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【第一期完結/第二期開始!】『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
最終章 「天命とか聞いてないんだが 」

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第十一話 「星の下、選ばれた未来」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 静かな夜だった。

聞こえるのは、風に木の葉が揺れる音と、

虫の鳴き声くらいだ。


玄曜げんようは流星を抱き抱えたまま、離れへと向かっていた。

腕の中の温もりと、小さな寝息、ただそれだけが

玄曜の心を照らしている。


「ん……」


流星が、ゆっくりと瞼を開く。


「起きたか?」


「……」


一瞬だけ。


流星の視線が、玄曜を捉えきれずに揺れた。


「……誰……?」


かすれた声が、こぼれる。


――空気が、止まった。


「……は?」


玄曜の声が、低く落ちる。


その次の瞬間――


「……あ、玄曜……?」


流星が、はっとしたように瞬きをする。


「……なに言ってんだ、オレ……」


自分でも理解できていないように、小さく首を傾げる。


「もうすぐ離れだ」


玄曜の声は、いつも通りだった。


けれど、その指先だけが――わずかに強く、流星を抱き寄せていた。


「身体は大丈夫か?」


玄曜は腕の中の流星を見下ろす。

その表情は、流星が今まで見たこともないほど優しくて、

思わず息を呑んだ。


「だ……大丈夫」


玄曜の腕の中にいる。

それだけで胸の奥が、きゅう、と震える。



離れまでは、あと少し。

池にかかる橋を渡っていると、ふいに玄曜の足が止まった。


「立てるか?」


「えっ!? うん」


流星はそっと下ろされる。


月明かりに照らされ、玄曜の天青色てんせいしょくの瞳が静かに揺れていた。

玄曜は、じっと流星を見つめている。


「……ど、どうしたの?」


「流星……」


「げ、玄——」


「オマエ!! なんであんな所まで来たんだよ!!」


玄曜は腕を組み、一気に不機嫌な顔になる。


――めちゃくちゃ怒ってる!

さっきまで、いい雰囲気だったのに!


「だって! 玄曜、帰らないって言うし!

オレ、五品も作ったんだぞ!? それに——」


「後宮から出ていけとか、玄曜に相応しくないとか、

正妃になれないとか!色々言われたのっ!」


勢いのまま、言い返していた。


「だから迎えに行きたかったの! 悪かったな!!」


睨みつけると、胸の奥がぷくぷくと膨れてくる。


オレだって大変だったし、頑張ったのに……。

流星は俯いて、小さくぶつぶつと呟いた。


玄曜は、そんな流星を見て、ふっと小さく息を吐く。


「……まさか、龍の神を連れてくるとはな」


「……うん。倉庫の地下で、出会ったんだ」


「そうか」


あの場所で眠っている存在のことを、玄曜は知っていた。

誰にも起こせない、遥か天上の存在。

この国の龍の守り神。


それを——。


「魂まで宿されるとは……」


呆れたように、玄曜が言う。

しかも、地上での器に選ばれるなど。


(こいつのコミュ力、どうなってるんだ……)


「……ダメだった?」


「いや」


玄曜は首を振る。


「オマエ、ますますオレから離れられなくなるぞ」


「え? なんで?」


「オレも、魂を宿されてるからな」


「そうなの!?」


「言っただろ。天命で決まってるって」


玄曜は視線を外し、淡々と続ける。


「龍の神の力は、この国そのものだ。

皇帝になれば、国はより栄え、恩恵を受ける」


「玄曜は……皇帝になりたいの? 天命だから?」


「他のバカな候補どもがなるくらいならな」


低く、吐き捨てるように言った。


「この国を、ダメにするわけにはいかないんだよ」


……まあ、色々事情があんだよ。

ぶっきらぼうにそう付け加える。


玄曜は流星と向き合い、ゆっくりと両手を取った。

月明かりの下、流星の左薬指にはめられた

双燕守環そうえんしゅかんが、きらりと光る。


「流星」


「……?」


「オレと一生、添い遂げてほしい」


「そっ!?」


突然の言葉に、声が裏返る。


「オレだけのものにしたい」


「なっ——」


――それって……。


求婚プロポーズ……?」


流星の口から、ぽろりとこぼれ落ちる。


「そうだ」

玄曜は、真っ直ぐに答えた。


「好きだから、絶対に放さない。オレだけのものにする」


風が、優しく吹き抜ける。

玄曜の黒髪と髪飾りが揺れ、月明かりを受けて、

紫水晶のように深く輝いた。



天青色てんせいしょくの瞳は、静かに、けれど確かに揺らめき、

そこにはオレだけが映っている。


――なんて、綺麗なんだろう。


息をするのも忘れて、ただ見惚れていた。


……ハッ、と我に返った時には、もう遅かった。


心臓が激しく脈打ち、身体中の血が一気に熱を帯びる。

顔は熱く、呼吸の仕方すら思い出せない。


なにこれ……!


ダメだ……!!


玄曜が――


めちゃくちゃ、かっこいい……!!!


「おっ……! あのっ……! そっ……っ……!」


舌がうまく回らず、言葉にならない。


「落ち着け」


「オレも……!」


オレは目をぎゅっと瞑った。

オレだって、ずっと――ずっと伝えたかった。


「オレも玄曜が好きだよ」


玄曜を真っ直ぐ見つめて、そう言った。


言った瞬間、泣きそうになった。

――言えた。

やっと、自分の気持ちを伝えられた。


玄曜は、ぽかん……と固まっている。


「ど、どうした!? 玄曜!! 聞いてたか!?」


「……」


玄曜は答えない。

オレの手を握ったまま、動かない。


……聞こえてなかった?

もう一回言うの?

え、無理……恥ずかしすぎない……?


「流星……オマエ、オレが好きなのか?」


何言ってるんだコイツ、みたいな顔で玄曜が言う。


「そうだよ!」


思わず声が大きくなる。


「玄曜が好きだから……玄曜が選んだ未来に、

オレも一緒に連れて行ってよ!」


オレは、にこっと笑った。


その瞬間――

強く、抱きしめられた。


「玄……!!」


玄曜はオレの両肩を掴み、真っ直ぐに見つめる。


「流星、前に言っただろ」


「え?」


「初めてのキスは……本当に好きな人と、満天の星の下でしたいって」


唇のすぐそばで、低く囁かれて――


そのまま、そっと唇が重なった。


「……ん……」


心臓がうるさい。

目を閉じる余裕もなく、オレは小さく震える。


唇が離れる。


「……もう一回」


そう告げられて、今度は逃げ場を塞ぐように、再び唇が重なった。


さっきより、ほんの少しだけ長く。

触れて、離れない。


無意識に、オレの指先が玄曜の衣を掴む。


それに気づいた玄曜が、微かに目を細めて――

ほんの少し、角度を変えた。


深くはない。

けれど、確かに“求める”キスだった。


ゆっくりと、唇が離れる。


「帰るぞ」


それだけ言って、玄曜はオレの手を引き、離れへと歩き出す。

引かれた手から、玄曜の熱と緊張が伝わってきた。


オレは何も言えない。

ただ、心臓だけがバクバクとうるさい。


……ちょっと待って。


お互い好きだって告白して!?

玄曜は求婚プロポーズまでして、キスまでして!!


今から、二人きりで暮らす離れに帰るの!?


恋愛経験ゼロのオレでも、

この後の展開くらい……想像できる……。


緊張と不安。

期待と焦り。


頭の中がぐるぐる忙しい。

やばい。

手汗、かいてきた……。


離れに戻り、そのまま手を引かれて二階へ向かう。


玄曜の部屋の扉が開く。


オレも、玄曜も、何も言わなかった。


ただ――

お互いを見つめる瞳だけが、淡く揺れていた。


そして、静かに。


部屋の扉が、閉まった。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


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