第二話 「恋人同士でやりたいこと一覧」
ご覧いただきありがとうございます。
本作は
「中華風後宮ファンタジー」
「年上攻め×主人公受け」
を詰め込んだBL作品です。
シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。
どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。
「それで?」
いつの間にか朝食を食べ終えていた玄曜は、
棚から胡桃を取り出して齧りながら言った。
「お前の言う“楽しい恋人期間”とは、具体的に何をするんだ?」
「そうだな〜……お家デートとか?」
「一緒に住んでいる家で?」
「うっ」
流星は言葉に詰まった。
「そもそもオレ達、告白も付き合うのも、
同居の後だったんだよなぁ……」
腕を組み、天井を見上げる。
やっぱり展開が早すぎた気がする。
「あ! それなら、いっそ同居を解消して――」
ぞわっ。
前方からとんでもない圧が飛んできた。
「顔怖ぁっ!!」
思わず飛び跳ねる。
「じゃ、じゃあ寝室を別に――」
玄曜の無言の視線。
怖い。
「……いえ、なんでもないです」
やめよう。
これ以上は本能が危険だと告げている。
「えーと……恋人同士でやりたいこと……」
流星は食卓に紙を広げ、筆を取った。
・後宮内でデートする
・街でデートする
・お揃いの物を持つ
・記念日や誕生日を祝う
・祭りや季節行事に出かける
・恋人としての決まり事を作る
・実家に連れて行く
「なにがいいかな〜」
流星は楽しそうに次々と書き足していく。
玄曜はその紙を覗き込み、少し眉を上げた。
「……こんなことでいいのか?」
「こんなのがいいんだって!」
「そうか」
玄曜は流星の手から筆を抜き取る。
そのまま一覧の横に、さらさらと文字を書き始めた。
済
未
保留
「……は?」
・後宮内でデートする→ 未
・街でデートする → 保留(護衛調整確認)
・お揃いの物を持つ → 済(双蝶巡縁佩、双燕守環)
・記念日や誕生日を祝う → 未
・祭りや季節行事に出かける → 未(日程確認必要)
・恋人としての約束を作る → 未
「なんで仕事の管理表みたいになってんだよ!!」
一気に業務感が増した。
「効率的だろ」
玄曜はどこか得意げだった。
「これだけか?」
「まだ増えるからな!」
「まあ、いいだろう」
玄曜は満足そうに頷き、衣を整えながら立ち上がる。
「え? 休みなのに出かけるのか?」
「ああ。周家に行ってくる。すぐ戻る」
「行ってらっしゃい」
流星は扉まで見送った。
背中に向かって声をかけると、玄曜がふと足を止める。
ゆっくり振り返り――
そのまま、流星に軽く口づけた。
「っ……!」
完全に不意打ちだった。
肩がぴくりと跳ねる。
「行ってくる」
玄曜は静かに微笑んだ。
天青色の瞳が、優しく揺れる。
自分だけに向けられるその表情に、流星は息を呑む。
そして。
扉が閉まった瞬間。
「むり〜〜〜!!」
流星はその場に崩れ落ちた。
「とんでもない……!恋人って、大変だ……!!」
*
夕方。
周家から戻ってきた玄曜と夕食を済ませた後。
流星は食器を片付けながら、昼間に書いた紙へ目を向けた。
そこには、新しく文字が増えていた。
――灯籠会に行く
「こんなの書いたっけ……?」
「来月ある」
背後から声がした。
「えっ。これ玄曜が書いたの!?」
「そうだ」
玄曜は当然みたいに頷いた。
「祭りや季節行事に行きたいんだろ?」
そう言って、再び筆を取る。
花見の会
月宵会
水鏡祭
星灯祭
流星の知らない後宮行事が、次々と書き足されていく。
それはまるで――
少しずつ増えていく、二人の未来の約束みたいだった。
早く終わらせて婚姻したい。
そう言っていた玄曜。
だけど。
流星の望む“恋人期間”を、ちゃんと叶えようとしてくれている。
一つずつ文字を眺めるたび、胸の奥がじんわり温かくなった。
ふいに、玄曜が流星の腕を引く。
そのまま自然に抱き寄せられた。
流星は小さく笑った。
「どれも楽しみ」
「そうか」
玄曜は静かに答えた。
流星も、そっと身体を預ける。
穏やかな沈黙が、離れの中に落ちた。
しばらくして。
「……もう寝るか」
玄曜が低く言う。
「……うん」
「明日は用事がある」
「……ん?」
「お前を後宮の茶会に連れていく」
「……んん??」
流星はゆっくり瞬きをした。
茶会。
茶会???
――なにそれ!?
※作者より
お読みいただき、ありがとうございました。
龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。
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