2-1-3 迷いIII
ゲリラ再開です。
トオちゃんと和解ーー別に喧嘩していたわけじゃなくて、それ以前の問題だったけどーーした後、俺は一人アイテムショップへと向かった。
「えーと、あったこれこれ」
ここに来た理由は、昨日のアイちゃん救出作戦で見事に使い切ってしまったアイテムたちの補給だ。
既に冒険を終えて高レベルの勇者になっているらしい仁美。
そしてそんな仁美と共に冒険をしていた高レベルパーティメンバーであるトオちゃん。
ここにいる魔獣のレベルが世界規模で考えるとどの程度なのかわからないけど、少なくともラストダンジョンに出てくる連中と比べれば話にならないくらいだろうな。
実際に俺が苦労して相手をしていたボスワンワンを仁美たちは瞬殺してたし……。
仁美は選ばれた光と呼ばれる特別な存在。この世界の英雄だ。そんな仁美とこれからも一緒にいるには、何か俺にしか出来ない事を、役目を見付けないとだよな。
あの女。エルが言っていた事を信じるなら、俺はレベルアップする事が出来ない。
どれだけ魔物を倒し光子を得たとしても、一度眠ってしまえばそれらを失ってしまう。
それは呪いか? それとも運命か?
あるいは、格の違いか?
いや、そんな事はどうでもよいんだ。必要なのは見つける事。俺が仁美にしてあげられる事を見つける事だ。
……と、思っていたんだけどな。
「どうかな? 美味しい?」
「ああ、めっちゃ美味いぞ」
俺の返事に、満足そうに笑う仁美。
仁美と再会して二日。昨日は町長が気を利かせてくれたけど、仁美とは昨日十分話せたからな。今日からはアイちゃんにアスカ、それからトオちゃんを入れて五人で夜の食卓を囲んでいた。
いや、平和で幸せだな。……いや待て! なんで俺がお世話になっているんだよ。
いや、まあ? 住む場所とか、お金とか、そういうのは仁美に頼るしかない現状なのだけど、それでもここまで尽くされるのは何か違くないか!?
仁美の役に立ちたい。そう決意したものの、既に仁美の冒険によってこの世界は随分と平和になっているらしい。
そして、優秀な光魔師であるトオちゃんの力によって、強力な結界で守られているこの町は平和の極みってやつだ。
だけど、不安要素がないわけじゃない。
「仁美お母さん! おかわりが欲しいのです!」
「はーい。たくさん食べて偉いわね」
ニコニコしながら空になったアイちゃんのお茶碗に、追加のご飯を盛る仁美。
薄々気が付いていたけど、アイちゃんって結構大食らいだよな。
まあ、あれかな。たとえ血は繋がっていなくても、仁美とアイちゃんは親子って事なんだろうな。
(これならしばらくは大丈夫そうだな)
ニッコニコでご機嫌なアイちゃん。
昨日は俺が独占しちゃったからな。まだまだ甘えたいお年頃だろうし……いや、どうだ? ま、まあそれは良いとして、久しぶりの再会みたいだし、アイちゃんがまた一人で無茶をするって展開にはならないだろ。
こんな事を言うと情けないけど、[剣姫]と呼ばれ、卓越した剣術を振るう仁美がこの町にいる以上、仮にアイちゃんがまた一人でドームに行ってしまったとしても、何も問題はなかったりするんだよな。
仁美の実力はまさに英雄。そこらへんのモンスターなんて、敵じゃない。
「なあ仁美」
「どうしたの健太君?」
首をちょこんと傾げて疑問符顔をする仁美可愛い。っと、違う違う。今はそんなわかりきった事に感想を抱いてる場合じゃない。
「忙しいなら良いんだけどさ、その……」
「ん?」
「……俺に剣を教えてくれないか?」
「え?」
俺の願いに、文字通り目を丸くする仁美。
まあ、そうだろうな。
昔、日本にいた頃には考えられない台詞だって事は、俺が一番理解してる。俺が仁美に剣を教えて欲しいだなんてさ。
「……うん。良いよ」
「本当か!? ありがとな!」
「でも、私優しくないよ?」
「ああ、むしろその方が良いな」
ニヤニヤとした笑みを浮かべた仁美の補足に俺が喜ぶと、意外そうに目を丸くする仁美。
確かに普通は優しく教えて欲しいもんだけど、俺の性格上、優しくじゃ上達しないと思うんだ。
そりゃ、長い目で見れば緩やかにでも成長はするかもしれない。だけど、俺は少しでも早く強くなりたい。
この世界の英雄である仁美を守れるくらいだなんて、今の俺じゃそんな偉そうな事は言えないけど、それでも、せめて仁美の足を引っ張らないくらいには強くなりたいんだ。
これはそういう俺なりの覚悟の話だ。
「うわー」
だというのに、この空気はなんだ?
「アスカ君?」
この空気を作り出した張本人であるアスカに対して、首を傾けるアイちゃん。
なんか俺がやばい奴、そんな空気を出すアスカだけど、他のメンバーはどうしてこんな空気になっているのかわからないらしく、アスカの反応に困惑しているみたいだった。
「厳しい方が嬉しいとか、もしかして健太ってマゾって奴なのか?」
「あっ……」
そんなアスカの呟きに反応したのは仁美だった。
……おい、どうして視線を逸らしたんだ?
まさか……まだまだ子供なアスカにマゾだなんて単語を教えたのはお前なのか?
「……仁美?」
「わ、私は悪くないよ」
戦慄した。




