↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『龍霊雨器 ― 脅迫から始まる両片想いの後宮事件録 ―』 〜女装して後宮に潜入したら、正体を見抜いた俺様文官(次期皇帝候補)に囲われました〜  作者: 麻倉ロゼ
第二期【恋人編】第四章 「玄曜の過去と、本当の天命」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/113

第六話 「深淵の檻と、予想されたもの」

ご覧いただきありがとうございます。


本作は

「中華風ファンタジー」

「年上攻め×主人公受け」

を詰め込んだBL作品です。


シリアスになりすぎず、基本はコメディ寄りで進みます。

どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。

 老人は何も言わず歩き続けた。

玄曜も無言のまま後に続く。

幾重もの廊下を抜け――。

辿り着いたのは、麒麟の装飾が施された巨大な扉だった。


重々しい音を立てながら扉が開く。

中は静まり返っていた。香炉から立ち上る香の煙だけが、

ゆっくりと天井へ昇っている。


部屋の奥には五人の人物が並んでいた。

衣には、それぞれ麒麟の紋。

反皇帝派を支える一族の長達だった。


「皇族を捨てた者が入り込んだと聞いた」


中央の男が口を開く。


「貴殿だったか。玄曜殿」


玄曜は答えない。静かに五人を見渡した。

見覚えのある顔ばかりだった。


「誰かと思えば」


やがて玄曜は無感情に口を開く。


「そちらは相変わらず顔ぶれが変わらない」


その言葉に数人の眉がぴくりと動いた。


「私は龍霊雨器に呼ばれたから来た。それだけです」


「はっ」

老人の一人が鼻で笑う。


「抜け抜けと」


「ここは、お前のような下賤な生まれの者が

来る場所ではない」


別の男も続けた。


「己の立場もわきまえず」


「また宮廷を混乱させる気か」


「混乱?」

玄曜はわずかに首を傾げた。


「私が七歳で宮殿を出てから十年以上経ちます。

未だに私一人で混乱する程度には、不安定なのですね」


玄曜は静かに微笑む。


その瞬間――。


五人の表情が目に見えて歪んだ。


「天命を失った分際で……!」


中央の男が低く唸る。

腰に下げた佩玉へ手を触れた。

途端に――玄曜の足元へ陣が浮かび上がる。


(龍霊雨器か……)


玄曜は一瞬で理解した。


「奉納の儀が終わるまで」


男は冷たく告げる。


「お前には静かにしてもらおう」


足元の陣が淡く輝く。

玄曜の影がゆっくりと歪んだ。まるで底なし沼のように。

影は広がり、そのまま玄曜の身体を呑み込んでいく。


視界が闇に染まる。

最後に見えたのは、五人の冷たい視線だけだった。


そして――


玄曜の身体も、意識も。

深淵の底へと沈んでいった。

 


「玄曜、遅いな……」


流星が離れへ戻ってから、かなりの時間が経っていた。

気持ちが落ち着かず、つい料理を作りすぎてしまった。

食卓には、冷めた料理が六品並んでいる。


「迎えに……うーん。でも……」


いや。玄曜は大丈夫だと言った。

必ず戻るとも。信じたい。

でも――。


落ち着かず、流星は厨房と食卓を何度も

行ったり来たりしていた。


その時だった。


トントン――。

扉を叩く音が響く。


「曜!?」


流星は慌てて扉を開いた。

だが、立っていたのは玄曜ではなかった。


「慎言さん!?」


「こんばんは」


慎言はいつも通り穏やかに微笑んだ。


「あのっ! 玄曜が――」


流星が口を開くより早く、慎言は静かに頷いた。


「わかっております」


慎言は離れへ入り、流星と向かい合う。

その表情はいつもと変わらない。

だが、声音はわずかに真剣だった。


「星鈴さん。落ち着いて聞いてください」


流星の背筋が伸びる。


「玄曜様は現在、皇族宮に拘束されております」


「拘束!?」


慎言は袖から小さな佩玉を取り出した。


双心通玉そうしんつうぎょくです」


「玄曜様の状態を確認するための龍霊雨器になります」


流星は佩玉を覗き込む。

だが、何の反応もない。


「現在、反応がございません」


慎言は静かに続けた。


「おそらく龍霊雨器によって拘束されているのでしょう」


「そんな……!」


流星の顔が青ざめる。


「誰が!?玄曜は無事なんですか!?」


「ご安心ください」


慎言は落ち着いた声で答えた。


「彼らが玄曜様へ危害を加えることはないでしょう」


「彼らの目的は、明日の奉納の儀に玄曜様を参加させないことです」


「奉納の儀……?」


流星は眉を寄せた。


「どうして?」


「おそらく、反皇帝派が何かを仕掛けてくるはずです」


反皇帝派。現皇帝派。

流星はハッとする。


「それって……おじいちゃんに!?」


「流石に武力衝突ではないでしょう」


慎言は首を横に振った。


「ですが、天命がなくなった今――

彼らにとって、これ以上ない好機です」


静かな言葉だった。

だが、その重みは十分に伝わる。


「そして」


慎言は続ける。


「玄曜様も、必ず現れます」


「え?」


流星は目を瞬いた。


「だって拘束されてるのに?」


「星鈴さんは、玄曜様の能力は、もうご存知のはずです」


龍霊雨器に宿る魂を消し去る力。

確かに。

龍霊雨器による拘束など、本来なら玄曜

に通用するはずがない。


「玄曜様は、揺るぎない信念をお持ちです」


慎言は迷いなく言った。


「必ず現れます」


その声には絶対的な確信が込められていた。


流星も思わず頷く。

そうだ。

玄曜は来る。絶対に来る。


つまり、それは――。


「ですので、本日は、お戻りいただけません」


慎言はきっぱりと言った。


「そんな……」


流星は両手で顔を覆った。

肩が震える。


慎言は静かに見守る。

やはりショックだったか。


だが次の瞬間。


「今日……!」


流星が顔を上げた。


「六品も作ったのに!?」


慎言は目を閉じた。

前にも似たようなことがあった。

あの時は五品だった。


今回は六品。一品増えている。


だが、有能にして万能の慎言に抜かりはない。

流星が次に言う言葉も。自分が返す言葉も。

すでに予想済みだった。


「慎言さん!」


流星は勢いよく身を乗り出す。


「お腹空いてます!?」


「――もちろん」


慎言は即答した。

※作者より


お読みいただき、ありがとうございました。

龍霊雨器と流星、そして玄曜の物語は、まだ続きます。


龍霊雨器は【火・木・土 20時半頃】更新です。

続きを読みたいと思っていただけましたら、ブックマークで追っていただけると嬉しいです。


もし物語を楽しんでいただけましたら、評価で応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。