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7.募る叔父への怒り



「はい右!左!ちがう、そーっちじゃないって言ってるでしょ!ほら上からもう一個体来てるからそれも斬る!」

…帰りたい。


剣の説明を受けた俺。

とにかく今日は帰ろうと思って礼を言って背を向けた。

その背中をがしっと掴む肉球がある。

「習うより慣れろ。今からダンジョン行きやすぜ!」

「今日はちょっと」と言いかけると、お馴染みヘッドホールディングと泣き言の嵐。

良かったなあ、俺が押しに弱くて!!!


よって、俺は剣を持たされ、なぜか魔物と戦わされているのである。

俺は古道具屋を片付けに来ただけだったのに、どうしてこうなった。

戦っているのは、アメーバのような、無秩序で流動的な動きをする魔物である。

厄介なことに一個体が複数に分裂したり、複数が一つに融合したりする。

敵意はなく、攻撃はしてこないので安全っちゃ安全なのだが、分裂したヤツらを全て斬って消滅させてしまわないと大きくなって増え続ける。


宙を舞ってこちらに飛んできた個体を叩き切る。

斬った感触はネバネバしており、あまり気持ちの良いものではない。


斬る。斬る。避ける。斬る。斬る。


目につく個体を全て()()した頃には、俺は疲労で動けなくなっていた。


地面にぶっ倒れた俺は、回らない頭で、天国へ向かって語りかける。


なあ、秀臣叔父よ。

有り金全部ぼったくられたのは、まあ、しょうがない。

契約するのも、まあ、良しとしよう。

何故、ダンジョンを残して死んだのだ。


あんたがダンジョン残してしまったせいで、俺は変な猫に目をつけられてそれを攻略する羽目になっちまったんだぞ。

一番残しちゃダメなものじゃないか。ダンジョン。

せめて攻略を終わらせてから向こうへ行ってほしかった。


顔も知らない叔父に思いを馳せる。

父が言うには、叔父は風来坊で、ふらーっと現れてはふらーっと去っていく、そんな人だったそうだ。

齢を重ねるごとにいなくなる期間が延び、連絡の頻度も下がってゆき、とうとうどこにいるのか、何をしているのかも分からなくなってしまった。

俺の祖父母、つまりは父と叔父の両親は他界しているが、二人とも亡くなる直前まで叔父のことを心配していたらしい。


「それが、こんなことになっちまってなあ。」

まだまだ酒を飲み始めたばかりの青二才ながらも、日本に帰ってきた父の晩酌の相手をしたとき、父がぽろりと零した言葉が忘れられない。

そこそこガタイの良いはずの父が、とても小さく見えた。



「やりましたぜ、兄貴!この辺にいるネバネバは殆ど掃除できてるみたいですぜ。」

周囲の確認に行っていた煩いのが戻ってきた。

「いやー、助かりました。あれに捉えられると厄介なんです。獲物の体を溶かして、魔素を吸収するんです。あっしはあれに尻尾を捕まったことがありましてね。死ぬ気で逃げて、ふと後ろを振り返ったら。尻尾から尻までの毛が持ってかれて、つんつるてんにされてました。毛が生えてくるまで寒かったですよう。」


この猫一匹だけで、地下の湿気を全て吹き飛ばせそうな気がする。


「なあ」

「何ですか兄貴イ」

「名前は何て呼べばいい?」

猫は目を丸くした。

「ありゃ、まだお伝えしてませんでしたかい。あっしはダンといいます。ホントの名前がダニョラーテ・カドティ・ランクナーっていうんですが、長くて言いにくくて好きじゃねえんですよ。それを言ったら、秀臣さんがつけてくれました。かなり気に入ってるんで、ダンと呼んで下せえ。」



また叔父が出てきた。

渾名をつけられるほどだ。この猫は叔父とかなり親しかったに違いない。



思いついたことがある。

本当に単純な閃きだが、考えついてみて、なかなかな妙案に思えた。

ダンジョンを攻略しつつ、ダンと親しくなれれば。

叔父についての話を、ダンから聴くことができるかもしれない。


「なあ、ダン。」

「なんでえ、兄貴。」

「これからダンジョンを攻略するまでの付き合いだけど、よろしく。」


ダンという名を持つキジトラ猫は、これまでいちばんの驚きを見せ、口をはくはくさせた。


「もちろんでえ!!」


成り行きで背負ったダンジョン攻略という任務だが、案外悪くないような気がしてきている。

俺は軋む上半身を起こした。




諸事情により休載します

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