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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第四章 「運命が、オレの許可なく走り出す」

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第九話 「お前は誰のものなんだ」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「わっ! 何!?」


思わず声を上げると、文官の作業部屋の中を、

何かがぴょんぴょん跳ね回っていた。


目の前に、ぴょんっと現れたそれを見て――


「……蛙っ!?」


蛙の文鎮はケロケロッと鳴くと、また部屋の中を跳ね回る。


「なんでこんなことに……?」


「わ、私の私物の文鎮なのですがっ! 急に動き出して……!」


若い文官が、今にも泣き出しそうな顔で、オレと玄曜を出迎えた。


「蛙の文鎮!?」

見た目はただの文鎮なのに、動きは本物の蛙そのものだ。


「とりあえず、動きを止めないと……!」


「仕方ないですね」


玄曜はそう言うと、手にしていた書物で、蛙の文鎮をパシッと弾いた。

そのまま机の上に押し付け、動きを封じる。


「星鈴さん」


玄曜が書物を素早くどけた、その瞬間――


「えいっ!」


オレは文鎮を両手で包み込んだ。


手のひらから、思念のようなものが流れ込んでくる。


『比べられるのが……嫌だった……』

『自分が劣っている気がして……』


誰かの声が、頭の中に響く。


「あれ? でも、これ……」


龍霊雨器りゅうれいうきの記憶じゃない。

……もしかして。


「教えようとしてくれたの?」


蛙の文鎮にそっと囁くと、ケロッと鳴き、元の文鎮の姿へと戻った。



「……あなたの記憶だったんですね」


星鈴は、文鎮の持ち主の文官に、優しく声をかけた。


「ご迷惑をおかけしました……」


文官は深く頭を下げる。


「最近、自分より後に入った文官に先を越されて……。うまくいかないことが続いて……」

「気持ちが抑えきれなくなっていました……」


きっと、文官の強い焦燥が、蛙の文鎮に宿る龍霊雨器と共鳴したのだろう。


「悔しいって思うの、悪いことじゃないですよ」


星鈴は蛙の文鎮を、文官の手にそっと戻した。


「ちゃんと悔しがれる人の方が、前に進めると思います」


その言葉に、文官は静かに頷いた。


「玄曜様……申し訳ありませんでした。どんな処罰も受けます」

「今回は被害もありません。処罰はありませんし、

あなたは十分優秀な文官ですよ」


玄曜は淡々とそう告げた。


……が。


文官が、いつまでも星鈴の手を握ったままなので、玄曜の表情が

露骨に不機嫌になっていた。



「……おい」

「ん?」


「誰にでも、そんな顔するな」

「そんな顔?」


「……あと、手も握るな」

「?」


「勘違いする奴がいるだろ」

「何言ってんの?」


「お前は、誰のものなんだ」


「……はあ〜!」


オレは腕を組み、わざと不機嫌そうに玄曜を見る。

玄曜はというと、オレ以上に不機嫌な顔をしていた。


本当、子供みたいだ。


「はいはい、わかりましたよ」

オレは、まるで玄曜みたいに、ぶっきらぼうに言ってやる。


「誰のものでもない、玄曜だけのも――」

「ふわっ!?」


突然、玄曜がわざとらしくオレの腰を撫で、そのまま横をすり抜けた。

意地悪そうに、ニヤリと笑いながら。


「わかってるなら、いい」


そう言って、スタスタと歩いていく。


「くそ〜!」


一瞬でご機嫌になりやがって〜!

本当に子供みたい!


……どんな人生送ってきたら、あんな傍若無人な俺様になるんだよ!

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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