第3話 初仕事
初任務はすぐ来た。
「近い」
黒髪の少女が言った瞬間、事務所の空気が変わった。
狐が目を細める。
「駅前の旧校舎だな」
「またか」
筋肉質の女性が肩を回した。
「行くぞ新人」
「俺まだ心の準備が」
「現場に準備はない」
旧校舎は夜になると、形が少し違って見えた。
窓の奥が黒い。
廊下が長すぎる。
空気が重い。
「ここだ」
黒髪の少女が言う。
中に入った瞬間、レンは気づいた。
“声”がする。
誰もいないのに、泣き声が聞こえる。
「これが残響?」
「そう」
教室の奥。
机がひとつだけ、逆さに置かれていた。
そこに“それ”がいた。
人の形をしている。
だが顔がない。
代わりに、無数の文字が浮かんでいる。
「……怖いって」
「走れる?」
「いや無理」
黒髪の少女が刀を抜く。
「下がって」
しかしその瞬間、残響が動いた。
教室全体が歪む。
机が浮く。
文字が空間を埋める。
「閉じ込め型か」
狐が呟く。
「どうすればいいんだよ!」
レンが叫ぶ。
「見つける」
「何を!」
「核」
その時だった。
レンの視界が“色”に変わる。
歪んだ空間の中に、一点だけ薄い青。
「……あそこだ!」
黒髪の少女が一瞬だけこちらを見る。
「見えたの?」
「知らねえよ!でもそこだ!」
刀が振られる。
空間が裂ける。
青い点に刃が届く。
世界が戻った。
教室は普通の旧校舎だった。
何もない。
「……終わり?」
「終わり」
レンは床に座り込んだ。
「意味わからん」
「慣れろ」




