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第70話 大輔と俊則の内緒話

俺は今母上に抱かれ、顔を赤らめながら馬車の外を眺めているところだ。


「はあ。もう可愛い。リオ?ご飯にしようね♪」


おもむろに服をはだけさせる母上。

甘く優しい香りが馬車の中を包み込む。


優しく俺を抱きしめ、慈愛の表情を浮かべる母上。

嬉しいけど!?


さすがに…

うう。


「あうっ、母上、もう僕は1歳3か月だよ?母乳だってもう出ない…うんむ」

「もう……いろいろ言わないの…ほら…」


あああ、嬉しいけど恥ずかしい。

……母上可愛すぎるんだよね。


うあ……むう!?

…なんか甘い声出すし……


くうっ、父上、母上きっと寂しんだよ?

仕事忙しいの分かるけど…もう、ちゃんと相手してあげなくちゃ!



甘い香りと心を溶かすような温もり、大きな安心感に包まれ。

文句を言いながらもとっても満足そうにする大輔であった。


今日はラナが久しぶりに王都にある実家へと帰るため、大輔ことリオナードが同行している。


久しぶりに俊則に会うために。



仲睦まじい親子を乗せ、馬車は順調に進んでいった。



※※※※※



「おとと、いもと、かーいー♡」


ルミナが目の前で寝ているリカルドとメリアをたどたどしく撫でている。

大人たちは皆メロメロだ。


「うう、ルミナマジ天使♡……舞奈、カメラ作ってよ~」


俊則が顔を赤らめ興奮した様子で私に懇願してきた。


うん。

私も欲しいんだけど……


原理が分からないものは作ってもうまく作動しないんだよね。

一応この世界にもカメラみたいな物はあるんだけど、撮影に時間がかかる。


動き回る子供たちにはちょっときつい。


「ねえ、タブレットで記録できるからよくない?いつでも見られるしさ」

「ふふっ、そうですよ先輩。舞奈さんは何でも屋さんじゃないですよ?」


がっくりする俊則。

うう、この男いちいち可愛い♡


「んあ――、ああああ――――んん」


そうこうしているうちにメリアが泣き出す。


「んんあ…あああ、うああああああ―――――――んんん」


つられて泣くリカルド。

そして当然のように泣き始めるルミナ。


ちょっとカオスだ。


「ああ、お腹空いたのかな。ふふっ、おいでメリア」


ルルがひょいっとメリアを抱き、服を緩め授乳を始める。

私も絵美里もそれに倣う。


3人がそれぞれ宝物を抱え授乳。

そしてやっぱりガン見し感動の涙を流す我らが旦那様。


「「「もう」」」


大公爵家は幸せに包まれていた。



そんな自室にノックの音が響く。

メイド長のドロシーが恭しくお辞儀をし、こちらに視線を向けた。


優しそうな眼差しに心が温かくなる。


「まあ、素晴らしい光景ですね。幸せな気分になります。…奥様、旦那様、お客様がお見えです」


先ぶれが来ていたので俊則が真っ先に反応した。


今日お兄様の奥様であるラナお姉さまと長男のリオナードちゃん、俊則の親友の大輔さんが来ることになっていた。


「ありがとうドロシー、応接室かな?」

「はい。今お茶をご用意したところです」

「えっと、じゃあ少ししたら行きますね。授乳が終わったら俺と舞奈で向かいます」


「かしこまりました」


上品にお辞儀をし退室していくドロシーを見て、ちょうどルミナが飲み終わったように眠りについた。


「寝ちゃった♡ふふっ可愛い。どうしよう、着替えなきゃだよね」

「あーうん。大輔はどうでも良いけどラナさんが居るからね。たしかにその格好じゃね」


私はラフなゆったりとした部屋着だ。

いくらなんでも失礼だろう。


「じゃあさ、俊則先に行ってくれる?もし何ならラナお姉さまはこっちに来てもらってもいいかな」


「うん。そうさせてもらうね。絵美里、ルル、じゃあ俺席外すね。ゆっくりしていって」


俊則はウキウキとして部屋を出ていった。

嬉しそうだね。


「ロナリアお姉さま?」

「ん?」


「……なんか妬けちゃいますね」

「あーうん。やっぱりルルもそう思うか…」


「舞奈さん、私もです」

「あー、ははは。でもまあしょうがないかな。俊則大輔さんのことスッゴク大好きだしね」


もちろんBLとかではないよ?

でも確かに妬けちゃうくらい二人は仲がいい。


私たちの知らない顔を俊則するもんね。


暫くしてやはりラナお姉さまは私達がいる自室へと訪れてきた。

そして目を輝かせ3人の可愛い宝物に興奮する。


ああ、お姉さまも本当に可愛い人だ。



※※※※※



「久しぶり。大輔元気だった?」

「ああ、お前も元気そうだ」


俺と大輔は応接室で、舞奈に創造してもらったコーラとポテトチップスを楽しみながら話をしているところだ。


「すげーな。本物じゃんこれ。俊則ズルいよな」

「ははっ、でも普段はこういうの食べたり飲んだりしないよ?ルミナが欲しがるからね」


ああ、凄く落ち着く。

やっぱり大輔。


姿が変わっても相変わらずだ。


「なあ、俊則はさ、もう慣れた?この世界」

「うん、もう2年くらいはここで過ごしているからね。なんか勇者とかになっちゃったけどさ。その、奥さんも……可愛いしね」


大輔は俺にジト目を向ける。


「そうだなこのスケベめ。ああ、俺も早く大きくなって可愛い女の子とイチャイチャしたいなあ」

「なんだよ、お前だってスケベじゃんか」


「しょうがないだろ?俺経験ないんだからさ」

「……えっ?だってお前数千年生きているって言わなかった?」


大輔は魔力で浮かせたコップのコーラをごくりと飲み込んだ。


「ゲエ――ップ。……ないんだよ。ほら、おれ神様だったじゃん。そういう感情とかなかったんだよね。超越した存在ってやつ?だからお前みたいに好き勝手ヤってこなかったの」


なんだか酷い事を言われた気がする。


「俺だって、べ、別に好き勝手とかじゃ……うう」


やばい。

色々思い出して顔が赤くなる。


「むっつりめ。思い出して赤面とか。お前は乙女かよ!?はあー、ズルいよなホント」


ぐうっ、言い返せない。

そんな様子を見て大輔はにやりといやらしい笑みを浮かべた。


「なあなあ、後学のため教えてくれよ。…やっぱりいいものなのか?」

「ぶはっ…あ、あのなあ……えっと、その……うん」


思わずコーラを噴き出してしまった。

うう、恥ずかしい。


「マジで?なあなあ、誰が一番なの?舞奈ちゃんもめっちゃ可愛いし、絵美里ちゃんなんかスタイルヤバいし。…ルルちゃんは――アレおまえ、ロリコンか?」


「お、おまえ、へ、変なこと言うなよな!?……うあ、み、みんな、その、うう、凄く可愛いんだよ!」


さらにいやらしい顔をする大輔。

まだ小さいくせになんつー悪い顔をしやがる。


「なあ、お前さ、毎日かよ?…あの可愛い奥様達と」

「なっ、おま、ちょっと、そういうの小さい子は考えないだろ?まったく。…ノーコメントで」


「なんだよ?ったく、相変わらずの真面目ちゃんだな」


くそっ、言われっぱなしはむかつく。


ん?

まてよ?


確かコイツ……


「……だろ」

「ん?なんて?」


「お前だって毎日――いまだに授乳されてんだろ?」

「うぐっ」


「もう母乳出ないんじゃないのか?お前もう1歳3か月くらいだろうに」

「そ、それは……」


「ラナさん、可愛いもんな。……あれ?おまえ、照れてんの?まじで?母親なのに?」


みるみる顔を赤くする大輔。


おおう、珍しいこともあるもんだ。


あの大輔がてんぱっている!?


「う、うるさいな。ス、スキンシップだよスキンシップ。だ、大体、母親だぞ?て、照れたりなんか……」


「ラナさんスタイルいいもんな。きれいだし……嬉しいんだろ?」


「ぐふっ……く、くそっ、お前、変な目で見るなよな、お、おれの、母さんだぞ!……うん、まあ、やばいくらい幸せで……最高だけど…って、何言わせるんだよっ!この変態めっ!」


ははっ、こういう大輔初めて見た。

ああ、良かったな。


(…本当にもう――大丈夫なんだな)


俺はとても嬉しくなっていた。


「まったく。……お前な、そういう顔やめろ。……泣きたくなるだろ」

「わるい。……でも嬉しいよ。良かったな大輔」


「っ!?……ああ。まあな。……しかし、お前も幸せそうで良かったよ。安心した」


俺たちは時間を忘れ思い出話に花を咲かせた。

やっぱりこいつは神様かもしれないけど。


――俺の大切な親友だ。


「なあ、大きくなったらさ、ルミナちゃん俺にくれない?」

「はあっ?おまえ、何言ってんの?だめです。却下。ルミナは嫁になんかやりません」


「えー、いいじゃんか。あの子絶対かわいくなるし?いいじゃんお前の事『パパ』って呼んでやるよ?」


大輔がニヤニヤしてる!?


くそっ、いつものコイツだ。


「ダメです。なんだよパパって。ああ、もちろんメリアもあげないぞ?自分で探せよな。大体お前だってその方が良いだろうに。自分で見つけてなんぼだろうが」


「ははっ、まあな。でも……未来があるってのは……いいもんだな」


「っ!?……ああ……ありがとうな……聞いたよ運命神である舞奈のおじいさんから。……お前のおかげだってな」


「なっ!?……くそっ、余計な事を……」

「ああ、それから伝言預かっているぞ」


「ん?伝言?」

「うん『ざまあみろ』だってさ」



「………はあ…………ああ、すげー悔しい気分だ。……ははっ、俺は仲間に恵まれたな。……俊則、お前もな」


ああ、これからも俺たちはこうやってバカなこと言い合いながら過ごしていけるんだな。

本当に幸せだ。


転生したこと、感謝だね。


ラナさんが向かえに来るまで俺たちはいつまでも話をしていた。

また今度。


次はみんなで行くよ。



「またな」


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