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『死神バイトは放課後に』  作者: 黒宮 シズク


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第4話 バイト仲間



 翌日、事務所はいつもより少しだけ騒がしかった。


 九条レンが扉を開けると、見慣れない顔が増えている。


「遅いぞ新人」


 筋肉質の女性が椅子に足を乗せていた。


「いや、まだ遅刻とかそういう段階じゃないだろ」


 レンは思わず突っ込む。


「紹介する」


 黒髪の少女――ミコが淡々と言った。


「ここは“回収班”の拠点」


 机の上には地図、資料、そしてよく分からない札のようなものが散らばっている。


「まずこいつ」


 ミコが顎で示す。


 眼鏡の男が軽く手を上げた。


「風間だよ。解析担当」


「戦わないのか?」


「戦うと死ぬからね」


 即答だった。


「次」


 筋肉質の女性がニヤッと笑う。


「ミサキだ。現場担当」


「現場担当って何だよ」


「殴る係」


「雑すぎるだろ」


 レンは頭を抱える。


 そのとき、机の上から声がした。


「遅い」


 白い狐が丸くなっていた。


「喋った!?」


「うるさい新人だな」


 狐はため息をつくように言った。


「シロ。監視役だ」


 ミコが補足する。


「監視って何を」


「全部」


 それ以上説明はなかった。


 レンはゆっくり椅子に座る。


「ここ、本当にバイト先なんだよな……?」


「そうだよ」


 風間が端末をいじりながら答える。


「人手不足なんだ」


「雑な理由すぎる」


 ミコが書類を放る。


「君の役割も決める」


「え、もう?」


「現場見てた」


「見てただけだろ」


「十分」


 少しの沈黙。


 シロが欠伸をした。


「観測者でいいんじゃないか」


「観測者?」


 レンが聞き返す。


「見えてるだろ、お前」


「まあ……見えるけど」


「ならそれで十分だ」


「適当すぎないか?」


 レンが言うと、ミサキが笑った。


「この仕事、だいたい適当だぞ」


「マジかよ」


 風間が画面を見て眉をひそめる。


「……ん?」


「どうした」


 ミコが反応する。


「反応が一つ増えた」


 空気が少し変わる。


「仕事だ」


 ミコは即座に立ち上がる。


 レンは思わず言った。


「いや早すぎだろ」


「バイトだからね」


 風間がさらっと言う。


 シロが目を細める。


「近いな」


 窓の外を見る。


 夕方の光が、少しだけ歪んで見えた。


「行くぞ新人」


 ミコが刀を持つ。


 レンは立ち上がりながら、小さく呟いた。


「俺まだ時給とか聞いてないんだけど」


 誰も答えなかった。


 代わりに、風間が一言だけ言う。


「死ななきゃ払われるよ」


 レンは一瞬だけ黙る。


「ブラック企業かよ……」


 そのまま、全員が動き出す。


 日常と非日常の境界が、もう曖昧になっていた。

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