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召喚獣? いえっ召喚人です!  作者: 音野 一角
第二章 ??編
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2-1-4 迷いIV

 この件について、後で話を聞いてみたところ、こんな返答があった。


「あの、その、ね? 私だって漫画とか読むんだよ? それで、少女漫画って意外とア、アダルトな描写とか、マニアックというか、色々とね? ね? ね! わかってくれるよね!?」


 その日。俺が遠い目をしたのは仕方がないと思うんだ。


「純粋な仁美はもういないんだな」

「健太君!?」


 あっ、ちなみにちゃんと俺のマゾ誤解は解いたぞ。


 そして、約束した一回目の稽古。

 仁美の言い分を聞いた直後の出来事だった。


「……頭……殴打……記憶……うん、これしかないね」


 おい待て、なんかヤバイ単語の羅列があるような気がががが。


「行くよ健太君!」

「お、おう!」


 現在の実力を見るために、実戦形式の特訓が始まった。……本当にただ実力を見るためだよな?


   ☆ ★ ☆ ★


 おはようございます。

 え? 昨日の特訓?

 そんなの改めて仁美の強さを実感しただけですけど何か?


「おはよう健太君。その……頭大丈夫?」

「仁美? その言い方だとただの罵倒だぞ」

「ちちち、違うよ!?」

「そこで動揺されると落ち込むんだけど?」


 なんか図星っぽいじゃん。


「そうじゃなくてね!? 昨日結構強く打ち込んじゃったから、記憶とか大丈夫かなって」


 なんだろう。俺を心配しての台詞だと思うんだけど、何かこう別の意図が見え隠れしているような。


 なんだろう。どうしてこんなにも恐怖心が騒ぎ立てるのだろうか。


「えーと、どうだろうな。もしかすると何かぽろっと忘れちゃってるかもしれないな」

「そ、そう? よか、じゃない。ごめんね?」

「いや、厳しくても良いって言ったのは俺だもんな。仁美は悪くないぞ」

「そ、そう? んー、罪悪感が……」

「どうした?」


 暗い顔をして何かを呟いていたみたいだけど、うまく聞き取れなかった。


 俺ってこんな難聴系だったか? ……ままま、まさか昨日のダメージで耳が……。いや、そういえば前からこんなもんだったか。


「おはようございます健太さん! 身体の調子はどうですか?」

「おお、大丈夫だぞ」

「凄いですね。仁美お母さんの打ち込みをあれだけ受けて、んー、傷とかも見当たらないですし」


 トテトテと近寄って来るなり、俺の身体を目視で確認するアイちゃん。


「そりゃ仁美は天才だからな。そこんところ加減が完璧なんだろ」

「確かに仁美お母さんは凄いですけど、ベタ褒めですね」


 不思議そうな顔をしながらそんな事を言うアイちゃんに、俺は生じた動揺を抑え込みながら返した。


「まあ、凄い奴を凄いって認めるのは大切な事だからな」


 他人を認めるってのは結構大変な事だ。

 自分と同じ分野でも、違う分野でも、自分がまだうまくいってない時に、成功している奴を見るとそこには嫉妬とか、劣等感とか、そういう暗い感情に支配されやすい。


 そういう暗い感情を、闇の心をうまく利用して急成長する奴もいるだろうけど、少なくとも俺はそうじゃなかった。


 俺にとって、闇の心は足を引っ張るだけの邪魔者。


 戦いでも、なんでもそう。自分の負けを認めた時、俺は強くなれるんだ。


 ……なーんてね。


「健太さん?」

「ん? どうした?」

「いえ……なんでもないです」


 ジッと俺の顔を見詰めながら、僅かに瞳を揺らしていたアイちゃん。

 小さく首を振ったけど、どうしたんだ?


「仁美、今日もよろしくな」

「うん。……でも、本当に身体大丈夫?」

「おうっ、この通り」


 身体を動かして見せ、スーパー大丈夫アピールタイムスタート。


「ん、わかった。今日も昨日みたいに厳しくした方が良い?」

「もちろん」

「了解っ、それじゃあ先に朝ご飯だね!」


 今日もいつも通り、用意されたごはんのほとんどを仁美とアイちゃんの二人が召し上がりました。


 うん。平和だなー。


   ☆ ★


「仁美、いくぞ」

「うん。来て」


 昨日と同じように、俺と仁美は向かい合っていた。

 実戦形式の訓練。俺に足りていないものは多い。だから仁美には主に実戦経験を増やすための相手をしてもらっている。


「はあ!」

「うんっ、良い打ち込みだね! でもね健太君。もう剣道じゃだめだよ」


 上段から綺麗に振り下ろされた俺の剣を、スレスレで躱しながら回転しつつ距離を詰め、そんな言葉と共に足を振るう仁美。


「うおっ!?」

「隙あり」


 突然の蹴りを慌てて躱した事によって生まれた隙を突き、優しく俺の頭に剣を振り下ろす仁美。


 昨日も使われた刃のない訓練用の剣。

 木刀とか竹刀じゃなくて、真剣と同じ重さであるが故に、刃がなくても頭に直撃すれば十分致命傷になりうる。だけど、だからこそ良い訓練になるし、仁美が相手なら何も心配はいらない。

 それにしても、だ。


「仁美! 足ってズルくないか!?」

「そんな事ないよ健太君。剣道は人を心身共に鍛え、育てるための技術。でもね、今私たちに必要なのは人として成長する事じゃなくて、一人の戦士として強くなる事なんだよ」

「……つまり、剣以外も使えって事か?」


 剣道じゃ蹴りなんてかましたら当然ルール違反だ。だけど、それは剣道のルール。命を掛ける本当の戦いにルールはない。そういう事なんだろうけど。


「……それなら昨日も使えよな」


 昨日の訓練は互いに剣しか使わなかった。だから疑問すら抱かなかったわけで、まあ言い訳だけどさ。


「昨日は純粋に健太君のスタイルが見たかったんだ。だから、懐かしい剣の道が見られて……ちょっと嬉しかったよ。やっぱり健太君は才能あるよ」

「仁美には勝てなかったけどな」

「それは……」


 仁美は俺よりも強かった。守りたいと思っている人が自分よりも強いってのは……当時の俺にはキツかったんだ。

 その大きな差に、やる気を失った。

 まあつまり、ガキだったんだな。


「へぇー、仁美が誰かに剣を教えてる姿なんざ、初めて見るな」


 そんな言葉と共にやって来たのは、一組の男女だった。

 その姿に、俺は目を見開いた。


「……耳?」


 二人とも、動物を思わせる耳が頭から生えていた。

 これってつまり、獣人ってやつか?

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