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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第四章 「運命が、オレの許可なく走り出す」

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第四話 「綺麗なのには訳がある」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

「おはようございまーす!」


竹巻を抱え、星鈴が軽やかに後宮内を駆けていく。

煌めく瞳、生き生きと弾ける肌。

揺れる髪は陽の光を浴び、毛先まで輝いていた。


星鈴が通り過ぎるたび、人々は思わず振り返り、その姿を目で追う。


「最近、星鈴さん……綺麗になったよな」

「前から可愛かったけど……ますます可愛い」


恋に目覚めた白星鈴はくせいりん――いや、白流星はくりゅうせい

玄曜げんようの前ではいまだに、もだもだしてしまうものの、同じ家で暮らし、

同じ仕事をする日々は、どうしようもなく幸せだった。


幸福感で、心も身体も活気で満たされ、本人が気づかないうちに――

その輝きは、周囲の人間を否応なく魅了していた。



「ほらっ、これで大丈夫ですよ」


オレは花瓶の龍霊雨器りゅうれいうきにそっと触れる。


持ち主は大の花好きだが、この花瓶に活けると、

なぜかすぐ花が枯れてしまうらしい。

花瓶の記憶を辿ると、どうやら月季花げっきかを望んでいたようだった。


月季花が活けられた花瓶は、どこか満足そうだ。


「ああ……!よかった!」


「ふふっ。大切にされていたんですね」


オレはにこりと笑う。


最近では、小さな龍霊雨器のトラブルなら一人でも

対応できるようになってきた。

おかげで後宮内の顔馴染みも増え、毎日がちょっと楽しい。


「星鈴さん」


依頼主と別れたところで、顔馴染みの若い文官に声をかけられた。


「こんにちは!」

オレが笑いかけると、文官は一瞬言葉を失い、

やがて意を決したようにオレの手を握る。


「星鈴さん……!好きです!オレと付き合ってください!」


……は?


「ええっ!?」


意味が理解できず、思わず目をぱちぱちさせる。

すると、どこからともなく若い文官や武官たちが現れた。


「おい!お前!」

「抜け駆けするな!」

「協定はどうなったんだ!」


……協定?なにそれ。


「うるさい!オレはもう隠しておけない!」

「なんだと!?ならオレも!」

「僕も!」

「オレだって!」


え、ちょ、なに!?

星鈴さん、星鈴さん、と迫ってくる若者たち。


その時。


「星鈴さん」


すぐ背後で、冷えた声がした。


一瞬で場が静まり返る。

振り返ると、玄曜がそこに立っていた。


穏やかに笑っている――が、

目が、まったく笑っていない。

空気が、一瞬で凍りつく。


……なんか、怒ってる?


「こちらへ」


手を引かれ、回廊を足早に歩く。


「玄曜様……?なに?どこ行くの?」

「あの人たち、ほっといて大丈夫なの?」


しばらく歩いたところで、玄曜は突然立ち止まり、振り返った。


「誰のものか、わからせる」


そう言った瞬間――玄曜は、


――――オレに、キスをした。


風が吹き、髪飾りと髪が揺れる。

遠くで木の葉の音と、誰かの叫び声が聞こえた。


は?


なっ……なに!?


「なにしてんの!!!?」

「牽制だ。見せたから、もういい」

「牽制ってなに!?」


「うるせぇ。人のものに手を出す奴は許さん」


「オレの……ファーストキスが……」


「あ?」


「オ、オレは……!

初めてのキスは!本当に好きな人と!

満天の星空の下でするって決めてたのにぃぃぃ……!」


感情が一気に溢れ、何の涙かわからないものが、ぽろぽろと零れ落ちる。


「……そんな女みたいなこと言われても……」

玄曜はぎょっとした顔で戸惑いながら、

「気にするな」と言った。


「お前が言うな!!」


――こっちはアンタに恋してんだぞ!!!


あまりに腹が立って、玄曜のみぞおちに一発お見舞いする。


「いって!!なんだよ、このクソ!」

「うるさい!バカ玄曜!」


もう知らん!!

オレはぷんぷん怒りながら、その場を駆け出した。


悔しい。


オレは、アンタとのキスでこんなにもどうにかなりそうなのに。

玄曜は、オレのことなんとも思っていない。

ただの所有物くらいにしか思ってない。


「あのバカ……!!!」


悔しくて――

そして、こんなにも悲しいなんて。



――牽制の、ためだった。


最近やけに、星鈴の噂を耳にする。

狙っている男が多いだの、押せばいけそうだの、誰とも付き合っていないらしいだの。


……玄曜オレ部下ものだぞ。


なんのために、指輪をつけさせていると思っている。

左薬指だぞ。見えていないのか。


誰のものだと思ってるんだ。


イライラする。


大体、流星あいつが誰にでも愛想良くするから、勘違いされるんだろうが。


――他のやつに、わからせてやる。


だから、見せつけるように。

あいつに、キスをした。

オレのものだと、示すために。


……なのに。


なんで、あんなに泣かれたのか。

全然、わからない。



その夜。


「……すまなかった」


玄曜は短くそう言うと、続けて言葉を足した。


「もう……しない」


そして、オレに包みを差し出してくる。


中を開けると、ぎっしり詰まった菓子。


……オレが。

お菓子で許すとでも。


「なにこれっ……!うまっ!」


……くそ。


……いや。


許さないからな……!!

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。

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