エピローグ 「御伽話」
「ねえ、お母様。あのお話を聞かせて!」
月に照らされた庭園を、幼い男の子が、
母の手を引きながら歩いていた。
「まあ、またなの?
あなたは本当にあのお話が好きね」
母はくすりと笑い、そばの椅子に腰掛ける。
男の子を膝に乗せると、静かに語り始めた。
「――昔々。龍の神様が、この大陸に
降り立った時のお話」
「人が生み出した工芸品のあまりの美しさに、
龍の神様は心を打たれ、涙を流しました」
「その涙は雨となり――
雨を受けた工芸品には、奇跡が起き……
その身に、魂を宿したのです」
「龍の魂を宿した工芸品。それを人は、
龍霊雨器と呼ぶようになりました」
「龍霊雨器――神の涙を受けた、一雫の奇跡と……」
男の子は目を輝かせる。
「ねえ、お母様。龍霊雨器はたくさんあるけど……。
僕たちと同じ力を持った人は、他にもいるの?」
母は少し考えてから、やさしく微笑んだ。
「きっと、いるわ。龍の国はとても広いもの」
「龍の神様の力はね、惹き合うものなのよ。
だから――いつか必ず、出会えるわ」
幼い男の子は、母から受け継いだ
美しい天青色の瞳を、きらきらと輝かせた。
「きっと、宝石みたいな子だろうなぁ!」
「見つけたら、誰にも見せたくないな。
誰にも触らせたくない。
閉じ込めて……僕だけのものにしたい!」
「まあ!」
母は小さく肩をすくめて笑う。
「お父様と同じね。玄曜も、本当に愛が重いのだから」
二人は顔を見合わせ、くすくすと笑い合った。
――懐かしい夢だった。
玄曜は、ゆっくりと目を覚ます。
隣に目を向けると、流星が穏やかな寝息を立てて眠っていた。
月明かりに照らされたその姿は、淡く、やさしく輝いている。
思わず息をのみ、
玄曜はそっと、その頬にキスを落とした。
「……オレだけのものだ」
満足げに微笑みながら、
――あの日、夢見た宝石よりも美しく輝く。
一筋の流れ星を。
玄曜は、いつまでも見つめ続けていた。
ここまで読んでくださった皆様、
本当にありがとうございました!
5/25からは、別ページにて
『龍霊雨器 創作裏話+SS』が始まります。
キャラクター設定や世界観、制作裏話、
ここでしか読めない書き下ろしSSなどを更新予定です!
そして――
第二期は、6/2(火)より開始予定です!
流星と玄曜の物語は、まだまだ続きます。
引き続き、楽しんでいただけたら嬉しいです!




