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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
最終章 「天命とか聞いてないんだが 」

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第二話 「急に爆弾発言を落とすな」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 結局、オレ達は二度寝してしまった。


玄関をノックする音で目を覚ます。

慎言しんげんさんだ。


慌てて飛び起き、玄曜げんようと揃って寝起き姿のまま扉を開ける。


「ああー!! おっ、お二人! !揃って!!

いけませんよ!! 火種になるようなことだけはっ!!」


慎言さんは絶叫しながら朝の支度を一気に済ませ、

不機嫌な玄曜をずるずる引きずって出て行った。


「今日は定期会議の日ですよぉー!!!」


胃を押さえつつ、不機嫌な玄曜をずるずると引きずり、

そのまま出て行ってしまった。


……嵐のようだった。



ぽつん、と取り残されたオレは、

干し大根の漬物をポリポリ齧りながら、ぼんやりと考えていた。


玄曜が……次期皇帝候補、か。


なんとなく、偉い身分なんだろうな、とは思っていた。


倉庫の龍霊雨器りゅうれいうきたちに、あれだけ慕われているし。

曜守ようしゅさんととどめさんを、生まれたときに

譲り受けたと言っていたし。

天鳳瑞奏てんほうずいそう龍吟天響りゅうぎんてんきょうみたいな、

とんでもない龍霊雨器を従えているし。


……皇帝、か。


なんだか、急に遠くへ行ってしまったみたいだ。


玄曜が、皇帝に――


「なるわけないな。あんな俺様で、豆類食べられないやつが」


残りの漬物も、ぽりぽりと口に放り込む。


「国が傾く前に、滅ぼしそうだもんな」



夕方。

玄曜が帰ってきた。


「おかえり! 玄曜!」


会議だって聞いていたから、

もっと疲れた顔で帰ってくると思っていたけど――


「話がある」


やけに真面目な顔でそう言われて、

オレは思わずドキッとする。


「な、なに……?」


緊張のあまり、手にしていたお茶を啜る。


玄曜は食卓の、いつもの椅子にどかっと座り、

足を組んだまま、ぶっきらぼうに言った。


「オマエ。オレが皇帝になったら」


――嫌な予感しかしない。


「正妃になれ」


「ぶふぅっ!?」


オレは盛大に、お茶を吹き出した。


「汚ねぇな」


「なんっ!? なんて!?正妃って何!!!??」


「正妃は正妃だ。そんなことも知らないのか?」


「いや! 正妃はわかるけど!!」


意味がわからない!


「……まあ、今はいいか。腹減った」


「は?」


「飯」


話は以上だ、とでも言いたげな顔で玄曜は言う。


「ん!?」


ちょっと待て!

話、終わってない!!


――本当に、この勝手な性格、なんとかしてほしい!



食卓に出来立ての料理が並び、香ばしい匂いが

部屋いっぱいに広がる。

今日の献立は、細切り豚肉と野菜のあんかけ麺だ。


玄曜は相当お腹が空いていたらしく、

「いただきます」

と言うなり、黙々と食べ始めた。


……子供みたい。

オレはこっそり笑ってしまう。


「ねえ……玄曜」


さっきの話が頭から離れず、思い切って声をかけた。


「なんだ」


玄曜は、きゅうりとトマトの酢の物に箸を伸ばしている。


「玄曜って……皇帝になるの?

末端候補なんじゃなかったの?」


「人が決めた序列では末端だが、

神が決めた序列では最前だからな」


「……どういうこと?」


「オレは生まれた時に、龍の神の加護を受けた。

だから天命で次期皇帝になる」


きゅうりをポリポリ齧りながら、あっさり言う。


「天命?」


「神が決めた理だ」


「……神の理で決まってるなら、

他の候補の人たちはどう思ってるの?」


「他の皇帝候補からすりゃ、心底邪魔だろうな」


麺を頬張りながら、淡々とした声。


「オレの父親が病死して、後ろ盾のない邪魔者だった母親は

後宮から追い出された。

その時七歳だったオレも、追い出したかったらしいが……」


一拍置いて、玄曜は続ける。


「オレは生まれた時から、現皇帝――祖父に気に入られてた。

だから、完全には排除できなかった」


「オレは皇帝の第一子の子。直系だ。

それに、龍の神の加護持ち」


「龍霊雨器の呪いも能力も効かない。

龍霊雨器に守られてるから、どうやっても殺せねぇ」


玄曜がこちらを見る。

天青色てんせいしょくの瞳が、わずかに揺らめいた。


「……だから、めんどくせぇ立場なんだよ」


そう言って、ふわぁ、と大きく欠伸をする。


「玄曜……」


こんな重い話をしているのに――


「すっごい眠いのか?」


玄曜はコクン、と頷いた。

満腹になったせいか、もう、うとうとしている。


……本当に子供みたいだな。


「玄曜は、皇帝になりたいの?」


「なりたいとか、なりたくないとかじゃねぇ」


「天命だから、仕方ない。生まれた時から、

オレは皇帝になること以外、何もねぇんだよ」


眠そうに淡々とした口調。

なのに、少し寂しそうに聞こえた。


 

「玄曜。ほら、もう寝ろ」


眠気が限界の玄曜を部屋まで連れて行き、

寝る支度を手伝う。


「横になって……うわっ!」


玄曜はうとうとしたまま、

オレを抱き寄せて寝台に倒れ込んだ。


「……だから、オマエは……

オレが皇帝になったら、正妃になれ」


半分寝言みたいな声。


「いや、意味わかって言ってる?

正妃って奥さんだよ?」


「オレ、男だし」


「……バレないだろ」


「いや、バレるに決まってるだろ」


「なんでだよ」


眠気も相まって、余計に不機嫌そうだ。


……ダメだ。話にならない。


「なんでオレが正妃なの?」


「……お前以外、考えられない」


「無理だろ」


「……なんでだよ。

お前は……オレのものなのに……」


声が、だんだん小さくなる。


「こんなに……近くに、誰かがいるなんて……

初めてなのに……」


そのまま、玄曜はすぅすぅと寝息を立て始めた。


「……寝ちゃった」


起こさないよう、そっと身体を起こす。


……なんとなく、わかった気がする。

玄曜の歪んだ独占欲も、所有欲も、

子供みたいなところも。


きっと、幼い頃から大変な人生だったんだろう。

想像もできないくらい、辛いこともあったはずだ。


困ったなぁ……。


覚悟していた以上に、ややこしい。


なんでこんなに、

めんどくさいヤツを好きになっちゃったんだろう。


一緒にいてあげたい気持ちはあるけど。


――んん〜!

でも、さすがに正妃はなぁ〜!

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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