3-13 選ばれし光XIII 〜ボイン〜
大変お待たせしました!
妖しい笑みを浮かべた黒の女性。
黒いのは着ているドレスの色だけではなく、ウェーブのかかったその長い髪もまた全てを飲み込んでしまうかのように深い、何処までも深い黒。
それに対して多く見える肌は白く、どこまで白かった。
まるでドレスや髪に本来あった白の要素すら全て己が身体に吸収しているかのように。
……それにしても。
その女性が着ているのは、胸元が大胆にも開いているドレスなんだけど、そこに見えるのはあまりにも、そうあまりにも男の目を吸い寄せてしまう深い深い谷。
なんというデカさだ。
「あら? これが気になっているのかしら?」
そう言ってわざと胸元を少し寄せる女性。
くっ、男は隠しているつもりでも、こういう視線って女は気付いているって良く言うけど、マジだな。
「べ、別に気になってない」
苦しい言い訳だが認めるわけにはいかない。
別に俺は巨乳好きとかじゃないからな。
「あら残念。あなたは私にとって息子と言っても良い存在。興味があるというのなら触らせてあげても良かったのよ」
「なん……だと」
あの圧倒的なでか力を誇るアレを触れる……だと……。
「うふふふふ。欲望に素直なのは良い事よ」
くっ、この女。俺を弄んでいやがるのか!
「……あなたは何者なんですか」
そう聞きながらも俺はこの女性に対して警戒していた。
それも最上級レベルでだ。
なんせ、前回はこいつによって強制的に元の世界に戻された感覚だったからな。
つまり、この意味のわからない世界でそれだけの力を持っている存在なんだ。
「うふふふふ。そんなに警戒しなくてもいいわよ。私はあなたの敵ではないわ」
「……それなら一体」
「そうね。私はあなたの力よ」
「……力?」
何を言っているんだこの巨乳美女は。
「それならどうして前回は姿を見せなかったんだ」
「それは単純に時間が足りなかっただけよ」
「……お前が俺を元の世界に戻したんだろ?」
「うふふふふ。そう、気が付いているのね」
「ーーっ! やっぱりっ!」
一瞬下げていた警戒心を俺は元の水準、いやそれ以上に引き上げた。
それだけの力がある存在……でも、そんな相手に何か出来るのか?
ただの魔獣どもに何度もむしゃむしゃされていた程度の弱い俺が。
「仮説を立てるのは良い事よ。未来を予測し、そこにある危険に対して備えておく。それはとても良い事。しかし、現状あなたの仮説は足枷になっているわ」
「何をっ」
「圧倒的力の差があるとわかっている相手に対してそんな威圧的な態度はどうかと思うわよ」
「ーーっ!?」
なんだこれっ。身体が、動かない!?
巨乳美女が笑ったと思った瞬間、これじゃまるで金縛りだ。
「苦しくはないでしょ? 安心しなさい。そのまま潰したりはしないわ」
「ーーっ!?!?」
それってつまり、やろうと思えば出来るって事なのか?
頭の中でトマトが潰れていくシーンが流れた。そして、潰れたトマトが自分の姿に成り代わっていく、そんな想像が頭を過ぎった。
「うふふふふ。もう一度言うわよ。私はあなたの敵ではないわ。気付いていると言ったのはここが元の世界ではないという事よ」
「ーーっ」
動かないのは身体だけじゃない。
一言も喋る事が出来なかった。
巨乳美女は当然それがわかっているんだろう。黙りの俺をそのままに話し続けた。
「前回はあなたのレベルが足りていなかったからあのままこの世界にいると戻れなくなる可能性があったから強制的に帰しただけよ」
戻れなくなる? それってつまり、目覚めなくなるって事か?
この女の言っている事が本当だとすれば、俺はこの女性に助けられたって事になる。
……けど、それはその言葉が本当だという前提の上にあるものだ。
本当だなんて証明はない。
「あらあら。まだ警戒しているようね。ああ、そういえば人は動物、動く物。強制的とはいえ、ずっと止まっているのは辛いのかしら。いいわ」
そう言ってパシンと指を鳴らす巨乳美女。
その瞬間、身体を覆っていた何かが消えたのがわかった。
「……動ける……っ声が」
「うふふふふ。さっきから表情が良く変わるのね。見ていて飽きないわ」
そう言ってクスリと笑う巨乳美女。
それにしても、この女……さっきからいちいち動きが色っぽいというか、絵になるというか、貴族の女って感じがするんだ。
妙にドキドキしちまう。
冷静になれ俺。俺が好きなのは誰だ? 仁美、そう仁美だ。
仁美の属性はなんだ? そう、貧乳だ。
俺はそんな仁美が大好きなんだ。つまり俺の趣味は貧乳なんだ。
そうそう、良く良く考えてみると胸って所詮は脂肪のかたまりだろ? そう考えればほら、別に巨乳なんて。
「うふふふふ」
ぐふっ。な、なんという破壊力。
少し上下に身体を揺らしただけで、なんという破壊力なんだ!
……はっ! そうか。そうなんだ。女の魅力は胸の大きさではないという。
つまり、胸の大小は趣味ではない?
つまり、別に俺が巨乳大好きだとしても仁美に負い目を感じる必要なんて……な、い?
「……あなた、さっきから顔の変化が凄まじいわよ?」
おっと、ずっと余裕の笑みを浮かべていた巨乳美女がついに呆れ顔を見せたぞ。
なんかいろいろやべ。
「そういえば、あんたの名前を知らないな」
「名前? ああ、そうね。……そう……」
一瞬キョトンとしたような顔を見せる巨乳美女。
「私は……そう、エルよ」
少しの間考える素振りを見せた後、そう答える巨乳美女、改めてエル。
ちなみに語尾にさんとかを付ける気にはならん。俺からすればエルは怪しい存在だしな。
「そうか。俺は」
「高村健太でしょう? 知っているわ」
「……」
別に驚きはなかった。
なんとなく、こいつなら俺の名前を知っていてもおかしくない。いや、むしろ知らない方がおかしい。そう感じていたのだから。
「なあエル。聞いていいか?」
「ええ。いいわよ」
俺としてはどうでもいい事だけど、エルって呼び捨てにしても怒る気配はないな。
「この部屋に飾られてるこの武器たちは何なんだ?」
「うふふふふ。やはり気になるようね。ここにあるのは全て宝具と呼ばれるもののレプリカよ」
「レプリカ!?」
レプリカ。つまり偽物って事だ。
こんなにも見ていて心が揺さぶられるような、見事な出来だってのに、偽物? このレベルで?
「ええ。ここにあるのは全て偽物よ。当然ね。本物に個という概念はないのだから」
「個? どういう事だ?」
「うふふふふ。まだわからなくてもいいわよ、健太。それよりも、他に聞きたい事があるんじゃないのかしら?」
そう言ってニッコリと、妖しい笑みを浮かべるエル。
なんというか、心を見透かされている気分だ。
事実、こいつにとって俺の考えなんて簡単に予測出来るんだろうな。
そんな、気がする。
「ああ、ある。レベルアップって何の話だ?」
「そのままの意味よ。あなたがアースと呼んだ世界の人間は光によって、正確には光子と呼ばれる小さな粒によって構築されているわ」
人は光で出来ている。それは仁美から聞いた話と同じ。
だけど、光子? 地球でいう分子とか原子と同じか?
「闇の加護を受けたものたち、即ち魔獣や魔物、魔族と呼ばれるものたちは光子と対になる闇子によって構築されているわ」
「……ふむふむ」
理解度は半分くらいだな。うん。
地球での常識が理解の邪魔をするんだ。
ここは異世界、魔法なんてものが存在しているんだ。今までの常識なんて意味がないってわかってる。わかってるんだけど、イメージの問題だよなー。
「闇子は周囲の光子を吸収する特性があるわ。しかし、光子にその特性はないわ。でも、闇子に吸収されていた光子が解放された時に限って光子は解放子を自分に結び付けるのよ」
「…………ほう」
俺的に解説すると、魔物とかは人を攻撃する事によって人の構築物たる光子を削って己の力に変える。
人はそんな魔物を倒す事によって解放された光を己の物にするって事だな。
つまり魔物たちが吸収した光子は人にとって経験値みたいなものだって事だな。
「通常レベルアップで上がる能力値は自動で決まるわ。だけど、あなたに限っては違うのよ」
「……どういう事だ?」
「あなたは本来力を維持する事が出来ないのよ」
巨乳枠のエル参戦。
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