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第2-36節 やめろ! 話せばわかる!

「ということで、お前たちに、今一度、考え直す機会を与えてやろう。

 パンツの中に座りウンコを漏らすなよ!

 見ろ!」

 永が叫ぶと、BGMが1954年のゴジラのテーマに変わる。

 液晶画面の永が後ろのアドトラックを指差すと、荷室後部の天井の一部がスライドし、開いた丸い穴から全身真っ黒な人型ロボットが1人現れた。

 まるで、劇場舞台のセリ上がりだ。

 奈落(ならく)の底から現れたチタン合金の骨格ロボット。

 左膝を突き、胸の前で両腕を抱え、背中を丸めていたが、全身が外に出るとすっと立ち上がった。

 目を見張り、生唾を飲む群衆。

「R1、レッド!」

 永が叫ぶ。

 確かに、体はマットな黒色塗装だけれど、頭に赤い鉢巻をしている。

 セリのエレベーターから半歩右にズレると、いきなり、荷台の天井の上でバック転をした。

 着地すると左膝を折って右足を外に伸ばし、左腕を左斜め上に挙げるキメのポーズをした。

「オー!」

 期せずして、取り囲んだ住民たちから歓声があがる。

「カッケー!」

 小学校の子供たちが、グランドの向こうから興奮して叫んだ。

 続いて、2人目のロボットが、セリのエレベーターから同じように体を丸くして現れる。

 と、いきなり前向きの空転をして、レッドの左隣りに並び、同じキメのポーズをとった。

 頭の鉢巻が青い。

「R2、ブルー!」

 永が高らかに叫ぶ。

 さらに3人目が現れると、ブルーの左脇で飛び上がり、頭上を越える空手の上段蹴りを見せた。

「R3、イエロー!」

 確かに、黄色い鉢巻をしている。

 3人のキメポーズが揃うと、ひと呼吸おいてから、一緒に空手の演武を披露した。

 期せずして群衆から湧き上がる拍手と大歓声。

 満面笑みの永だったけれど、突然その口角が下がる。

「お遊びは、ここまでだ」

 両足を肩幅に開き、ブルーを先頭に三角形の戦闘隊形を組んだ3人が、町長室のガラス窓に対峙(たいじ)した。

 良く見ると、両方の腰に革のピストルホルダーを下げている。

「覚悟しろ!」

 永の叫びを聞いた3人が、一斉に右手でピストルを抜いた。

 コルト・ガバメント、M1911。

 1911年から70年以上アメリカ軍の制式拳銃になっていたもので、その45口径ACP弾は、ギャングが身を隠す自動車の鉄のドアも打ち抜く強烈な破壊力を持っている。

「あー!」

 絶叫が町長室に満ちた。

 両手でハゲ頭を隠す蝶々。

 すると、イブが右手に持ったハンドスピーカーで叫んだ。

「この役場庁舎に1ミリでも傷をつけたら、器物損壊罪で訴えるわよ!

 刑法第261条!」

 一瞬首を左にひねった3人が、右手のピストルをホルダーに戻し、左手で2丁目を抜いた。

 ワルサーPPK、小型の自動拳銃。口径は22からあり、女性でも撃ちやすい。

 ジェームズ・ボンドが映画で愛用した銃で、日本の皇宮警察やSPが要人警護のために携帯していた銃だし、ヒトラーが自殺に使った銃でもある。

 右の銃が実弾で、左の銃がゴム弾か?

「窓を開けて!」

 室内の全員が振り向くと、町長室の棚の上から中村俊輔のサイン入りサッカーボールを取り出した貴子ちゃんが、そのボールを床に置き、PKの構えをしている。

「ああっ、それはッ!」

 両手を前に突き出して声をあげる蝶々。

 その隣りでチャパリトが叫んだ。

「いけ! 貴子ちゃん!」

 両手で顔を覆う蝶々。

「イーサン!」

 年度さんの鋭い叫びとともに右足から放たれた強烈なバナナシュートが、蝶々の頭上を越え、先頭にいるブルーの額の鉢巻を直撃した。

 R2の上半身が大きくのけぞり、反動で広がった両腕がR1とR3の喉元を直撃。

 3人揃って、アドトラックの荷台上からコンクリートの路面に、頭から落下してしまった。

 全身打撲した3人のロボットの両手両足が痙攣(けいれん)している。

「ゴーーール!」

 イブが飛び上がって叫んだ。

「さすが、(かみ)年度〔紙粘土〕じゃあ!」

 興奮する蝶々。

「やりやがったな!

 オールハンズ!」

 真っ赤な顔の永が液晶パネルの中で叫ぶと、全ての車の助手席が開き、中から同じRロボットが出てきた。その数11人。

 左手にワルサーPPKを持ち、群衆に銃口を向けた。

「キャー!」

 両手で顔を隠し、叫びながら後退(あとずさ)りする住民。

 ジリジリと間合いを詰めるロボット軍団。

「やめてくれー!」

 2階の町長室の窓から首を出して、蝶々が叫んだ。

「住民を傷つけるのは、やめろ!

 話せばわかる!」

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