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『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第五章 「帰還」

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第一話 「櫓の中で」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風後宮ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

――奉納の儀が始まった。

静寂の中、皇帝・景昌けいしょうによる祝詞が響く。

皇族達は一斉に、流星が閉じ込められたやぐら

向かって深く頭を下げた。


櫓は薄紗で囲われ、外から中は見えないようだった。

――それでも。皇族達の視線が突き刺さるような気がした。

流星の身体が小さく震える。


――カラン、カラン。


編鐘へんしょうの澄んだ音色が広場中に響き渡る。


「綺麗な音……」


編鐘の音は高く、低く。

空へ向かってどこまでも響いていく。


――まるで龍の神を呼んでいるみたいに。


編鐘の音に合わせるように、琴、笙、笛、太鼓の音が続く。

どうやら演奏はうまくいっているようだ。


礼楽れいがく……! 良かった」


流星はほっと息を吐いた。


龍の神へ捧げる演奏。

その音色に合わせ、奉納の舞も始まる。

舞で表現されるのは、龍の神の物語。

龍の神が地上へ降り立ち、雨を降らせ、

人々へ加護を与えていく。


厳かな舞だった。

舞師達の手に握られた杖には、雫を象った

宝玉が散りばめられている。

舞うたびに光を受けて煌めくそれは、まるで

龍の神の涙のようだった。


――シャラン。

宝玉が音を立てる。


その音に合わせるように、流星の鼓動が

少しずつ速くなっていく。


「……っ!」


胸の奥が熱い。

心臓の鼓動が全身へ伝わり、指先まで震えた。


わかる。


――オレの中の天星様が、目覚めている。

視界が一瞬だけ歪む。


「天星様……」


流星はそっと囁いた。


『ふふ』


天星は流星の頭の中で微笑む。


『安心するとよい』


『其方の瞳を通して見ているだけだからのう』


「起きたの?」


流星が問いかける。


『少しだけ、もう眠る』


天星はそう告げると、静かに気配を消した。



舞が終わると、前列にいた皇族達が動き出した。

順番に酒、穀物、果物、花、玉器を捧げていく。

龍の神への供物奉納なのだろう。


「これって……どれくらい続くんだろう」


流星がぽつりと呟く。


「あと二時間くらいだよ〜」

隣から聞き慣れた可愛い声が返ってきた。


「んっ!!?」


流星は勢いよく振り向く。

そこには――


「えっ!? 阿燐ありん!?」

思わず大声を出しかけ、自分で慌てて口を塞いだ。

流星の隣には、阿燐がちょこんと座っていた。


「流星! 今日の服、可愛いね!」


阿燐はくふふっと笑いながら流星に抱きついた。


「阿燐〜〜!!」


流星も思わず抱きしめ返した。


「良かった〜! 阿燐がいなかったら泣いてたかも〜!」


「ふふーん!」


阿燐は得意げに胸を張る。


「言ったでしょ?」


「ボクの方がずっと流星の助けになるって!」


にこにこと笑う阿燐を見ているだけで、

不安や緊張が少しずつ溶けていく。


「それより」


阿燐は首を傾げた。


「流星、なんでこんな所に入ってるの?」


「あー……」


流星は膝を抱えながら答える。


「玄曜が呼んでるって言われて」


「ついて行ったら入れられた」


「あーあ」


阿燐は楽しそうに笑った。

絶対面白がってる。


「ねえ」


流星は声を潜める。


「阿燐の力で、ここから出せない?」


「前に玄曜を飛ばしたみたいにさ」


「うーん……」


阿燐は少し考える。


「流星は、まだ繋がってないから」


「繋がってない?」


流星は首を傾げた。


「流星はお父様の魂を宿してるのに、

繋がってないんだよね」


「どういうこと?」


阿燐は指を折りながら説明する。


「ボクや玄曜、龍霊雨器達、お父様の魂を宿している存在は、

みんな糸で繋がってるんだ」


「だからボクは移動させたり、呼んだりできる」


「でも流星だけは違う」


阿燐は不思議そうな顔をした。


「探しても糸がないんだよね」


「???」


流星の頭の上には大きな疑問符が浮かんでいた。


「だから飛ばせない」


阿燐はそう言うと、流星の肩へこてんと頭を預ける。


「本当に不思議だなぁ」


「どうしてなんだろう」


その時――


ドォォォォン。


舞台の方から銅鑼の音が響いた。

供物奉納が終わったのだ。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

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