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8.日を改めまして…



 俺は、昨日あったこと全部が夢だったのではないかと思った。

 ダンジョン、猫、あっちの世界。

 現実とは到底思えなかった。


 古道具屋に来て、廊下を渡り、文様のドアの前に立つ。

 旧式のドアノブを回して開けた瞬間。

 俺は暖かいものが顔に飛びついて呼吸を塞ぐのを感じた。


 息が苦しい。

 顔に飛びついてきたナニカをベりりと右手で引き剝がし、気道を確保する。


 「兄貴ー。よかった、もう来ないかと思いましたぜ。」

 俺に首根っこをつかまれたダンは、ぷらぷら揺れている。

 おっとまずい。

 猫をこういう持ち方しちゃいけないんだった。

 猫好き代表として忸怩たる思いを抱えつつ、俺はダンを床の上にそっと下ろす。


 ダンは弓形に身体を逸らして言った。


 「そいじゃ、兄貴。ダンジョン攻略、行きやしょうぜ。」


 さっきまで落ち込んでいたとは思えない明るさだ。 俺は明日の筋肉痛の予感にがっくりと肩を落とした。


 とことこ。

 とぼとぼ。

 俺とダンはダンジョンの中を歩いていた。


 「なあ。」

 気になったことがある。


 「なんでぇ、兄貴。」

 ダンは目を瞬いた。

 「ダンジョン攻略って、どうすれば終わりなのか。ダンジョン内の魔物を一掃すれば終わるのか。」


 「あちゃー、すいやせん、説明忘れてました。」

 ダンはぽりぽり頭を掻いた。

 「墜落星の話は前しやしたよね。」

 「ああ。空から降ってきて、魔物の発生源になってるやつだよな。」

 「その墜落星、実は7つの破片に分かれてダンジョンの中に封印されてんです。その7つの破片を全て消すことができれば任務完了、ダンジョンは消滅するんでさぁ。」


 なるほど。

 なんかよく分からんが、聖なる力がある火なのだろうか。

 「墜落星の破片はどうすれば消滅するんだ? 」

 これが分からなきゃ何もできない。

 「ダンジョンを作った偉い人を火葬にするときに使った火で燃やすんです。ほんとは普通の魔物にもきくんで奴らもそれで退治できれば良かったんですが、火種が八つしかなくて。勿体無くて使えねえんです。」


 ふうむ。

 つまり、墜落星の欠片をその火で全て燃やし尽くせば任務完了だ。

 晴れてこの古道具屋ダンジョンとオサラバできるというわけか。


 「兄貴い、頼んますよう。このキジトラ猫の職は兄貴の働きにかかってるんでさあ。兄貴がサボったりしたらあっしもクビになっちまう。」


 なんで俺がこいつの首まで責任取らなきゃいけないんだ。

 嫌だあ、そんな責任。



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