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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第四章 「運命が、オレの許可なく走り出す」

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第六話 「月宵和宴 後編」

本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 演奏が始まると同時に、

オレは再び、天鳳瑞奏てんほうずいそうに身体を開け渡した。


前回の演奏とは違う。

ただただ静かで――

心の奥を、ゆっくり洗い流していくような音色だった。

厳かに、穏やかに時間が流れていく。

 

“いい雰囲気ねぇ……”


“星鈴ちゃん、今日も来てくれてありがとぉ〜。久しぶりねぇ”


「(久しぶり!オレも、天鳳瑞奏てんほうずいそうに会えて嬉しい)」


“玄曜ちゃんとはぁ、あれから仲良くなれたぁ?”


仲良く……か。


天鳳瑞奏てんほうずいそうになら、

言ってもいいかもしれない。


「(オレさ……)」


“んん〜?”


「(玄曜のこと、好きになったんだ)」


“えぇっ!?”


頭の中で、キィン!と高い音が響いた。

――それでも、演奏は一切ぶれない。


“えっ!? やだぁ〜!そ、そうなのぉ〜!!”


“えぇ〜! そうなんだぁ〜!!”


んふふ。

んふふふふ。

んふふふふふ。


天鳳瑞奏てんほうずいそうは、すっかり上機嫌だった。


「(あの……玄曜には内緒にしてて……

できれば、ここだけの秘密で……)」


“えぇ〜。どうしてぇ?”


「(玄曜は……オレのこと、なんとも思ってないから)」


“…………”


「(いいんだ。側にいられるだけで。

オレが勝手に好きなだけで……それでいいって思ってる)」


“……それは、ダメよ”


天鳳瑞奏てんほうずいそうが、静かに言った。

口調も、いつもより落ち着いている。


「(天鳳瑞奏てんほうずいそう……?)」


“ようやく……ようやく、ここまで踏み込めた子が現れたのに……”


演奏は、終盤に差しかかっていた。


“ようやく……

あの方が幸せになれるって、思えたのに……”


“あの方が気づかないばかりに……”


“なんて鈍いのかしら……”


“鈍すぎよ……ほんと、子供のままなんだから……”


ぶつぶつと、天鳳瑞奏てんほうずいそうは呟いている。


「(天鳳瑞奏てんほうずいそう……? 聞こえてる?)」


“……やっぱりぃ!”


唐突に、ぱっと声が明るくなった。


“私が、なんとかしないとぉ!”


“星鈴ちゃん!

やっぱりねぇ、玄曜ちゃんにはグイグイいかないと!”


「(え? え? なに? なにが?)」


訳がわからず、オレは焦る。


“もっと仲良くなれるようにぃ!

手伝ってあげるわよぉ〜!”


そう言い切った瞬間――

再び、温かな光がオレの身体を駆け巡った。


すぅ……と視界が澄み、

瞳の色が、元に戻る。


その瞬間、

身体が急に熱を帯び――


オレは、そのまま、ゆっくりと倒れ込んだ。



視界が揺れる。

身体も、頭も、ふわふわしていた。


――玄曜に、抱き抱えられている。


ぼんやりと溶けそうな意識の中で、触れられている場所から、じんわりと熱が流れ込んでくる。

その感覚が、心臓の奥まで染み渡っていくようだった。


「流星。着いたぞ」


離れの流星の部屋。

玄曜は寝台にそっと流星を寝かせる。


「玄曜……」


流星の瞳はとろんと潤み、口調は甘える子どものように蕩けていた。

以前と同じ――流星から漂う、その空気。


(また、天鳳瑞奏てんほうずいそうの仕業か……)


「玄曜…ぎゅってして……」


流星は玄曜の袖を引き、寝台へと引き寄せる。


「わかった」


玄曜は寝台に上がり、横たわる流星を抱きしめた。


「頭も、撫でて」


「……わかった」


そっと撫でると、流星は小さく、甘い吐息を漏らす。


「玄曜……オレ……」


「なんだ?」


「……もっと、ご褒美がほしい」


「……わかった。言ってみろ」


「玄曜と……もっと、仲良くなりたい」


流星の瞳が、蕩けるように揺れる。

玄曜は返す言葉を見つけられず、しばらくその顔を見つめていた。


「……どうすればいいんだよ」


「……キスして」


囁くように流星が言い、

「ここ」と、自分の頬を指差す。


玄曜は一瞬、目を見開いたあと、何も言わずに頬へと口づけた。


「……ここにも」


両頬。

おでこ。

瞼。

鼻先。

耳。


流星が指差した場所へ、触れるだけの軽いキスを、順に落としていく。


「……次は?」


玄曜が耳元で囁く。

低く、静かな声。


「ん……」


その声に、流星はぴくりと肩を震わせた。


流星はとろんと目を潤ませたまま、指を自分の唇へ運び、そっと目を閉じる。


玄曜は、ゆっくりと顔を近づけていく――が。


――かくん。


流星の顔が、力なく横へと倒れた。


「……流星?」


くかー。


返事はない。

流星は完全に寝落ちしていた。


「……コイツ……! またかよ!」

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 21時半時頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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