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第98話「ドッペルゲンガー」

「助けて!」


暗い夜道、優芽はとにかく逃げることで精一杯であった。

前にある道路を右に曲がり左に曲がり続ける。

だが、その後ろではある者が迫っていた。


「待って」


「嫌!!」


どこかに鍵が付いて身を隠せる場所はないか。

警察でもいい、とにかく自分を保護したかった。


優芽はひたすら走った。

持っているカバンすら邪魔に思えてくる。

ここに置いて何も持たないほうが走るのに対しても楽であろう。

それでも、優芽はカバンを放そうとしなかった。


「お願いだから話を聞いて」


そう、優芽を追いかけてる人物は言うが距離は離れたままだ。

周囲にコンビニもない。

民家に助けを求めようとしてもその扉は固く閉ざされている。




走り続けてもう限界だと思う時。

優芽は自動販売機の前で止まった。

その前に止まるとピカッと電気が付き鈍い音を立てて稼働する。


「はぁはぁ、もう限界…」


後ろに誰もいないか振り返り確認する。


「いない、よね…?」


だが、その人物は少し離れた電柱の後ろに顔を出しこちらを見つめていた。


「やっぱり逃げ続けるのは良くない、ちゃんと向き合おう」


そう思い優芽はその人物に向かって歩き出す。

その人物は電柱に隠れるのを止め、姿を全部現した。


「夕陽」


「優芽」


愛する人物の名前を呼ぶと夕陽は同じように答える。


「逃げてばかりでごめんね、もう少し夕陽とは距離を取りたかったから」


「いいのよ、悪いのは全部私なんだから、悪人だって思ってくれても構わない」


「ここじゃあれだから、そこの公園で話をしない?」


「いいわよ」


2人は自動販売機の後ろにある公園で身を潜めた。

夜だから誰もいないのは当たり前だが、その静けさは少し恐怖も感じられた。

少し遠く離れた所で犬の鳴き声も聞こえてくる。


「えっと、まず、夕陽から話を聞かせて」


「分かったわ。あの夜、千香と電話しててごめんなさい、大事な相談事されたからメールより電話のほうが早いと思ったのよ」


「どんな相談事されたの?」


「恋人が2人いてどうやって本人達に知らせるかの相談だったの」


「そうだったんだ、私の知らない所で夕陽は人助けをしてたんだね」


「でも、結局は別れるみたいだけど。案外恋人って続かないものね」


「そんなことないよ、私達は続いてるでしょ。こんなに続いてることはきっと奇跡なんだと思う」


「優芽……」


横にいた夕陽は上を見上げる。

そこには月が満月となり2人を照らしていた。


「もうこれで仲直りしよ……」


そう優芽が言おうとした瞬間夕陽の元からチャラっと音が聞こえた。

何かと思いお互い見つめ合う。


「え?」


「あぁ、これね。麻友が生徒会に入ってしばらくしてから優芽に誕生日プレゼントとして渡された大事な物よ」


チャラっと音を立てた正体を夕陽はポケットから取り出した。


「えっ? 私、キーホルダーなんてプレゼントしてないよ」


「でも、喧嘩した時に」


「してない! あ」


優芽はあることに気が付いた。

本当に優芽がプレゼントしたネックレスが夕陽の首元にかけてないのだ。


「あなた、誰?」


「何を言ってるのよ、私は私よ」


「違う、夕陽じゃない」


でも、それは夕陽そっくりであり、まるで双子かと思われる姿であった。

命の危機を感じたその時、あの声が聞こえた。


「優芽?」


公園の入り口付近でもう1人の夕陽がいた。

それはまさしく本物であろう。

首元にネックレスをかけている。


「夕陽!」


すごく恐怖に染まった身を夕陽に抱き付いて安心感を求める。


「どうしたのよ、そんなに怯えて」


「そこに、夕陽が」


先程いた場所を指さす。

だがそこに先程までいた夕陽の姿はなかった。


「そこに私がいたの?」


「うん、顔も声も姿も雰囲気も夕陽そのままだった」


「でも、私はついさっきスーパーから出てきたところよ」


「そんな、じゃあ、あの人は誰だったの?」


「ねぇ、その人はどんなこと話していたの?」


「喧嘩の原因とか千香さんの事とか」


「それで優芽は納得したの?」


「うん、でも、今思えばあの人おかしかったし、私が夕陽に誕生日プレゼントした物をキーホルダーって言ってた」


「そう、それならドッペルゲンガーかもしれないわね」


「ドッペルゲンガー?」


「自分自身と似た人物が現れるの、それを見た本人は亡くなるか事故に遭うって言われてるわ」


「じゃあ、私死ぬの?」


「ただの昔からある言い伝えよ。そんなの本当だって限らないわ。だから、安心して」


「う、うん」


「それに本物だったらここにいるでしょ」


ぎゅっと優芽は夕陽を抱きしめる。


「夕陽」


「ん?」


「この前はあんな酷いこと言ってごめんね」


「もう気にしてないわ、それよりドッペルゲンガーさんにお礼を言わないとね」


「お礼?」


「優芽と仲直りさせてくれたから」


2人はそのまま公園を見た。

その瞬間風がヒューと吹きまるでドッペルゲンガーが2人の会話を聞いてるかのようだった。



ふと思いついたドッペルゲンガーネタ。

そして、夕陽と優芽の仲直り。

優芽が夕陽に誕生日プレゼントしたネックレスのお話は第8話で語られてるのでもしよろしければそちらもどうぞ。

それにしてももうすぐで100話になりますね、100話記念のお話をどうしようか悩んでいます。

他の作者さんは100話記念とか書いてる人書いてない人色々ですが、私はどうしよう笑

何か面白いネタがあったら書いていこうと思います、それでは。

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