぎょええぇぇぇっ!!)


怖っっ!!


玄曜がモテるのは知っていた。


下女仲間の間でも人気は絶大だったし、皆、

憧れの存在として騒いでいた。


でも、それは“絶対に手の届かない相手”だからだ。


――けれど。


ここにいる女性達は違う。


空気で分かる。


家柄も地位もある。

そして全員、本気で玄曜を狙っている。


“玄曜様と恋仲になるということは――”


慎言に言われた言葉が、じわりと胸に染み込んでいく。


(恋人になって浮かれてたけど……)


玄曜の側にいるって。


とんでもなく大変なことなんじゃ……。


助けを求めるように、ちらりと玄曜を見る。


(玄曜!どうすればいいんだ!?)


だが。


「星鈴さん。私は他の方への挨拶がありますので。また後ほど」


「えっ!? ちょ、玄曜様っ!?」


玄曜は爽やかに微笑むと、満足そうに立ち去っていった。


――は!!?


置いていくのか!?


オレを!?

この場に!?


「あの、星鈴さん……よろしくて?」


近くにいた女性の一人が、にこやかに声をかけてくる。


だが、その視線は鋭かった。


「はっ、はい!!」


「どちらの家の方ですの?」


「は、白家はくけです」


「白家……? 聞いたことありませんわね」


嫌な沈黙。


さらに別の女性が口を開く。


「ご実家では、龍霊雨器りゅうれいうきをいくつ所有されておりますの?」


「りゅっ、龍霊雨器!?」


思わず声が裏返った。


白家に龍霊雨器なんてあるわけない。


「まさか、お持ちでないの?」


「一つも?」


「ご冗談でしょう?」


ひそひそと話し声が広がっていく。


(えっ!? みんな家に龍霊雨器あるの!?)


その時。


「皆様」


後ろに控えていた慎言が、穏やかに口を開いた。


「星鈴さんは周家の遠縁でして。最近、

後宮へ来られたばかりなのですよ」


「周家の……?」


空気が変わる。


周囲の視線に戸惑いが混ざった。


「では、玄曜様とはどういうご関係なのです?」


「随分と親しそうでしたけれど……」


「え、えーと……それは……」


言葉に詰まる。


女装した男だけど、玄曜と付き合ってます――なんて、本当のことを言えるわけがない。


しかも玄曜には、“男だとバレるな”と言われている。


(ど、どう答えればいいんだ!?)


その時だった。


ゴォン――。


庭園に銅鑼の音が響き渡る。


空気が一瞬で変わった。


皆が姿勢を正し、深く頭を下げる。


「な、何……?」


厳かな空気の先から現れたのは――

皇帝・景昌けいしょうだった。


景昌は星鈴を見つけると、軽く手を振る。


「あー! おじいちゃん!!」


…………!?


庭園中が固まった。


「久しぶりー!!」


星鈴はいつもの調子で駆け寄り、そのまま景昌へ抱きつく。


今度は全員の目が丸くなった。


この国の皇帝を。


“おじいちゃん”呼びして、気軽に抱きついた……!?


「星鈴。近くへ来ていると聞いてな。顔を見に来た」


景昌は穏やかに笑う。


「今日は天印と執命は?」


「別の仕事をしている。お前に会えず残念がっていたぞ」


「近いうちに会いに来なさい。また茶菓子を用意しておく」


景昌は優しく星鈴の頭を撫でた。


……が。


「ははは。どうやら私にも、あまり触れてほしくないらしい」


「?」


意味が分からず、星鈴はきょとんと首を傾げる。


「迎えが来たぞ」


景昌の言葉に振り返る。


そこには玄曜が立っていた。


次の瞬間。


星鈴の身体は、そっと景昌から引き剥がされる。


そのまま肩を抱かれ、玄曜の方へ引き寄せられた。


「陛下。私のです」


爽やかな笑顔。


だが、目はまったく笑っていない。


「まったく。誰に似たのやら」


景昌は呆れたように笑い、その場を後にした。


玄曜は星鈴の髪飾りをそっと直す。


髪に指を滑らせ、

天青色の衣を満足そうに見つめる。


「似合ってる」


その声は、星鈴だけに向けられていた。


星鈴は非常に無意識のまま、離れにいる時のように

玄曜へ身体を寄せる。


庭園中の人々は、その光景を呆然と見つめていた。


誰も、何も言えない。


玄曜と親密な間柄で。

皇帝に可愛がられ。

龍霊雨器の二柱――天印と執命とも親しい。


星鈴が何者なのかは分からない。


ただ、一つだけ確かなことがある。


――絶対に敵にしてはいけない。


それだけだった。


「無意識に牽制させるとは……流石ですねぇ、

星鈴さん。強強です」


慎言だけが、肩を震わせ静かに微笑んでいた。


ーーその後、なぜか女性達は急によそよそしくなった。


後宮内で流行りの甘味。

人気の演劇。

花見の会の話。


先ほどまでの探るような空気は消え、

当たり障りのない会話だけが続いていく。


そして、そのまま茶会は終了となった。


(みんなどうしたんだろう……)


星鈴は不思議に思ったが、深く考えるのはやめた。


まあ、いいか。



「疲れた〜……!」


離れへ戻るなり、流星は食卓へ突っ伏した。


お茶会での視線。

女子達からの質問。

探るような空気。


どこまで秘密にして、

どこまで答えていいのか。


考えるだけで胃が痛い。


「そういえば……」


ふと視界に、棚へ貼られた紙が入る。


――恋人としての決まり事を作る。


昨日、二人で書いた“やりたい事一覧”だ。


「玄曜」


流星は顔を上げた。


「なんだ」


茶を飲んでいた玄曜が、静かに目だけ向ける。


「決まり事を作ろう」


「決まり事?」


「玄曜と付き合うの、思ったより大変!!」


「今更だな」


「今更だよ!」


流星は勢いよく立ち上がった。


「今日みたいな日を乗り越えるために!

恋人同士、二人だけの決まり事を作る!」


「……なるほど」


玄曜は小さく頷くと、食卓へ紙を広げる。


そのまま筆を取り、さらさらと文字を書き始めた。


見惚れるほど美しい字で。


――オレ以外の男と話さない。


「重っっっ!!!」

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


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