表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱サモナー、部下ゼロの亡国騎士団長を従え、倒した敵を仲間にして最強軍勢を作る  作者: sixi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/20

第十一話 魔力炉を守れ

 契約の光が消えた直後、城の地下深くから、腹の底を叩くような轟音が響いた。


 石壁の隙間から灰色の粉塵が落ちる。足元が揺れ、古びた燭台の火が一斉に傾いた。


「魔力炉だ」


 リゼットが即座に顔を上げた。


「黒牙王は城門を破ることを諦めた。城の維持機構を壊し、こちらを外へ追い出すつもりだ」


 視界の端で、クエストログが赤く点滅する。


《ユニーククエスト:部下ゼロの騎士団長》

 最終目標:夜明けまで城を維持せよ

 城の維持率:58%

 魔力炉損傷率:0%


 その下に、さっきまでなかった文字が浮かんだ。


《盟約成立》

 盟約者:リゼット・アークレイン

 契約枠:1/1

 ※現在、追加契約は行えません。


 リゼットはすでに剣を抜いていた。青白い刀身が、地下通路の暗闇を細く照らす。


「ユウ。魔力炉までの最短路は、ここから二つ先の分岐を右だ。だが、敵もそこへ集まっている」


「分かった」


 返事をした直後、また通知が鳴った。


《盟約スキルを獲得しました》

《契約者支援Ⅰ》

 契約中の仲間一名に対し、MPを消費して能力を一時強化する。

 強化内容は使用者の知力、対象との信頼度、戦況に応じて変動します。


 説明を読んでいる暇はなかった。リゼットが走り出し、ユウもその横を追う。


 瓦礫の散らばる地下通路を抜けるたび、遠くで獣の咆哮が響いた。黒牙狼たちは、城門を攻めていた群れとは別のルートから侵入しているらしい。壁には新しい爪痕が刻まれ、床には騎士団のものではない黒い毛が落ちていた。


「リゼット。この城の魔力炉って、壊されたらどうなる?」


「防衛設備が止まる。封鎖壁も、見張り塔の警報も、地下水路の遮断扉もな」


 リゼットは走りながら答えた。


「そして維持率がゼロになれば、この城はクエスト領域として崩壊する。おそらく、私もここには留まれない」


 その言葉に、胸の奥が冷えた。


 契約したばかりだ。ようやく最初の仲間になったのに、城ごと消えるかもしれない。


「だったら、絶対に止める」


「その意気だ」


 リゼットが一瞬だけ笑った。


 だが、次の角を曲がった瞬間、その笑みは消えた。


 通路の先を塞ぐように、黒牙狼が六体いた。


《黒牙狼》

 Lv.7

 HP:320/320

 危険度:E


 ユウの視界に表示される数字を見て、喉が鳴る。


 自分はまだLv.1。HPもMPも、まともに戦えるほど高くない。


《ユウ》

 Lv.1 職業:サモナー

 HP:120/120

 MP:180/180

 筋力:8

 敏捷:10

 知力:16

 所持スキル:魔力感知Ⅰ、契約者支援Ⅰ

 契約枠:1/5(第二~第五枠:封印中)

 契約者:リゼット・アークレイン(第一枠)


《リゼット・アークレイン》

 Lv.25 種族:人間

 HP:1,140/1,860

 MP:210/620

 状態:軽傷、疲労

 契約状態:盟約中


 黒牙狼たちは低く唸り、こちらを半円状に囲んだ。


 リゼットが前へ出る。


「私が切り開く。ユウは――」


「支援する」


 言い切ってから、ユウは手を伸ばした。


 契約者支援。使い方は、頭に直接流れ込んできた。対象を定め、魔力を渡す。単純なスキルだが、ユウのMPを削る代わりに、契約者の力を一時的に引き上げる。


「《契約者支援》!」


 指先から淡い銀色の光が走り、リゼットの背へ吸い込まれた。

《リゼット・アークレインに一時的に身体強化を付与しました》


 リゼットが目を見開く。


「これは……」


「一分だけです!」


「十分だ!」


 最初の黒牙狼が跳んだ。


 リゼットは半歩だけ踏み込んだ。剣が横薙ぎに走る。以前の彼女なら一体ずつ確実に斬っていたのかもしれない。だが、今の一撃は違った。


 青白い軌跡が二体の首元をまとめて薙ぐ。


《黒牙狼を撃破しました》

《黒牙狼を撃破しました》


 残り四体が一斉に飛びかかる。


 リゼットは一体の牙を剣で受け、もう一体の腹を蹴り飛ばした。だが、背後から回り込んだ二体までは止められない。


「ユウ!」


 呼ばれた瞬間、ユウは反射的に壁際へ身を寄せた。


 黒牙狼が噛みつこうと口を開く。その鼻先へ、ユウは拾っていた石片を投げつけた。


 当然、ダメージになるようなものではない。


 だが、石は通路の壁に掛かっていた朽ちた金具へぶつかった。金具が外れ、上に積まれていた古い木箱が落下する。


 木箱が一体の背へ直撃し、獣の動きが止まった。


「今だ、リゼット!」


「了解した!」


 振り返ったリゼットの剣が、最後の二体を貫いた。


 黒牙狼たちは光の粒になって消える。通路に静けさが戻ったが、ユウの心臓だけはうるさいままだった。


《経験値を獲得しました》

《レベルが上がりました》


 目の前に、金色の文字が広がる。


《ユウ》

 Lv.1 → Lv.2

 HP:120 → 136

 MP:180 → 202

 筋力:8 → 9

 敏捷:10 → 11

 知力:16 → 18


《スキルを獲得しました》

《魔力糸Ⅰ》

 魔力で細い糸を作り、物体や罠、味方の装備などに接続できる。

 直接的な攻撃力は低い。

 使用者の工夫により、効果は変化します。


 レベルが上がった。


 たった一つ。それでも、数字が増えた事実より、自分がこの戦いに参加できた感覚のほうが大きかった。


「おめでとう、ユウ」


 リゼットが剣についた黒い毛を振り落とす。


「初陣で生き残った。それだけで十分に価値がある」


「生き残ったのはリゼットのおかげだよ」


「違う。お前が支援を使い、敵の足を止めた。私一人なら、もっと時間がかかった」


 言われて、ユウは少しだけ息を整えた。


 サモナーは前に出て剣を振る職業ではない。少なくとも今のユウには無理だ。


 けれど、ただ後ろにいるだけでもない。


 仲間の力を引き出し、戦場を見て、勝てる形を作る。そのためのスキルが手に入ったのなら、やれることは増えていく。


 通路の奥から、低い振動が伝わってきた。


 今度は一度ではない。重い何かが、一定の間隔で床を踏んでいる。


 リゼットの表情が硬くなる。


「来るぞ」


 魔力炉の扉が見えた。


 巨大な鉄扉には、第七騎士団の紋章が刻まれている。しかし、その前には扉をこじ開けようとする黒い巨体があった。


《黒牙王ヴァルグ》

 Lv.32

 HP:8,420/9,800

 危険度:A

 状態:激昂、左前脚損傷


 黒牙王は、こちらへゆっくりと首を向けた。


 赤い目が、ユウとリゼットを捉える。


 城門前で退けられた怒りが、その眼光だけで伝わってきた。


 リゼットが剣を構える。


「ユウ。あれを倒すには、正面からでは足りない」


「分かってる」


 ユウは新しく覚えた《魔力糸》の説明を思い出し、周囲を見回した。


 天井から垂れ下がる鎖。魔力炉へ繋がる太い導管。扉の上に残る、半壊した落とし格子。そして黒牙王の左前脚には、城門で受けた傷が残っている。


 使えるものは、まだある。


 ユウは両手を前へ出した。


「リゼット。時間を作って」


「何秒だ?」


「三十秒」


 黒牙王が唸る。


 その巨体が、一歩を踏み出した。


「承知した、盟約主」


 リゼットは騎士団長の剣を掲げ、黒牙王へ向かって駆け出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ