第一話 「ついでみたいに言うなよ」
ご覧いただきありがとうございます。
本作は
「中華風後宮ファンタジー」
「年上攻め×主人公受け」
を詰め込んだBL作品です。
シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。
どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。
「玄曜が……何者なのか、教えてほしい」
――ちゃんと、隣に立つために。
そう問いかけてから――五日。
相変わらず、いつも通りの日々だった。
「……何も言ってこないな」
離れの庭先で洗濯物を干しながら、オレはぽつりと呟いた。
……本当に、いつも通り。
きっと、言い出せない理由があるんだろう。
「うん。大丈夫」
自分に言い聞かせるように、オレは頷いた。
「仕方ない! 気長に待つか〜!」
風に揺れる洗濯物を見上げながら、ぐっと背伸びをする。
*
――その日の夜。
「おやすみ、玄曜」
「ああ……」
いつも通り、一日が終わる――そう思った、その時。
「流星」
「ん? なに?」
「オレ、末端だけど次期皇帝候補だから」
「…………」
オレは、しばらく瞬きを繰り返した。
「ふわあ!? なんでそんな大切なこと、ついでみたいに言うの!?」
「はあ? オマエが教えろって言ったんだろうが」
「言ったけど〜!!」
確かに言ったけど!
タイミングと、言い方!!
「なんで今なの!?」
「今、思い出したから」
「もー!」
頭の中で言いたいことが渋滞する。
でも、オレはぶんぶんと頭を振って、それを飲み込んだ。
「よし!! もう大丈夫!」
……どんな話でも、受け止めるからな。
「以上だ」
玄曜は、淡々と言った。
「……は?」
「寝る」
「え!? 話終わり!?」
玄曜は何事もなかったかのように、自分の
部屋へ向かおうとする。
「終われるか! バカ!!」
思いきり腕を引くけど、びくともしない。
「もっと話すこと、色々あるだろ!」
「うるせぇな。今日は疲れた。寝る」
そのまま、寝台へ引きずられ――
「うわっ!」
寝台に転がされた瞬間、背後から抱き枕のように
抱き込まれる。
「流星、今日ここで寝ろ」
「ぎょえ!なんで!?」
「うるせぇ」
ぶっきらぼうにそう言った玄曜は、しばらくして
すぅ……すぅ……と、規則正しい寝息を立て始めた。
おいいぃぃー!!
寝れるか、バカー!!!!
*
次の日の朝。
オレは、玄曜に後ろから抱きしめられたまま目を覚ました。
……ぐっすり寝てしまった。
最初はドキドキしてたけど、
玄曜が後ろから抱きしめてくれると、恥ずかしいけど
嬉しいし。あったかいし……!
普通に寝ちゃうだろ!
背中越しに、玄曜の体温がじんわり伝わってくる。
そっと身体の向きを変えて、玄曜と向かい合う。
「……」
朝日に照らされた黒髪は、紫がかった光を帯びていた。
眠る顔は年齢より幼く見える。
……寝顔のこの顔面よ。腹立つほど、顔がいい。
さすが次期皇帝候補――
……
…………
「は?」
オレはガバッと起き上がり、玄曜をぺしぺし叩く。
「ちょっと! 玄曜!!」
「んだよ……」
玄曜は不機嫌そうに唸りながら、もぞもぞと布団に潜り込んだ。
「昨日、なんて言った!?」
「玄曜って、次期皇帝候補なの!?」
「そう言っただろ」
「ねぇ! それって――うわっ!」
腕を勢いよく引かれ、玄曜にぎゅっと抱きしめられる。
「玄……」
「うるせぇ。口塞ぐぞ」
額をくっつけられ、低く囁かれる。
「眠ぃ。まだ寝かせろ」
そう言い残して、玄曜は再びすぅ……と寝息を立て始めた。
オレは、ただ目をぱちぱちさせるしかなかった。
……寝ぼけ顔まで腹立つほどイケメンとか、
どういうことだよ。
※作者より
お読みいただき、ありがとうございました。
龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。
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